世界遺産を目指す彦根城の空撮(彦根市提供)

2024年の彦根城の世界遺産登録に向けて、今年7月にも国内推薦が決定する可能性がある。1992年に国の暫定リストに掲載されて以降、ようやく登録への道筋が整いつつある。
彦根市は職員を滋賀県に派遣するなど、数年前から県と共に本腰を入れ始めている。彦根商工会議所をはじめとした市内団体も機運醸成の取り組みを進めており、昨年11月17日には長浜市や近江八幡市、東近江市など湖東湖北5市5町の商工・観光団体で「世界遺産でつながるまちづくりコンソーシアム」を設立した。

普遍的な価値って?

世界遺産を実現させるには登録済みの姫路城や国内のほかの城郭、国内外の文化財にはない「顕著な普遍的価値」を明確に示す必要がある。つまり、どの国や地域の人でも、いつの時代のどの世代でも、性別や宗教、思想に関係なく、同じように素晴らしいと感じる価値を公表し、認められなければならない。
彦根城は中堀から内側に外堀土塁を加えた場所が特別史跡に指定されている。そのうち中堀より内側には天守、城主の御殿、重臣屋敷、大名庭園、藩校の建物や遺構が残されている。

中堀より内側で勝負

彦根市はこの5つの保存状態が国内のほかの城と比べて最も良いと判断。江戸幕府を中心に、各藩が城を政治拠点にして、近くに御殿や重臣屋敷、大名庭園、藩校などを配し、領民が安心して暮らせる仕組みを作った幕藩体制に着目。彦根城がこの仕組みを最もよく示す資産だとしている。
登録を目指す範囲は中堀より内側の彦根城の天守、各櫓、藩主が住んでいた表御殿跡、旧藩校の弘道館跡、槻御殿、玄宮園、西郷家や木俣家など重臣屋敷、そして埋木舎。登録外だが、各遺産を守る範囲の緩衝地帯として、芹川、JR琵琶湖線、矢倉川、琵琶湖沖合500メートル内のエリアをあげている。

市民の機運醸成カギ

登録を実現するための重点項目は、これまで「価値の証明」と「文化財の保存管理体制」だった。しかし、近年は持続可能な社会を実現するため、文化財の保護だけでなく、「地域の発展」も重視する考え方に変わりつつある。つまり、世界遺産登録に向けた動きと並行して、地域住民が持続可能な社会の実現に向けてどれほど主体的に活動しているかも審査の対象になる。彦根城の世界遺産登録に向けて、どれほど機運を醸成できるかが今後のカギになる。

世界遺産登録へ向けて、今後のスケジュール

2022年3月
文化審議会の評価をもとに修正推薦書原案を提出
2022年7月
文化審議会が世界文化遺産候補に推薦決定
2022年7月
世界遺産条約関係省庁連絡会議で推薦決定
2022年秋
世界文化遺産への推薦を閣議決定
2023年1月
政府が推薦書をユネスコ世界遺産センターへ提出
2023年9月
ユネスコ諮問機関ICОMOS(イコモス)が現地調査
2024年5月
イコモスが世界文化遺産登録を勧告
2024年7月
世界遺産委員会で世界遺産リストへ登録決定