(株)滋賀銀行のシンクタンクである(株)しがぎん経済文化センタ-では、四半期ごとに「滋賀県内企業動向調査」を実施している。今回「2022年第1四半期(1-3月期)」の調査では、893社を対象に303社から回答を得た。このうち、湖東地域(彦根市・愛荘町・豊郷町・甲良町・多賀町)からの回答は33社だった。

「非製造業」の景況感は大幅低下し、県全体を下回る

今回の調査期間(2022年1-3月期)での湖東地域の自社の業況判断DIは▲21で、前回(21年10-12月期)の▲12から9ポイント低下し、20年7-9月期以来、1年半(6四半期)ぶりに悪化した。ただ、県全体(▲16→▲25)も9ポイント低下したため、湖東地域の水準は、2四半期連続で県全体の水準を上回っている。
県内を地域別にみると、最も水準が低いのは大津地域(▲19→▲41)となり、次いで湖西地域(▲11→▲36)、東近江地域(▲12→▲24)、甲賀地域(▲35→▲24)、湖東地域(▲12→▲21)、湖北地域(▲11→▲19)、南部地域(▲9→▲15)の順となった。甲賀地域以外では、前回よりマイナス幅が拡大した。県内の全地域がマイナスとなるのは、20年4-6月期から8四半期連続(図表1、図表2)。

湖東地域の業況判断DIを業種別にみると、製造業は0で前回の+10から10ポイントの大幅低下でもちあいとなり、非製造業は▲32で前回の▲22から、こちらも10ポイントの大幅低下となった。製造業(0)は県全体(▲19)を上回っているが、非製造業(▲32)は県全体(▲29)を下回った(図表3)。
湖東地域の業況判断の個別コメントをみると、「新型コロナ“第6波”の影響を受け、集客が悪化した」(サービス)、「新型コロナで、外食敬遠、時短営業、酒類販売休止などの影響があり、19年比では売上25%減の状態」(小売)、「鋼材値上げなどの影響がでている」(金属製品)など、マイナスのコメントが大半を占めた。特に、年初からの新型コロナのオミクロン株による感染急拡大の影響が深刻となっている。一方、「世界的な部品不足の関係で、先行手配が増加」(化学)といった前向きなコメントも一部でみられた。
3カ月後(4-6月期)は2ポイント低下の▲23となる見通し。製造業(0→▲9)は低下するものの、非製造業(▲32→▲27)は上昇が見込まれている。県内の他地域では、大津地域と湖北地域、湖西地域でマイナス幅が縮小、南部地域と東近江地域が横ばい、甲賀地域でマイナス幅が拡大する見通しである(図表2、図表3)。

仕入価格DIは最高水準を更新

湖東地域のその他のDI項目をみると、売上DI(▲6→▲3)は3ポイント上昇、経常利益DI(+6→+3)は3ポイント低下、販売価格DI(+9→+22)は13ポイントの大幅上昇。特に仕入価格DI(+74→+81)は7ポイントの上昇となり、湖東地域での地域別分析を開始した15年以降で最高水準となった前回をさらに上回った。これは、ガソリンなどのエネルギー価格の値上がりや円安の影響で、原材料価格が高騰しているためとみられる。3カ月後は、売上DIが▲9、経常利益DIが▲12でいずれも低下、販売価格DIは+41で大幅上昇、仕入価格DIは+77で依然として高水準が続く見通し。なお、本調査後の2月下旬から、ウクライナ情勢の緊迫化により原油や天然ガス価格が急騰しており、一層の原材料価格の高騰が懸念される。
製・商品の在庫DI(▲3→+10)は13ポイント上昇し「過剰」に転じ、生産・営業用設備DI(+9→▲3)は12ポイント低下し「不足感」がみられる。雇用人員DI(▲33→▲27)は6ポイント上昇となるも、「不足感」が続いている(図表3)。

設備投資実施は県全体を上回る

今回の調査期間(1-3月期)に設備投資を実施した(する予定)企業の割合は、湖東地域では50%で、前回調査(10-12月期)から横ばいで、県全体(47%)を上回った。
湖東地域の設備投資実施・予定(未確定を含む)の主な内容をみると、「生産・営業用設備の更新」、「生産・営業用設備の新規導入」、「車両の購入」(いずれも30%)が最も高くなった(図表4)。
来期(4-6月期)に設備投資を実施する企業の割合は、湖東地域では44%に低下するも、県全体(40%)を上回る見通しである。

7割超の企業がデジタル化に取り組む

特別項目として、DX(デジタルトランスフォーメーション)※1に向けたデジタル化※2の取り組みについて調査した。
自社で取り組んでいるデジタル化(複数回答)について、湖東地域は「人事・労務・会計部門のデジタル化」(55%)が最も高く、県全体(47%)を上回った(図表5)。次いで、「WEB会議・WEB商談やテレワーク」(49%)、「顧客や販売情報のデジタル化」(39%)となった。

デジタル化の取り組み方針については、湖東地域は「全社的に取り組んでいる」が53%で、南部地域とともに7地域中最も高く、5割を超えた(図表6)。一方で「部署単位で取り組んでいる」は22%で、7地域中で最も低い。両方の合計は75%で県全体(76%)をわずかに下回った。最も高いのは湖西地域で100%となった。

デジタル化に関する課題(複数回答)について、湖東地域は「組織のITリテラシー※3が不足している」と「デジタル人材※4がいない/足りない」がともに44%で最も高く、「組織のITリテラシーが不足している」は県全体(35%)を9ポイント上回った(図表7)。次いで、「アナログな文化・価値観が定着している」(31%)となった。「費用対効果が見込めない」(28%)は県全体(17%)を大きく上回ったが、「長年の取引慣行に妨げられている」は9%にとどまり、県全体(22%)を大きく下回った。

※1 DX……企業がデータとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

※2 デジタル化……アナログ・物理データをデジタルデータ化して効率化を図ったり、個別業務やプロセスを自動化したりすること。

※3 リテラシー……デジタル分野では「情報技術(IT)を利用し、使いこなすスキル」。※4 デジタル人材…ITツールの活用や情報システムの導入を企画・推進・運用する人材。

寄稿:(株)しがぎん経済文化センター