滋賀大学で開講された彦根商工会議所の寄付講座「世界遺産学」の講義内容をまとめた本「世界遺産学への誘(いざな)い」が完成。先日、彦根市役所で上梓記念献本式が開かれた。
彦根城の世界遺産登録を進めるため、彦根商工会議所の依頼を受ける形で滋賀大学は2019年度から世界遺産学を開講。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2020年度はオンライン講義になったが、2021年度までに計15回の講義を行った。講義が始まった2019年にはフランスのノートルダム寺院大聖堂と沖縄の首里城が焼失する火災が起きた。
講師陣には、無形世界文化遺産の生みの親でアジア初のユネスコ事務局長を務めた松浦晃一郎さん、元ユネスコ日本代表部大使の佐藤禎一さん、イコモス会長(当時)の河野俊行さんをはじめ、それぞれのテーマの第一人者を招き、講義内容に加筆された原稿を滋賀大学の位田隆一前学長と真鍋晶子教授、青柳周一教授が編集した。
世界遺産とは何か、いま世界遺産登録地で何が起きているか、登録できた時のメリット・デメリット等、幻想に惑わされず本当の世界遺産登録とはいったいどういうものかがよく理解できる内容になった。

本「世界遺産学への誘い」の表紙

目次は以下の通り(敬称略)。

  • 世界文化遺産の現状について/山田泰造
  • 世界無形文化遺産の設立経緯とその意義/松浦晃一郎
  • プロパティからヘリテージへ―遺産を見る世界の眼/佐藤禎一
  • 世界遺産を目指す彦根城の価値/鈴木達也
  • 彦根城の世界遺産登録と持続可能な彦根のまちづくり/小林隆
  • 琵琶湖と世界の湖沼の多様な価値/中村正久
  • 一つの視点からみる世界遺産の諸相―水と社会/河野俊行
  • 首里城―復元の課題と展望/田名真之
  • 滋賀県の祭礼・芸能の現状について考える/中島誠一
  • 世界遺産(文化遺産)姫路城の保存の実例/福田剛史
  • 危機にある世界文化遺産、さて、日本の文化遺産は?/西山要一
  • 世界遺産登録前後の石見銀山/小林准士
  • 文化遺産としての富士山とその現状/青柳周一

彦根市役所で行われた献本式の様子

彦根市役所で行われた献本式には、和田裕行市長、小出英樹会頭、竹村彰通学長、意見交換・応援1000人委員会の宮川富子会長、編者の位田前学長、真鍋教授、青柳教授、サンライズ出版の岩根順子社長が出席。書籍紹介の中で、位田前学長は「世界遺産は歴史が作り上げてきたものであり、その街の人たちの誇りでもある。世界遺産がどのようなものなのか、この本で理解して頂ければ」と語った。
本はA5判、280頁、全カラー印刷。税込み3080円。全国の書店やネットで販売。発行所はおうみ学術出版会。初版の発行部数は1500冊。発売はサンライズ出版。