船前方の非常口から出る乗客役の社員

元日に発生した能登半島地震を受け、近江トラベルが運営するオーミマリンはこのほど、観光船の航行中に大規模地震が起こったとの想定訓練を彦根港と湖上で実施。オーミマリンの社員が船員や乗客役に分かれて“本番”さながらの訓練にのぞんでいた。
オーミマリンでは昨年まで、船の衝突事故や火災、乗客の急病を想定した訓練を実施してきたが、今年は能登半島地震を受けて、滋賀県西部を震源とする大規模地震が起こったとの想定で訓練を行った。
近江トラベルやオーミマリンの社員ら計25人が参加し、乗客への対応や陸上での情報収集の仕方、帰港時の誘導、関係各所との連携確認など、有事に備えたセクションごとの役割分隊を確認し合った。
訓練ではまず、オーミマリン彦根港支店内で、運航管理者による講習会が行われ、乗客の誘導の仕方などをほかの社員が学んだ。
その後、通常の運航時に乗船する船長と機関長の2人のほか、乗客、彦根港の事務所での陸上係員に分かれて操練訓練が開始。実際に乗船してから約10分後、船内に震度6強の大地震が発生したとの放送が流れ、船長が無線で状況報告と情報収集を行い、機関長が乗客を席の中央に集め、救命胴衣の着用を求めながら、陸上の状況報告と彦根港への帰港などを伝えた。

救命胴衣を装着する乗客役の社員

大規模地震が発生した際、彦根港の建物が倒壊する可能性もあることから、船は緊急用の船舶が停泊する彦根港近くの岸壁に帰港。その後、前方窓の非常口から乗客を脱出させる訓練が行われ、船員たちと陸上係員は連携しながら乗客を脱出させた後、安全な場所まで誘導した。最後に乗客全員の安全を確認し、避難場所となっている近くの亀の井ホテルへの移動を求めた。
近江トラベルの伊藤孝樹社長は「万が一の時に船員が力を合わせてお客さまの安全を第一に考えて行動できるよう、これからも訓練していく」と話した。