はじめに
今回は、先般日本商工会議所が当所を含む全国380商工会議所の会員企業(中小企業)1979社から回答をいただいた賃金改定状況の調査結果を基にご報告いたします(調査期間:2024年4月19日〜5月17日)。業種、雇用形態別の賃金引上げの実態を考察していただけるとともに、その課題も共有いただける内容となっています。
出典「中小企業の賃金改定に関する調査」(2024年6月5日)日本商工会議所・東京商工会議所
1. 2024年度の賃上げ
- 2024年度に「賃上げを実施予定」とする企業は74.3%と7割を超え、1月調査から13.0ポイント増。従業員数20人以下の企業では、「賃上げを実施予定」は63.3%と賃上げの動きがやや鈍く、厳しい状況が伺える(従業員規模別集計参照)。
- 「業績の改善がみられないが賃上げを実施予定」(防衛的な賃上げ)とする企業は全体で59.1%、従業員20人以下の企業では64.1%。
- 業種別で「賃上げを実施予定」とする企業は、卸売業、製造業で8割超え。 最も低い医療・介護・看護業で5割強(52.5%)と全業種で半数以上が賃上げ(業種別集計参照)。
- 情報通信業、宿泊・飲食業、金融・保険・不動産業では、「前向きな賃上げ」が5割超に達する一方、運輸業では「防衛的な賃上げ」が7割超(72.2%)と業種による差が見られる。
2. 正社員の賃上げ
- 正社員の賃上げは、全体でみると賃上げ額(月給)9,662円、賃上げ率 3.62%(加重平均)。従業員数20人以下の企業では、賃上げ額(月給)8,801円、賃上げ率 3.34%(加重平均)。
- 業種別では、その他サービス業、小売業で4%台と高く、運輸業、医療・介護・看護業は2%台にとどまる。
3. パート・アルバイトの賃上げ
- パート・アルバイト等の賃上げは、全体でみると賃上げ額(時給)37.6円、賃上げ率 3.43%(加重平均)。従業員数20人以下の企業では、賃上げ額(時給)43.3円、賃上げ率 3.88%(加重平均)。
- 業種別では、医療・介護・看護業、運輸業で4%台後半と高い賃上げ率。
4. 賃上げに関する中小企業の声(自由回答欄より抜粋)
賃上げと価格転嫁
- 最低賃金の上昇幅が大きく、物価高も続く中で、賃上げの圧力は高まっているが、原資が確保できなければどうにもならない。利益を削っているのが現状で、賃上げに応えられるかは価格転嫁できるかにかかっているが、不透明である。(東北・製造業)
- 大企業のベースアップ満額回答のニュースが出ても、中小企業はまだまだ厳しい。その中でもベースアップしなければいけない風潮の中で行っているが、十分な金額にはなっていない。電気代、人件費と上がる中で製品単価に反映できない状況でかなり厳しい状況。(関東、製造業)
- 電気・ガソリンの高騰、商品の値上、キャッシュレスの手数料など小売業は利益を出すことが難しくなっている。地域の小売店が継続できなくなると地域の魅力や活力が失われる。賃上げは簡単なことではない。(中部・小売業)
制度上の課題と政府への要望
- 人手不足の中、残業規制などで仕事減らさなければならない。その中で給与を上げ続けることは厳しい。(北海道・建設業)
- 社員の給与を上げるのは経営者の仕事。ただし、社員は社会保険料の増加などで増えている実感がない。(関西・宿泊・飲食業)
- 人手不足の中で賃上げに取り組んでいる。就業調整の要因となる130万円の壁について一時的な措置ではなく、抜本的な対策をして欲しい。(中国・小売業)
- 大手企業から中小企業へと賃上げの波が届き始めたと思うが、さらに、小規模事業者まで賃上げができるようになるためには、まだ時間が必要。人材不足のため、人員確保の求人に苦労しており、今後も、小規模事業者への、様々な支援策をお願いしたい。(九州・その他サービス業)
中小企業相談所からのご支援
彦根商工会議所では、賃上げや価格転嫁に関する相談にもお応えしていますので、お気軽にご相談ください。