はじめに

今年度最も注目されている補助金といえる「中小企業省力化投資補助金」について解説します。なお本記事は2024年5月末時点の情報に基づきますので、詳細はウェブサイト等で最新情報をご確認ください。

概要

中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、人手不足に悩む中小企業等に対して、IoT、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を導入するための事業費等の経費の一部を補助することにより、簡易で即効性がある省力化投資を促進し、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図るとともに、賃上げにつなげることを目的とする補助金です。

活用イメージ

物流業×無人搬送車

倉庫に無人搬送車を導入することで、棚替え業務を省力化し、多くの受注をこなすようにすることで生産性を向上。

宿泊業×自動清掃ロボット

旅館において、自動清掃ロボットを導入することで受付の人員を増強し、手続き迅速化・おもてなし等で顧客満足度を向上させ、高付加価値化

飲食業×スチームコンベクションオーブン

人手不足の解消のため、複数の料理を同時かつ大量に自動加熱調理可能とする

(中小企業庁チラシを参考に作成)

特徴

  • 中小企業等が、事務局HPに公開する補助対象製品のリスト(カタログ)に登録された製品から選んで省力化のための設備投資を行います。従来の「持続化補助金」や「ものづくり補助金」のように自由に製品を選択することや設備投資以外の経費を申請することが出来ない点に注意が必要です。
  • 「販売事業者」(後述)が申請・手続きをサポートしてくれます。
  • 補助金を利用したい補助事業者だけでなく、省力化製品を製造する事業者(省力化製品製造事業者)や販売する事業者(省力化製品販売事業者)にとってもビジネスチャンスを増やす可能性があります。

以下、補助金活用までの大まかな流れを説明します。

1. 製品カテゴリの創設

補助対象製品をカタログに掲載させるためには、当該製品を製造する機械メーカー等が所属する工業会等が事務局に対して製品カテゴリの登録申請を行います。製品カテゴリが創設されると、それに属する省力化製品は募集の対象となります。2024年5月27日更新の製品カタログでは以下が対象となっており、随時更新されることになっています。

製品カテゴリ対象業種対象業務プロセス
清掃ロボット宿泊業、飲食サービス業、製造業、卸売業、小売業清掃業務
配膳ロボット飲食サービス業、宿泊業配膳・下膳
自動倉庫製造業、倉庫業、卸売業、小売業保管・在庫管理、入出庫
検品・仕分システム倉庫業、製造業、卸売業、小売業資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫
無人搬送車(AGV・AMR)倉庫業、製造業、卸売業、小売業資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫
スチームコンベクションオーブン飲食サービス業、宿泊業、小売業調理
発券機飲食サービス業注文受付、請求・支払、顧客対応
自動チェックイン機宿泊業受付案内、予約管理、請求・支払、顧客対応
自動精算機飲食サービス業、小売業注文受付、請求・支払、顧客対応
タブレット型給油許可システム小売業給油

2. 省力化製品・製造事業者の登録

登録された製品カテゴリに該当する省力化製品(汎用製品)を事務局が各製品メーカー等から募集します。メーカーは各工業会に申請し審査を受け、審査を通過した製品等はカタログに登録され、補助対象製品として補助事業者が選択できるようになります。
自社で製造する装置等が省力化製品に該当する場合、カタログに登録しておくことで本補助金を活用して購入される機会が得られます。

3. 販売事業者の登録

事務局にて(2)で登録された省力化製品を取り扱う販売事業者を募集し、製品の説明・導入・運用方法の相談等のサポートを行えると認定されたものが販売事業者として登録されます。製造事業者が販売事業者を兼務することも可能です。なお販売事業者は中小企業等と共同で本事業への交付申請を行うものとし、事業の実施について連帯して責任を負うこととされています。
自社で販売する装置等が省力化製品としてカタログに登録されている場合、販売事業者となることで本補助金を活用して販路を拡大することが期待されます。

4. 補助事業の公募

補助金を活用したい中小企業等は、まずカタログを参照し、希望する省力化製品が登録されているかを確認する必要があります。導入を希望する省力化製品が登録されていれば、販売事業者を選定し、共同で事業計画を策定して補助金の申請を行います。補助金の補助率及び補助上限枠は以下の通りです。

補助対象従業員数補助率補助上限枠
(大幅な賃上げを行う場合)
補助対象として
カタログに登録された
製品等
5人以下1/2以下200万円(300万円)
6〜20人以下500万円以下(750万円)
21人以上1,000万円以下(1,500万円)

〈基本要件〉

  1. 人手不足の状態にある中小企業・小規模事業者等(例えば直近従業員の平均残業時間が30時間を超えている、採用活動を行い求人を掲載したものの充足には至らなかった等の説明が必要)
  2. 労働生産性の向上目標
    補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3.0%以上向上させる事業計画を策定し、取り組まなければなりません(CAGRの詳細は公募要領を確認ください)。
  3. 賃上げの目標
    賃上げは必須ではありませんが、申請時と比較して(a)事業場内最低賃金を45円以上増加させること、(b)給与支給総額を6%以上増加させること、の双方を補助事業期間終了時点で達成する見込みの事業計画を策定することで、補助上限額は括弧内まで引き上げられます。

5. スケジュール等

本補助金は令和8年9月末頃までの間に複数回公募される予定です(採択予定件数は計12万件程度)。
具体的なスケジュールは現時点では公表されておりませんが、決まり次第事務局ウェブサイトで案内されます。

中小企業省力化投資補助金事務局ウェブサイト


中小企業相談所からのご支援

彦根商工会議所では、認定経営革新等支援機関として会員企業様に対して事業計画や申請書の作成を支援させていただきますので、お気軽にご相談ください。