「経営計画」と聞いて、「うちのような小規模事業には縁がない」と思われる方も多いのではないでしょうか。しかし、事業を営むすべての企業にとって、経営計画は“未来の地図”となる重要な道具です。これは大企業だけでなく、むしろ小規模事業者こそが活用すべきものです。
たとえば、車を購入する際、「いくらまでなら払えるか」「どのくらい乗るか」「いつまでに必要か」といったことを考えるはずです。事業運営も同じで、目的(目標)と現状を見極め、そのギャップを埋める行動計画=経営計画があってこそ、持続的な成長が可能となります。
彦根地域でも、最近の業況DI(業況判断指数:「不易流行」5月号ご参考)では次期には好転の見込みですが、地方都市においては小規模事業者の先行きにはまだまだ慎重である必要があり、今後の需要変動を見据えた戦略づくりの重要性が一層増しています。観光回復の一方で商業の競争は激化し、老舗や個人経営の店ほど「選ばれる理由」の明確化が求められています。
補助金申請や融資を受ける際、「事業計画書」や「経営計画書」の作成が求められます。しかし、こうした外部提出のためだけに作るのでは本末転倒です。経営計画の本質は、経営者が自身のビジョンと現実を見つめ直し、何を優先し、どの順で実行すべきかを整理する「思考の棚卸し」にあります。

経営計画を構成する三つの要素

  1. 目的(目標):自社が「どうありたいか」という将来像。
  2. 現状の把握:経営環境、自社の強み・弱み、課題の明確化。
  3. アクションプラン:目標と現状の差を埋めるための具体策とスケジュール。

この構造を意識するだけで、計画は格段に実効性を増します。たとえば、「3年後には売上を1.3倍にしたい」という目標がある場合、現在の売上構成を分析し、「既存客の単価アップ」「新規客の獲得」「商品構成の見直し」など、複数の打ち手を検討することになります。それらを、優先順位とタイムラインに落とし込んでいく。それが経営計画です。

下記計画例はいずれも、「目的」と「現状」の差を埋めるための具体的な設計図です。特に中小企業にとっては、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)が限られているからこそ、計画を通じて「集中と選択」を行うことが重要です。
また、計画は“作って終わり”ではありません。むしろ、その後の「見直し」と「更新」が本番です。経営を取り巻く環境は、社会情勢、法制度、顧客ニーズ、競合の動きなど、日々変化しています。3年前に立てた長期計画が、今の状況に合っているとは限りません。定期的に読み返し、必要に応じて修正を加えることで、計画は生きた道具になります。

様々な計画例

計画の種類対象期間目的想定される関係者内容例
短期経営計画約1年直近の目標と行動の明確化経営者・従業員、金融機関今期の売上目標、仕入・経費削減、資金繰り
中期経営計画約3年社会・業界の変化に対応した方向性経営者・金融機関事業の方向転換、新市場の開拓、人材育成
長期経営計画5年~将来のあるべき姿を描く経営者・投資家拠点拡大、後継者育成、設備計画、人材育成
設備投資計画必要時設備導入の投資対効果を明確にする経営者・金融機関設備の選定理由、資金計画、売上増加予測
創業計画創業時ビジネスモデルの可視化と資金調達創業者・支援機関誰に何をどう売るか、必要資金と回収時期
事業再生計画緊急時収支構造の見直しと再建経営者・金融機関不採算事業の整理、固定費削減、資産処分
事業承継計画中長期承継時期・方法・展望の明確化経営者・後継者株式移転、経営権移行、承継後の体制づくり

相談所からひとこと

彦根商工会議所では、認定経営革新等支援機関として会員企業様に対して事業計画書の作成を支援させていただきますので、お気軽にご相談ください。なお各補助金の情報は当所ウェブサイト等でも随時ご案内しますが、申請書類や申請方法、申請開始時期等の詳細は、各補助金事務局のウェブサイト等をご確認ください。