新型コロナウイルスの猛威は依然留まることを知らない。国内では、感染経路のターゲットを「接客を伴う飲食業」も加えることで、無症状者を含めて調査を行った。結果、隠れた新規感染者数が芋づる式に増加していき、「第2波」の様相が起こった。第1波と異なる点は、重症者数と死者数が新規感染者数に比例しておらず、若年の無症状者の割合が多い。潜在的な無症状感染者のあぶり出しに一定の成果があった。その結果、第2波が緩やかに収束に向かい、9月の4連休に照準を合わせ「Go To キャンペーン」が開始、堰を切ったように全国の行楽地では観光客が溢れ、高速道路の渋滞ニュースがワイドショーを賑わせた。10月からは「Go To キャンペーン」と連動して飲食店対象の「Go To Eat」も始動する。しかしまだ油断は禁物である。これまで事業者は耐え忍び、準備を整えてきた。ここでその努力を無に帰さないために、引き続き、新しい生活様式「New Normal」を定着させ、当たり前「Standard」にし、経済活動と共存させていかなければならない。
今回の不易流行特集では、前号に引き続き、コロナ禍の中、経済活動を再開する上で考慮しなければならない生活様式New Normalとは、具体的にどのような規範があり、事例があるのか。飲食業編と題して、業界の新型コロナ対策業種別ガイドラインと合わせ、事業を再開するためのNew Normal Standardの一部を紹介したい。

具体的なNew Normal【飲食業編】

コロナ禍でも売上維持。店の存続をかけて営業を続けるという選択

コロナ禍の中で「一時休業」という選択をした飲食店は多い。しかし、社員にもアルバイトにも給料を全額払いたいと考える事業主も多いだろう。社員にもアルバイトにも家族や生活があるのだから。そのためには営業を続けるしかない。数ある事例の中から、以下にコロナ禍においても営業を続ける飲食店のチャレンジのポイントをまとめる。最も影響を受けている飲食業の並々ならぬ創意工夫が見えてきた。

  • 客席を半分にする。
  • 店員、来店者のマスク着用。
  • 店舗入り口、客席、トイレに消毒液を設置。
  • 店舗入り口で検温。37.5度以上で入店拒否。
  • レジ、カウンター、客席にアクリルパーテーションを設置。
  • トイレにペーパータオルの設置。
  • 1時間に1回(5分間)、扉・窓を開けて換気。
  • 顧客を飽きさせず、店離れを避けるためにテイクアウトメニューを次々と投入する。
  • 価格はマーケットインで臨機応変に適切化する。
  • 真空パックの商品を開発し、ECで通販にチャレンジする。
  • SNSをフル活用、ファンづくりに繋げる。
  • ECプラットフォーム(BASE等)とクラウドファンディングの融合で期限付き前売りチケットを販売。(常連客が支援者の大半であっても、店の存在意義を再確認することができる)

長期的な視野で攻めの経営

コロナ禍によって甚大な影響を受けた飲食業界だが、新店舗をオープンするなど、長期的な視野をもち飲食事業を拡大する店舗もある。
ポイントはSDGs(SustainableDevelopment Goals:持続可能な開発目標)である。本誌の特集でも幾度となく取り上げてきた。「今さら聞けないSDGs」(2019.9月号特集)「SDGs経営/ESG投資は地域社会のセラムになりうるか」(2020.2月号特集)を参照いただきたい。
図らずもコロナ禍において、安全や健康が脅かされる体験をし、SDGsの課題がまさに自分ゴト化されたのだ。ウィズコロナで、多くの人が自分の人生や幸せを見つめ直し、利益ではなく、価値を求めるようになってきている。外食の機会が減った分、家庭での食事がバラエティに富み、充実した。そして、そのことに幸せを感じるように消費者の思考が変化してきている。災害や貧困をなくす方法、エネルギーをクリーンにすること、リモートワークなどの働き方改革などSDGsの流れに乗ったものにスポットが当たることが多い。飲食業界においても、皆が幸せになることを理念に活動する経営者が増えているのは確かだ。
コロナ禍であるからこそ、本質的な価値を求めるSDGsの観点で、新規出店=積極投資=ESG投資というロジックなのである。しかしそれは表向きで、この戦略が侮れない部分もある。コロナ禍自体はいずれ収まる、というのが投資家の視点だ。だから今安くなった土地や株や商品を買う。そしてコロナ禍が収まるタイミングがピークで今度は売りが始まる。買うなら今なのだ。その背景にはもちろん各国政府の大規模な金融政策も織り込まれている。
テイクアウトやデリバリーは社会が良くなるほど利益が出る構造ではない。その後のことを考え、今イニシャルコストが安いうちに新規出店する。ポイントは、自社のブランド=「業種×業態×テーマ×スローガン×教育」を確立するために、それぞれをSDGsに掛け合わせることで専門性をつけていくこと。今この状況でも専門性が高い店には人が戻ってきている。普段感じることができない「価値」を提供しているからだ。
SDGsに則った新しい考え方をすれば、自然と従来のようなマーケットインではなく、プロダクトアウトになるはず。人々の意識が変わろうとしている今、外食産業の戦略も変えていかなければならない。課題は、コロナ禍によって変化のスピードが今まで以上に加速し、それについていけない人々との間でひずみが生じていることだろう。

「美味い(良質)」がStandard

本誌において、「New Normal Standard」とは、清潔と安全を保障する「安心」の確保が当たり前になる状態と定義した。地域間競争においてもビジネスにおいても「安心」の確保は今後大きな差別化の手段となるだけでなく、ダイレクトに集客に影響する要素になるだろう。
イギリスやフランス(渋沢栄一翁、サン・シモン主義)の産業革命の時代から現代に至るまで、早い(大量)、美味い(良質)、安い(安価)、を制したものがビジネスを制するという原則は変わっていない。しかし、我々が押さえるべきは、この中の「美味い(良質)」の価値観が時代によって変遷していること、つまり「流行を掴む」ことがこの変遷の潮流に乗るということなのだ。不易流行の定義にも通じている。現代においては特に「美味い(良質)」の価値観がより複雑になり、商品・サービスの評価は完成度を測るのみに留まらず、それに纏わるストーリーも重要になってきている。SDGsなどはまさにその押さえるべき流行と言えるだろう。New Normal Standardは「美味い(良質)」に関わる重要な要素なのである。「良いものを安く」という考え方は、「その価格にしては良くできている」ということでしかない。いよいよ、美味い(良質)の価値自体が評価される時代が、到来したということなのかもしれない。

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