保存修理してきた木造建造物の写真の前で西澤社長

木造建造物の伝統技術がユネスコ無形文化遺産に登録される見通しになった。NPO法人日本伝統建築技術保存会の会長を昨年まで務めた彦根市鳥居本町の株式会社西澤工務店の西澤政男代表取締役は、木造建造物の伝統技術を後世に伝える活動に尽力している一人だ。

今月中旬、パリで最終決定

ユネスコ無形文化遺産に登録予定の名称は「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」。文化庁は2018年3月と昨年3月、ユネスコ無形文化遺産代表一覧表への登録に向けて、「提案書」をユネスコの事務局へ提出。先月17日までに、専門家6人とNGO6団体で構成された無形文化遺産保護条約政府間委員会の評価機関より「記載」の勧告があり、ユネスコ無形文化遺産の公式サイトに公表された。
評価機関による勧告は、代表一覧表に登録する「記載」、提案国に追加情報を求める「情報照会」、登録基準を満たさない「不記載」の3区分。「伝統建築工匠の技」の記載の勧告を受け、今月14日から19日までパリで開催される第15回政府間委員会で最終決定される。

西澤社長「建築時の文化を後世に」

日本伝統建築技術保存会は木造建造物の伝統技術を次世代に継承していく活動をするため、西澤社長たちが2000年に結成した団体。
西澤社長は30歳の時に愛荘町の金剛輪寺の三重塔=重要文化財=の修理を手がけて以降、西明寺本堂や彦根城天守・附櫓・多門櫓など、国宝をはじめとする多数の文化財の保存修理を担ってきた。十数年前からは京都御所や皇居など宮内庁の工事も請け負ってきた。
ユネスコ無形文化遺産に登録予定の木像建造物の伝統技術について、西澤社長は「古くて腐っている木材ほど大事。建築された当時の文化の証であり、それを後世に伝えていくのが私たちの仕事」と説く。
そして「日本人にはやはり、和の空間がいい。伝統的な和風の建物は日本人らしい和の雰囲気、やすらぎの心を与えてくれる。日本の原風景を取り戻せるよう、伝統的な木造建築の良さを再認識してもらえるよう、これからも努めたい」と話していた。