運営方式が決まった近江鉄道の電車(近江鉄道提供)

近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会の6回目の会議が22日、東近江市役所であり、沿線自治体5市5町の費用負担割合が決定した。
沿線市町の費用負担の対象は2022年度と2023年度に近江鉄道が行う設備投資と修繕の経費、2024年度以降の公有化する鉄道施設への設備投資と維持修繕の費用で、県と沿線市町の負担割合は1対1となる。沿線市町の負担割合は駅数、営業距離、住民定期利用者数の3つの指標に基づいた数値によって算出された。
決定した沿線市町の費用負担割合は、3つの指標で最も高い割合だった東近江が20.67%、次いで彦根が8.91%で、以下が甲賀5.85%、近江八幡3.81%、日野3.02%、愛荘2.15%、豊郷1.57%、甲良1.47%、多賀1.31%、米原1.24%。県が残りの50%を負担する。
近江鉄道は今年6月までに2022年度と2023年度の設備投資および修繕計画と、2024年度から2033年度までの収支シミュレーションを作成。6月から11月にかけて協議会内に設ける分科会で近江鉄道からの計画内容を分析した上で、来年11月をめどに沿線市町の負担額を確定する。

キャッシュレス導入で利用促進 ビッグデータ活用、デマンド交通も

協議会の会議では国に提出する「近江鉄道沿線地域公共交通計画」の骨子案の内容も公表された。 そのうち基本方針としては以下の5項目。

  1. 近江鉄道線を再生、活性化する
  2. 二次交通を充実する
  3. 沿線の街づくりを進め、地域を活性化する
  4. 関係者が連携、協働して地域公共交通の利用を促進する
  5. 新たな技術やデータの活用による多様な利用者ニーズへの対応とイノベーションの創出

また、この5つの基本方針の実現に向けた主な事業内容は次の通り。

1. 近江鉄道線を再生、活性化する

  • 通学定期券の購入促進のほか、ノーマイカーデーやエコ通勤の導入で通勤の公共交通の利用を促進
  • 運行本数の増便、乗り継ぎの改善、所要時間の短縮などで利便性を向上
  • ICОCA対応などキャッシュレス決済の導入や駅・車両のバリアフリー化など設備を充実。

2. 二次交通を充実する

  • 沿線各駅に接続するバスなどの再編、ダイヤ調整▽デマンド型(事前予約型)交通の導入。

3. 沿線の街づくりを進め、地域を活性化する

  • 駅周辺への企業、商業施設、公共機関の誘致など駅周辺の賑わいを創出
  • 上下分離のタイミングでのイベント実施▽サイクルトレインの有効活用。

4. 関係者が連携、協働して地域公共交通の利用を促進する

  • 学校の社会見学や校外活動での利用促進
  • 近江鉄道パートナーズ(ファン)クラブの会員拡大。

5. 新たな技術やデータの活用による多様な利用者ニーズへの対応とイノベーションの創出

  • ビッグデータの活用などで沿線地域の人の移動実態を把握
  • あらゆる交通サービスを統合して移動が便利になる仕組み(MaaS)や自動運転技術の社会実験に関与。

今後のスケジュールとして、2021年度は6月の協議会で計画原案を示し、7月にパブリックコメントを実施。9月に計画を策定し国へ提出する。2022年度に鉄道の設備と施設を管理する団体を設立し、2024年度から上下分離へ移行する運び。