彦根城の世界遺産登録は昨年7月、ユネスコの諮問機関が事前に関与して助言する「事前評価制度」を活用して登録を目指す、と政府により発表があった。
2027年が登録の新たな通過点となった今、オーバーツーリズムの問題、おもてなし力の向上など、クリアすべき課題は多い。持続可能なまちづくりの実現に向かって、県市一丸となってさらなる機運の醸成を図っていく必要がある。
そこで今後さらなる一歩となるよう、彦根商工会議所が事務局を担う「世界遺産でつながるまちづくりコンソーシアム」で、琵琶湖を中心に県内の資産・資源を配し、県北部から広域を鳥瞰した「びわこ万華鏡 Lake Biwa Kaleidoscope」を制作した。

※世界遺産でつながるまちづくりコンソーシアム
彦根商工会議所を事務局に、湖東・湖北の経済団体や観光団体23団体と、県南部の3商工会議所を加えた26団体で構成される。彦根城世界遺産登録の推進活動として啓発・広報活動や、情報発信、学習機会の提供を行っている。

制作の背景

彦根商工会議所では、彦根城を世界的に価値のある資産(世界遺産)とするために、県と市、大学、民間で様々な連携をとりながら機運の醸成を図ってきた。「世界遺産」とは、「過去から引き継がれてきた、かけがえのない宝物。今を生きる世界中の人々が過去から引き継ぎ、未来へと伝えていかねばならない人類共通の遺産」と1972年のユネスコ総会で採択された世界遺産条約の中で定義されている。そして、登録のためには「どんな時代、どんな人でも価値を感じるもの(顕著な普遍的価値)」を証明する必要がある。
私たちはこれまで、彦根城固有の魅力のみならず、その資産を擁する土地の住民が資産の価値を知り、保存と活用を両立させながら未来へ繋げていくことを目指してきた。
ここで重要になるのは、彦根市だけの機運醸成だけではいけないということである。
ツーリズムに置き換えて考えると分かりやすい。例えば彦根城が世界遺産に登録された後、観光客は「彦根城」をデスティネーションとして予定を組むだろう。ただ、旅程全てを彦根のみで終える人は少なく、飛行機で来るのであれば、京都・大阪も視野に入れるだろうし、宿はアクセスのよい場所をとる可能性が高い。インバウンド客であれば「関西、日本」とさらに検討する視野は広くなる。
また2月28日、八重樫忠郎氏(岩手県平泉世界遺産ガイダンスセンター長)を招聘し「平泉の事例から学ぶおもてなし 学習セミナー」を開催した。八重樫氏は国内で最初に登録が延期となり、その後官民で取り組みを進めて2011年に登録へと至った際の立役者である。過去平泉の来訪ピークは1日1万人にまでのぼったが、宿泊は450人しか受け入れが出来なかった。残りの9500人は周辺近隣と連携したという。今後も、平泉を軸に県内外とで連携しながら様々な滞在プランの創出に力を入れていくそうだ。

点から面へ

滋賀県には他の地域にない地域資源、魅力が多数点在する。中でもまず、滋賀のシンボル「琵琶湖の活用」という県域共通の懸案に目を向けた。かつて琵琶湖を利用した湖上交通は極めて大切な輸送手段で、水辺は都市の顔であった。近年では水辺の重要性とその多彩な機能が見直され、湖上や河川、運河を活かしたウォーターフロントのまちづくりへと意識変革が進んでいる。今まで点で捉えることが多かった資産を面で捉えて発信していくことが大切である。
びわこ万華鏡は、県の6分の1を占める琵琶湖と、その周辺に点在する様々な県内の観光資源を表現。彦根城、湖東三山、メタセコイア並木、比叡山延暦寺などを四季折々に表現し、1枚に収めた。また、近未来の空飛ぶ車や遊覧船などは「発展していく時代の中でも、私たちの宝物を大切に守りながら魅力を伝えていきたい」という思いを込めた、明るい未来予想図である。
「びわこ万華鏡」というタイトルは、四季のカラフルな色彩や豊富な名所、滋賀の繋がりや歴史を万華鏡になぞらえて命名され、英名「Lake Biwa Kaleidoscope」はインバウンド向けに併記している。
今後は「びわこ万華鏡」を皆さんに使用していただくことで、琵琶湖と観光資産・資源のポテンシャルを活かし、さらに広く周知、連携し発信していく。既に、新聞報道され各メディアの注目を集めている。

官民一体で、一歩ずつ

本事業は彦根城世界遺産登録の推進活動の中から生まれた事業ではあるが、決して登録がゴールではない。既にその後を考えるべき段階にきている。大阪・関西万博や国スポ・障スポを2025年に控えた今、県の共通認識であるびわこの活用については、さらなる可能性を秘めている。
「世界遺産でつながるまちづくりコンソーシアム」では、彦根城世界遺産登録推進事業として、滋賀の魅力を写真や動画で伝える「LAYERED(レイヤード)」という事業を実施している。「LAYERED」は、滋賀の重厚な歴史や資源、人々の営みをレイヤーとして重ね合わせるという意であり、今回のびわこ万華鏡も一つの歩みとして重なりを成した。
今回の図は、ぜひ各団体での広報物や資料などで広く使用をお願いしたい。不易流行を大切に今後も官民一体、様々な取り組みを重ね合わせて重厚な滋賀になっていくことを願っている。


世界遺産とびわこ万華鏡

世界遺産のまちづくり委員会 木村泰造委員長

世界遺産都市としてのまちづくりを目指すことは地域の魅力と誇りを再発見するきっかけとなり、地域のブランディングに活用できれば、質の高い観光誘客につながると考えられます。地域は活性化することで、関係人口が増加し、ひいては定住人口も増える可能性があるでしょう。
また、近江は昔も今も交通の要衝で恵まれた地域です。しかし、その利便性ゆえに郷土への愛着と誇りがやや薄いように感じます。彦根城の世界遺産登録を目指すことで郷土を見直すきっかけとなると確信しています。
彦根城の世界遺産登録は〝まちづくり〟との想いから、視点を彦根から湖東湖北そして滋賀全域に広げました。琵琶湖を北部から鳥瞰し、春夏秋冬各地域のいい所を描いた「びわこ万華鏡」のごとく、滋賀全体が夢のある世界になればと想います。それぞれの地域が持つ魅力と誇りを再発見し、彦根城の世界遺産登録とともに地域の「文化遺産」を活かした持続可能な地域の発展につなげたいと願っています。
万華鏡のように地域が新しい繋がりをもてれば、世界遺産をこえて将来に対してさらなる輝きを発することでしょう。