中国・湘潭市との友好都市締結30周年

彦根市と中華人民共和国湖南省の湘潭(しょうたん)市は、1991年11月1日に友好都市を締結した。ともに両国を代表する湖に近く、歴史遺産に恵まれた地方の拠点都市である。以来、両市の友好使節団の相互派遣や研修生の受け入れなどの交流事業を行い、友好関係を築いてきた。2021年、友好都市締結30周年を迎えたことを記念して、12月21日にひこね市文化プラザにて記念式典が開催された。コロナ禍で人の往来が制限されているため、両市長がオンライン上で友好関係を確認する覚書に調印。続いて、両市の商工関係者により相互にプレゼンテーションが行われた。日本側からは、(一社)近江ツーリズムボードと当所会員の(有)田中印刷所の田中由一社長、(株)バイオアパタイトの中村弘一社長が登壇し、観光PRや中国への商品展開などについて説明、両市は今後より一層の経済交流を進めることで一致した。
日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、今年は日中国交正常化50周年の節目を迎え、日中関係の安定と一層の発展に向けて、長期的な経済協力のあり方や課題を見出す年になるだろう。

彦根市・湘潭市友好都市締結 30 周年記念式典

中小企業の海外展開 新輸出大国コンソーシアム

人口減少による国内市場縮小により、海外市場の重要性は一段と高まっている。更に、中小企業にとって海外展開はコロナ禍における厳しい状況を打破する大きな成長機会となり得る可能性がある。しかし、言語の問題、為替や決済の問題、海外の消費者に向けた商品PRの問題など、高いハードルがあると考える経営者も多い。そのような課題解決の相談に応じ、海外展開の計画立案からその実行まで支援する枠組みが「新輸出大国コンソーシアム」である。全国の商工会議所・商工会・地方自治体・金融機関・ジェトロなどの支援機関が幅広く結集して、海外展開に関心のある中堅・中小企業に対して、伴走型の支援サービスを提供している。
新輸出大国コンソーシアムの事務局機能を担う日本貿易振興機構(ジェトロ)は、日本の貿易促進を目指し中小企業の海外ビジネス展開における様々な相談対応や、課題解決に向けた支援を行っている独立行政法人である。ジェトロの滋賀県における拠点として、2017年7月に当所1階に「ジェトロ滋賀貿易情報センター(ジェトロ滋賀)」が開設された。所長の久木治氏に世界と日本の貿易情勢やジェトロの活用方法についてお話を伺った。


新型コロナ禍の国際情勢

ジェトロ滋賀所長 久木治氏

皆さんの肌感覚や報道でもご存じだと思いますが、2020年は新型コロナ感染症の拡大で世界経済が減速し、世界のGDPの伸び率は前年比マイナス3.3%でした。貿易においては金額と数量ともに減少に転じています。これは2009年のリーマンショック以来最大の落ち込みではあるものの、当時より株価の戻りがずっと早いため、回復はコロナ禍の方が早いのではと考えています。
次に、2021年の世界貿易は、中国の第一四半期の輸出額の伸び率が前年比48.6%増、輸入は27.6%増と、全体の伸び率をけん引しました。日本の貿易も回復傾向にあります。
特に注目したいのが、コロナ禍の影響により輸出全体が落ち込む一方で伸びている品目です。リモートワークや巣ごもりにより、急激に需要が伸びたデジタル部品や半導体機器の他、スキンケア用品です。品質の良さから従来より人気のあった日本のスキンケア用品の輸出額ランキングが2020年は世界第3位(2015年6位)に浮上。同じく、ゲーム機器においても2位(2015年5位)となりました。
今後はデジタル貿易大国である中国をはじめ、デジタル系通信機器、IoTやクラウド、非接触センサーなどのコロナテック、ECコマースなどの電子取引関連分野が伸びていくと思われます。
我々の生活においても5Gをはじめ様々なデジタル化が目に見えて進んでおり、それらの分野はコロナ禍が追い風となり、一気に加速しました。また、今後の長期的な視点からはインドやアフリカ地域の市場規模が拡大することが予想されています。これらの地域はこれまであまり注目されてきませんでしたが、今後は目を向けておくべきだと思います。

海外展開の事例

ジェトロへの相談件数はコロナの影響で減少傾向にあり、マイナスの影響を受けたという内容が多いです。そのような状況下において、ジェトロが支援している企業様で、輸出や現地事務所の立ち上げなど、上手く海外展開を進めておられる事例をご紹介します。

株式会社 昭和バルブ製作所

ジェトロでは滋賀県と共に水環境ビジネスに力を入れていますが、その一環として昭和バルブ製作所さんの海外企業とのマッチングのお手伝いをさせていただきました。海外に生産拠点をお持ちですが、現地での取引先探しのためにジェトロが中国やベトナム・インド・パキスタンなどのバイヤーを呼び、オンライン商談を活用していただきました。

木村水産株式会社

台湾で開催された日本の物産展(食品のフェア)に2020年に続き2021年も出店され、魚のオイル漬けが盛況で一番の売上となりました。価格が手頃で日持ちする加工食品の強みが評価されました。

有限会社 田中印刷所

元々は印刷業の企業様ですが、空港やお店の店頭で自動案内するCGを使ったバーチャルマネキンの映像産業へと上手く業態転換し、中国を中心に展開されています。中国での国際博覧会のジェトロブースに出展され、大きな反響を得られたことをきっかけに上海に販売代理店を置くなど、海外ビジネスに力を入れておられます。

ジェトロによる支援

ジェトロへのご相談は、コロナでの落ち込みからようやく回復してきたものの、国内が厳しいので海外へ目を向けたいという輸出ビギナーの方と、これまでの貿易をさらに進めるため現地の制度や法規について相談したいという方の2つに大きく分かれます。
ジェトロを上手に活用していただくためのポイントは、1. 自社の商品の魅力、アピールポイントを見つけること、2. どの国(地域)のどのようなターゲットに売り込むのかを決めておくことです。従来は外国語のパンフレット作成をおすすめしていましたが、近年は30秒程度の動画作成が販促ツールとしてベストです。映像は言語を補完して商品の魅力を直観的に伝えることができるため、海外バイヤーとの商談でもスタンダードになっています。キャッチーな動画にまとめるため、自社商品の強みを把握し、画像の見せ方などを工夫することがまずは必要となります。
コロナ禍で海外の展示会が軒並み中止となる中、オンライン商談が主流になっています。おすすめしているのが海外バイヤー向けオンライン商品カタログサイト「Japan Street」への登録です。

Japan Streetは、ジェトロの基準を満たす厳選された海外有力バイヤーのみが閲覧可能なカタログサイトで、出品される方は企業・商品情報と商品の画像を提出するだけで常時バイヤーに商品を案内でき、サイトを通じて商談も可能です。ジェトロでは、Japan Streetに登録している海外有力バイヤーに様々なプロモーションを実施していく予定です。
また、「海外展開現地支援プラットフォーム」は、現地パートナーや取引先探し、協力機関や専門家への紹介・取次ぎなど、現地在住のコーディネーターが相談に応じて課題解決に向けた支援を行うサービスです。これらのジェトロの支援メニューを皆様の国際ビジネス展開にぜひお役立てください。


商工会議所の活用

これから海外展開を検討する場合の新輸出大国コンソーシアムの活用方法として、まずは商工会議所で経営方針について相談し、自社の強みや海外企業へのセールスポイント、需要の見込める地域をしっかりと整理・把握した上で、海外展開の計画立案などをジェトロに相談するのも良いだろう。大きな可能性が広がる海外市場に目を向け、積極的にチャレンジしてみてはどうだろうか。