(株)滋賀銀行のシンクタンクである㈱しがぎん経済文化センタ-では、四半期ごとに「滋賀県内企業動向調査」を実施している。今回「2021年第4四半期(10-12月期)」の調査では、895社を対象に300社から回答を得た。このうち、湖東地域(彦根市・愛荘町・豊郷町・甲良町・多賀町)からの回答は33社だった。

湖東地域「製造業」の景況感はプラス水準に回復

今回の調査期間(2021年10-12月期)での湖東地域の自社の業況判断DIは▲12で、前回(7-9月期)の▲14から2ポイント上昇し、3四半期連続で回復した。県全体(▲12→▲16)は4ポイント低下したため、湖東地域の水準(▲12)は、20年4-6月期以来、1年半ぶりに県全体の水準(▲16)を上回った。
県内を地域別にみると、甲賀地域(▲15→▲35)、大津地域(▲14→▲19)などでマイナス幅が拡大したが、湖西地域(▲21→▲11)、湖北地域(▲18→▲11)、湖東地域(▲14→▲12)の3地域でマイナス幅が縮小した(図表1、図表2)。

湖東地域の業況判断DIを業種別にみると、製造業は+10で前回の▲8から18ポイントの大幅上昇でプラス水準に回復、非製造業は▲22で前回の▲17から5ポイント低下した。製造業と非製造業の両業種で、県全体(製造業▲3、非製造業▲26)を上回った(図表3)。
湖東地域の業況判断の個別コメントをみると、「ウッドショックの影響で、仕入価格が上昇した」(卸売)、「鋼材が品薄で入りづらく、受注もしにくい。受注物件の減少が続いている」(建設)、「人の動きはまだ不十分で、売上はGoToがあった昨年を10%下回っている」(サービス)といった原材料価格の高騰や新型コロナに起因するコメントが非製造業を中心にみられた。一方、製造業では「海外のロックダウンで、取引先からの注文が増加」(化学)、「前年同期比で125%以上の増収」(金属製品)といったプラスのコメントがみられた。
3カ月後(22年1-3月期)は9ポイント低下の▲21となる見通し。製造業(+10→▲10)、非製造業(▲22→▲26)ともに低下が見込まれている。県内の他地域では、湖西地域と東近江地域でマイナス水準からプラス水準に回復、甲賀地域、湖北地域でマイナス幅が縮小、一方、大津地域、南部地域ではマイナス幅が拡大する見通しである(図表2、図表3)。

仕入価格DIは2015年以降で最高水準

湖東地域のその他のDI項目をみると、売上DI(+9→▲6)は15ポイント低下、経常利益DI(+3→+6)は3ポイント上昇、販売価格DI(+6→+9)は3ポイント上昇、仕入価格DI(+49→+74)は25ポイントの大幅な上昇となり、湖東地域での地域別分析を開始した15年以降で最高水準となった。これは、原油などの資源価格の値上がりが進んでいることに加え、円安の影響もあり、原材料価格が高騰しているためとみられる。一方で、販売価格の上げ幅は僅かに留まっており、仕入価格上昇分の転嫁が進んでいないと考えられる。3カ月後は売上DIが▲9、経常利益DIが▲3、販売価格DIは+3でいずれも低下、仕入価格DIは+74で横ばいの見通し。
製・商品の在庫DI(+3→▲3)は6ポイント低下し、「不足感」がでてきた。生産・営業用設備DI(0→+9)は9ポイント上昇し、「過剰感」がみられる。雇用人員DI(▲12→▲33)は21ポイントの大幅低下となり、「不足感」が増している(図表3)。

設備投資実施は県全体と同水準

今回の調査期間(10-12月期)に設備投資を実施した(する予定)企業の割合は、湖東地域では50%で、前回調査(7-9月期)の60%より低下し、県全体(50%)と同水準となった。
湖東地域の設備投資実施・予定(未確定を含む)の主な内容をみると、「生産・営業用設備の更新」(44%)が最も高くなった(図表4)。 来期(22年1-3月期)に設備投資を実施する企業の割合は、湖東地域では44%に低下するも、県全体(43%)とほぼ同水準の見通しである。

温室効果ガス排出抑制・削減に「取り組んでいる」は、33%

特別項目として、「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)に向けた取り組み」について調査した。
自社での温室効果ガスの排出抑制・削減への取り組みについて、湖東地域は「取り組んでいる」が33%で、東近江地域(28%)に次いで2番目に低く(南部地域:33%と同率)、「取り組む予定で検討中・準備中」(21%)との合計も54%で最も低くなった(図表5)。一方で、「取り組んでいない」が46%で、7地域中最も高い。

前問で温室効果ガスの排出抑制・削減に「取り組んでいる」または「取り組む予定で検討中・準備中」と回答した企業に、具体的な内容をたずねたところ(複数回答)、湖東地域は「廃棄物の削減」(72%)が最も高く、県全体(57%)を大きく上回った(図表6)。次いで、「省エネ」(56%)、「環境保護活動への貢献」(33%)となった。一方、県全体では32%を占めた「クリーンエネルギーの導入」は6%で極端に低い。

最後に、温室効果ガスの排出抑制・削減に取り組む理由をたずねたところ(複数回答)、湖東地域は「SDGsやESGへの対応」(67%)が県全体(65%)と同様に最も高く、次いで「コストの削減」(50%)、「環境規制などの法令順守のため」(28%)となった(図表7)。

※SDGs…「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。
※ESG…企業の長期的成長に重要な環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の3つの観点。

【分析方法】DI(ディフュージョン・インデックス)

  • 質問の「プラスの選択肢(良い・増加・上昇)の 回答割合」から「マイナスの選択肢(悪い・減少・不足)の回答割合」を引いた指数。
  • 各項目の水準や方向性を示す。

寄稿:(株)しがぎん経済文化センター