マーケットはグローバル

彦根商工会議所の会報誌のタイトルは「不易流行」である。この四文字熟語は松尾芭蕉が「奥の細道」の中で見出した俳諧の理念である。「不易」は時を超えた不変の真理(あるいは変わらないもの)。「流行」とは時代や環境の変化によって革新されていくものをいう。渋沢栄一が『論語と算盤』で書き記した「道徳経済合一説」、「士魂商才」の精神が「不易」なものであり、今日ではますます重要になってきている(SDGsの17の目標の中身は社会倫理と経済循環にある)。そして、ニューノーマルという時代のイノベーションが「流行」である。
新型コロナウイルスの感染拡大は、様々な環境(国家・社会・ビジネス・生活)に激変をもたらした。アフターコロナ、ウィズコロナのニューノーマル(新しい生活様式)が浸透し、社会は今までとは異なるOSで動き始めている。デジタル、リモート、シェア(共有)、サブスク、ブロックチェーンなどが、5年後、10年後の未来予測を語るキーワードである。
「人口激減」、「地方創生」、「アフターコロナの経済再生」という大きな課題を抱える都市間(地域間)競争の行方は混沌とし、果たして地方は生き残れるかどうかが危ぶまれている。
 ニューノーマルという時代の最も大きな変化は、「AIの発達とデジタル技術の進化」である。一つの例だが、言語の壁は既に取り払われようとしている。仮想空間でストレスなく世界の人々とアバターで会話する時代が数年、いや現在進行形で訪れる。このことは、SNSで「世界の人々とつながりを持つことができる」という程度の話ではない。否応なく「マーケットが世界に拡大する」ということなのである。誰もが世界を相手にものづくりや商いをすることができる時代の到来である。我々は、ニューノーマルの潮流を泳ぎきりサバイバーとなり得るのか否か……。大きな境目を迎えている。

動画配信は不可欠なスキル

新型コロナ禍でDXは超加速し、リモートワークやWeb会議は日常となった。「顧客経験価値」「顧客体験価値」=CX(カスタマー・エクスペリエンス)を重視した新たなサービスが次々に誕生し、「CXの向上が企業の差別化」を生み出す残された可能性であるともいわれている。
文章や写真だけでは伝えられないストーリーを動画なら伝えることができる。テロップで解説を入れたり、音声で説明を加えるなど、工夫することができる。動画は最強の表現ツールであり、現時点では最も影響力が大きい。
後述の飯岡直樹氏のウェビナーでは、「動画があるページは、Googleの検索結果1ページ目になる確率が最大53倍」「動画は1分間でテキスト180万字分の情報を伝達する力がある」「動画は50%が記憶に残る。文字で読んだ人は22%しか覚えていない」「平均滞在時間は文字のみのサイトが42秒、動画があるサイトは5分50秒」など、動画活用の有効性が指摘されている。
ジェトロ滋賀貿易情報センター(ジェトロ滋賀)所長の久木治氏は「近年は30秒程度の動画作成が販促ツールとしてベストです。映像は言語を補完して商品の魅力を直観的に伝えることができるため、海外バイヤーとの商談でもスタンダードになっています」「コロナ禍で海外の展示会が軒並み中止となる中、オンライン商談が主流になっています」と話す(『不易流行』2月号特集「滋賀から世界へ 中小企業の海外展開とジェトロの活用」)。
インターネットネイティブ・SNSネイティブと呼ばれる世代ばかりでなく、誰もが簡単に動画を配信することができる時代である。撮影機材は、スマホ一台でOK。ニューノーマル時代の情報発信に不可欠なスキルといえるだろう。

必見! 情報発信力向上セミナー

今年2月、当所の主催で「スマホ一台でできる! 実践で学ぶ動画編集」(講師・横田秀珠氏)、「知ってる経営者は強い! 動画活用がもたらす未来」(講師・飯岡直樹氏)の二つのウェビナーを行った。
伝えたいメッセージは何か、自社にしかないものは何か、自らへの問いかけを形にし、伝えていくこと。これまで情報が届かなかった人に動画を活用することで訴求し、問い合わせや発注につなげていく。まずは、最初の一本を撮りアップロードしてみることからはじまる。今回、講師の先生方のご厚意により、ウェビナーの録画を期間限定(4月4日(月)~4月30日(土))で視聴することができる(メールアドレス登録要)。この機会をぜひ活用していただければと願っている。

スマホ一台でできる! 実践で学ぶ動画編集

横田秀珠氏は、イーンスパイア株式会社代表取締役、ネットビジネス・アナリスト、公立長岡造形大学情報リテラシー講師である。2007年にITコンサルタントとして独立。All Aboutプロファイル全専門家の中で全国1位のコラム評価を獲得。2008年からブログで最新のネットビジネスに関する情報発信を1日も欠かさず行っているネットビジネス指導の第一人者である。
横田氏のウェビナーはまさにスマホ一台で作る動画制作の実践そのものである。「VN」という動画編集アプリ(無料)を使うことができるようになるばかりでなく、何より「横田先生のノウハウ」を一挙に視聴できることが魅力だ。
「VN」は、基本的なカット編集、BGM音楽の挿入、テキストテロップ、トランジション、複数トラック対応、動画の書き出しなどの機能がそろっている。しかし、前半で横田先生が解説する「画面収録機能」の使い方や、Instagram・Facebook・LINEに実装されている動画作成機能を使いこなす裏技は役に立つ。特に、文字入れや縦画面を横画面にする方法などはすぐにでも実践でき、「スローモーション動画をスマホで簡単に撮影が可能ヘ」、「早送りタイムラプス動画をスマホで簡単に撮影が可能ヘ」など動画撮影が簡単になり身近なものになったことを実感できるに違いない。
「伝えたい人」にメッセージを届けるには、「伝えたい人」はどのような顧客層なのか、「伝えたいメッセージ」はどのような内容なのかをプランニングし制作を進めるのが通常だが、まず自らSNSで動画を発信する勇気を得ることができるだろう。一気にデビューである。

2/18動画編集セミナー(横田秀珠 講師)視聴希望はこちら

知ってる経営者は強い! 動画活用がもたらす未来

家元と名乗る飯岡直樹氏は株式会社マックス・ストーン代表取締役である。2007年ホームページ制作会社を起業。中小企業の問題解決件数は5300件以上。新型コロナの影響により自社の売上が5割ダウンしたが、コロナ禍で売上を伸ばしている企業は「体験価値を提供している」ことに気づき、試行錯誤の結果売上10割に復帰を果たした。動画におけるユーザーへのアプローチは、単なるブランドイメージの向上だけでなく、正しくメッセージを伝える手段として消費行動を喚起し、自社の売上アップに貢献することができるという。
ウェビナーでは、「動画を活用する4つの理由」「YouTubeとFacebookの動画活用方法」「SEOの本質」「効果的なPR動画」「コロナ禍で生まれた新たな動画活用」など、コロナ禍で売上10割復帰を果たしたノウハウを公開している。
最も重要なのは「ユーザー目線で動画を制作する」ということである。約8割は運営者目線の動画だという。
また動画再生数は、FacebookがYouTubeの4倍であるといわれている。同じ動画をFacebookとYouTubeに投稿し30時間後の再生回数を検証してみると、Facebook3497回、YouTube112回という結果であった。4倍どころの差ではないことがわかる。拡散にはFacebookの方が有効。但し、「動画があるページは、Googleの検索結果1ページ目になる確率が最大53倍」になるというのは、自社のWebサイトにYouTubeの動画を埋め込んだ場合の結果であることに注意する必要がある。更に、FacebookにYouTubeにアップした動画のURLをコピーするとその投稿は極端に「いいね」の数が減る(FacebookにはFacebookのインターフェイスを使ってアップロードする)など、確かに「知っている経営者は強くなれる」内容である。
飯岡氏は「中小企業は対面で培った温かい接客のノウハウがあるが、これはデジタル重視の新興企業には持ち得ないものである。オンラインというデジタルな手段を用い、アナログで温かい接客を体験価値として提供することが重要である」という。

2/25動画活用セミナー(飯岡直樹 講師)視聴希望はこちら

例えば、ウェビナーの録画活用は体験価値の提供であるといえる。コロナ禍以前には、実現するにはハードルが高い事業であり、大きな変化だということに気づくだろう。

  1. ウェビナーはZoomで行われている。
  2. Zoomの録画機能を使ってアーカイブしたものを共有することができる。
  3. スマートフォン一台あれば1,2のことは誰でも簡単にできる。

このことをビジネスにどのように活かすか、考えるか考えないかで、ニューノーマル時代に大きな差が生まれることは歴然としている。
かつて「ホップ・ステップ・ジャンプ」という言葉があった。今の時代は「リープ・フロッグ」である。「リープ・フロッグ」の和訳は「カエル跳び」。既存の社会インフラが整備されていない新興国において、新しいサービス等が先進国が歩んできた技術進展を飛び越えて一気に広まることをいう。言葉の用法は違うかもしれないが、動画という現在最強の情報発信のノウハウを得ることで、リープ・フロッグ! 一気にジャンプを果たしたいものである。
二つのウェビナーを視聴すれば鬼に金棒である。