彦根商工会議所では、今年度より会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施し、このほど第3四半期(令和3年10月~12月分)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員242社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。


調査方法:彦根商工会議所会員企業242社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和3年10月~12月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:142社(回答率58.7%)

建設業製造業卸小売業飲食業サービス業合計
回答数2927332231142
業種別比率20.4%19.0%23.3%15.5%21.8%100.0%

※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和3年7月~9月と比較した令和3年10月~12月の状況
※昨年比:令和2年10月~12月と比較した令和3年10月~12月の状況
※次 期:令和3年10月~12月と比較した令和4年1月~3月の見通し

総括的概要

  • 市内企業における今期の業況判断DIは▲12.1と前回調査よりも13ポイントマイナス幅が縮小したものの、次期の業況判断DIは▲21.6とマイナス幅が拡大する見通し。
  • 業種別の業況判断DIでは、サービス業が20.7と好転した。製造業が0.0と不変。建設業▲31.0、卸小売業▲24.2、飲食業は▲27.3と悪化を示したものの前回調査よりそれぞれマイナス幅が縮小している。
    しかし次期は、いずれの業種も悪化の見通しで、特に飲食業は▲57.1とマイナス幅を拡大する見通し。
  • 回答企業の71.1%が「経営の持続にかかる支援」を求めている。

1. 全体の景況等

今期の「業況判断DI(好転-悪化)」は▲12.1、「採算DI(好転-悪化)」は▲8.6と、いずれも前回調査よりも13ポイントマイナス幅を縮小した。「売上高DI(好転-悪化)」は2.1とわずかながら好転した。「売上高DI」は好転、悪化、不変がほぼ同数であるが、業種による隔たりがある。次期は、「業況判断DI」が▲21.6、「採算DI」が▲27.5、「売上高DI」が▲33.1といずれの業種ともマイナス幅が拡大する見通し。

「仕入単価DI(上昇-低下)」は昨年比で62.3、前期比で56.2と前回調査時よりもさらに上昇し、次期で50.7と上昇は継続する見通し。「販売単価DI(上昇-低下)」は昨年比で15.1、前期比で11.5、次期で2.2と上昇を示した。原材料価格上昇を販売価格に「転嫁できていない」又は「あまり転嫁できていない」とした事業者は、全体の69.8%であった。
「資金繰りDI(容易-困難)」は昨年比で▲17.7、前期比で▲13.7、次期で▲18.0と、マイナス幅が拡大した。「従業員DI(過剰-不足)」は昨年比で▲19.4、前期比で▲19.6、次期は▲19.7と不足傾向が継続する見通し。従業員確保の為の労働環境の整備として、1/3の事業者が「時間外労働の削減」「有給休暇の取得促進」「賃金の引き上げ」に取り組んでいる。国・県・市などへの施策について「経営の持続にかかる支援」を要望する意見が71.1%と全業種に共通して高かった。

2.業種別の景況等

建設業

今期の「業況判断DI」は▲31.0と前回調査より6ポイントマイナス幅が縮小したものの、「売上高DI」が▲27.6と9ポイントマイナス幅を拡大、「採算DI」が▲17.2と1ポイントマイナス幅を拡大した。昨年比の「業況判断DI」▲41.4、「売上高DI」▲31.0、「採算DI」▲31.0よりはマイナス幅を縮小した。次期の「業況判断DI」は▲17.2、「売上高DI」は▲13.8、「採算DI」は▲24.1と厳しい状況が続く。
「仕入単価DI」が昨年比で75.0、前期比で71.4、次期は78.6と仕入単価上昇の継続が見込まれる。「販売単価DI」は昨年比では10.3、前期比で3.4、次期は6.9とやや上昇が継続している。55.1%が原材料価格上昇を販売価格に「転嫁できていない」又は「あまり転嫁できていない」としており、販売単価上昇が仕入単価上昇に対応しきれていない現状がうかがえる。
「資金繰りDI」は昨年比で▲20.7、前期比で▲20.7。次期は▲10.3とマイナス幅を縮小する見通し。「従業員DI」は昨年比で▲27.6、前期比で▲27.6、次期で▲37.9と不足傾向が継続する見通し。従業員確保の為の労働環境の整備は、「有給休暇の取得促進」に41.4%、「時間外労働の削減」に34.5%の事業者が取り組んでいる一方、「取り組んでいない」も34.5%であった。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が79.3%と他業種に比し要求する事業者の割合が高かった。ついで「雇用対策にかかる支援」が34.5%、「事業変革・再構築にかかる支援」が31.0%。

(参考)調査対象企業のコメント

「新型コロナウイルスに係る事業者対策支援金等の充実をしてほしい」

製造業

昨年比の「業況判断DI」は0.0と不変となった。「売上高DI」は18.5、「採算DI」は3.8と好転した。今期の「業況判断DI」は0.0と不変であったものの、「売上高DI」は40.7、「採算DI」は15.4と前回調査よりもさらに大きく好転した。しかし次期は「業況判断DI」が▲18.5、「売上高DI」が▲18.5、「採算DI」が▲15.4と大きく悪化する見通しとなった。「仕入単価DI」は昨年比で85.2、前期比で74.1、次期で59.3と上昇が見込まれる。「販売単価DI」は昨年比で25.9、前期比で18.5、次期で11.1と上昇は継続する見込み。77.8%が原材料価格上昇を販売価格に「転嫁できていない」」又は「あまり転嫁できていない」としており、販売単価上昇が仕入単価上昇に対応しきれていない。
「資金繰りDI」は昨年比で▲11.1、前期比で▲7.4、次期は▲3.7とマイナス幅が縮小してきている。「従業員DI」は昨年比で▲22.2、前期比で▲22.2、次期で▲18.5と不足傾向が継続する見通し。従業員確保の為の労働環境の整備は、「有給休暇の取得促進」に59.3%、「時間外労働の削減」に40.7%の事業者が取り組んでいる。 国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が63.0%。「事業変革・再構築にかかる支援」44.4%、「雇用対策にかかる支援」40.7%、「DX(業務改善)にかかる支援」37.0%は他業種に比し最も多かった。

(参考)調査対象企業のコメント

「持続化補助金等の早期審査、早期給付をしてほしい」
「積雪があった場合の交通インフラの整備をしっかりとしてほしい」

卸小売業

「業況判断DI」は昨年比で▲27.3、前期比で▲24.2、次期で▲18.8と前回調査よりも、マイナス幅は縮小したものの厳しい状況が続く。「売上高DI」は昨年比で▲36.4、前期比で▲9.1と大きくマイナス幅を縮小したものの、次期で▲37.5とマイナス幅が拡大する見通し。「採算DI」は昨年比で▲42.4、前期比で▲36.4、次期で▲31.3と厳しい状況にある。「仕入単価DI」は昨年比で59.4、前期比で65.6、次期で51.6と上昇傾向を示し、「販売単価DI」は昨年比で28.1、前期比で30.3、次期で12.5%とようやく販売価格への転嫁が始まったが、まだ66.6%が原材料価格上昇を販売価格に「転嫁できていない」又は「あまり転嫁できていない」。
「資金繰りDI」は昨年比で▲21.9、前期比で▲15.6、次期は▲18.8とマイナス幅が拡大してきている。「従業員DI」は昨年比で▲12.5、前期比で▲12.5、次期で▲6.5でやや不足傾向。従業員確保の為の労働環境の整備は、「時間外労働の削減」に39.4%、「賃金の引き上げ」に36.4%、「有給休暇の取得促進」に30.3%の事業者が取り組んでいる。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が63.6%、「雇用対策にかかる支援」30.3%、「事業変革・再構築にかかる支援」30.3%。

(参考)調査対象企業のコメント

「国内生産材の保護育成に力を入れてほしい」
「コロナ禍の影響を受けた事業者の税金の免除と公平な支援金給付」
「積雪があった場合の交通インフラの整備をしっかりとしてほしい」
「彦根市民がもっと、彦根市民が作った食品を消費するように!地元行政がPRを」
「彦根市民が自慢できるmade in hikoneを行政が支援したくさん作る必要がある」

飲食業

昨年比では「業況判断DI」は▲27.3、「売上高DI」は▲40.9、「採算DI」は▲28.6。前期比では「業況判断DI」は▲27.3、「売上高DI」は▲9.1、「採算DI」は▲9.1と、いずれも前回調査に比して20ポイント以上マイナス幅を縮小した。次期については「業況判断DI」が▲57.1、「売上高DI」が▲66.7、「採算DI」が▲66.7と大半の事業者が悪化するとの見通し。「仕入単価DI」が昨年比では90.5、前期比で61.9、次期で71.4とほぼすべての事業者が上昇。「販売単価DI」は昨年比で▲4.8、前期比で▲4.8とほぼ不変であったものの、次期で▲28.6と低下する見込み。95.5%の事業者が原材料価格上昇を販売価格に「転嫁できていない」又は「あまり転嫁できていない」。
「資金繰りDI」は昨年比では▲18.2、前期比で▲9.5、次期は▲38.1で、マイナス幅が拡大する見込み。「従業員DI」は昨年比で▲19.0、前期比で▲19.0、次期で▲14.3で不足傾向が続く見通し。従業員確保の為の労働環境の整備は、「賃金の引き上げ」に40.9%が対応している一方「有給休暇の取得促進」は9.1%、「時間外労働の削減」は13.6%と他業種に比し少ない。「取り組んでいない」は45.5%であった。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が81.8%。「感染症対策にかかる支援」45.5%は他業種に比し最も多かった。ついで「雇用対策にかかる支援」31.8%。

(参考)調査対象企業のコメント

「コロナ感染拡大の抑制をしてほしい」
「飲食店への来店を促す施策と、飲酒を妨げないルール整備をしてほしい」
「事業存続のための支援金をお願いしたい」

サービス業

「業況判断DI」は昨年比で3.2、前期比で20.7、「売上高DI」は昨年比で▲16.1も、前期比で16.7、「採算DI」は昨年比で▲9.7、前期比で10.0と大きく好転したが、次期は「売上高DI」が▲36.7と大きく悪化する見通しのため、「業況判断DI」が▲6.7、「採算DI」が▲10.0と悪化する見通しとなった。「仕入単価DI」は昨年比で13.3、前期比で10.3、次期で0.0とほぼ不変、「販売単価DI」も昨年比で10.0、前期比で3.4、次期は0.0と不変。61.3%が原材料価格上昇を販売価格に「転嫁できていない」」又は「あまり転嫁できていない」。
「資金繰りDI」は昨年比で▲16.1、前期比で▲13.3、次期で▲23.3、「従業員DI」は昨年比で▲16.7、前期比で▲17.2、次期で▲20.7と、前回調査時よりもマイナス幅が拡大してきている。従業員確保の為の労働環境の整備は、「時間外労働の削減」に35.5%、「賃金の引き上げ」に32.3%、「有給休暇の取得促進」に29.0%の事業者が取り組んでいる。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が71.0%、「感染症対策にかかる支援」が35.5%、「雇用対策にかかる支援」35.5%。

(参考)調査対象企業のコメント

「新型コロナウイルスに係る事業者対策支援金等の充実をしてほしい」
「適時にスピーディーにGoToイート、GoToトラベルを実施してほしい」
「支援や経済対策のためのイベント実施について、情報発信の充実を図ってほしい」
「積雪があった場合の交通インフラの整備をしっかりとしてほしい」