ひこにゃんの城
僕は中学の3年間、陸上部に在籍し、自転車で彦根城の堀端の道を通って陸上競技場に通っていました。初めて公式大会で走った競技場です。高校は京都だったので、彦根で16年間暮らしたことになります。小学校の授業で彦根城に登り、石垣や櫓、天守などについて学んだ記憶は残っています。城まつりなど特別なイベントがあると出かけていくところで、暮らしのなかにお城があり、家からも近く、特別な思いで見たことはありませんでした。
県外で暮らして面白かったのは、僕の周りの人は彦根城イコールひこにゃん、「彦根城」は「ひこにゃんの城」というイメージをもっているということでした。「彦根城」と言って、ピンと来なくても、「ひこにゃんのところだよ」って言えばわかるんです。
2022年の城まつりに、直政公に扮して馬に乗り郷里の人たちに手を振って出迎えていただきました。「応援しています」って言われて、すごく嬉しかったのを覚えています。ゆっくり彦根城を歩いたのも、実はこのときが初めてでした。
子どもの頃に観た彦根城の桜も印象的な記憶としては残っていないのですが、県外での暮らしが長くなり、SNSで堀や石垣のライトアップや、豪華な桜の写真を見ると、美しいだけでなく歴史もあり、いい町で子ども時代を過ごしていたのだと思うようになりました。
自転車で15分の世界文化遺産
彦根城は、国宝の天守、重要文化財の櫓、石垣と堀、城山そのものが素晴らしい。国内にも天守が残る城はありますが、その周りは高層ビルとはいわないまでも、ビジネス仕様の建物に囲まれています。城は綺麗ですが、少し離れると街の喧騒に包まれます。彦根の城は風情のあるまちなみを歩き、城山を登りようやく天守に至ります。城の周りも含めて素晴らしいと思います。
僕は海外遠征に行くと、ガイドブックや書籍などで観光に訪れる場所を調べて予定を立てます。だから、彦根城が「世界文化遺産」とそこに載っているか載っていないかでは、海外から来た人の反応が全く違うと思うのです。
海外で彦根城の話をすることはありません。残念ながら日本は東京や京都のイメージが強いというのが正直な印象ですが、彦根城の世界文化遺産登録が実現すれば話題がひとつ増えますね。
県外の友人には「ひこにゃんの城が世界文化遺産に登録されたよ、実家の近くで、自転車で15分」なんて紹介するのかもしれません。
彦根城が世界文化遺産登録されるだろう2025年は、国民スポーツ大会が滋賀県で開催されます。その時、世界遺産登録が叶っていればすごくいいですね。競技場から天守が見えて、バッチリ最高だと思います。
両親をはじめ小学校、中学校時代の友人、子供の頃からお世話になった方々がたくさんいて今の自分がいるので、大人になった今、現役アスリートとして自身の走りで地元滋賀県・彦根市を盛り上げていきたいと思っています。