彦根商工会議所では、会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施しております。このほど第8四半期(令和5年1〜3月期)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員198社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。


調査方法:彦根商工会議所会員企業198社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和5年1月~3月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:95社(回答率48.0%)

建設業製造業卸小売業飲食業サービス業合計
回答数212513112595
業種別比率22.1%26.3%13.7%11.6%26.3%100.0%

※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和4年10月~12月と比較した令和5年1月~3月の状況
※昨年比:令和4年1月~3月と比較した令和5年1月~3月の状況
※次期:令和5年1月~3月と比較した令和5年4月~6月の見通し

総括的概要

  • 市内企業における業況判断DIは、新型コロナ第8波および原材料費の高騰の影響もあって▲7.4と悪化も、次期には飲食業が大きく好転し、他業種にも改善が見込まれる。ただし、製造業は悪化が懸念されている。
  • 売上高DIは▲15.8と悪化を示したものの、次期は飲食業が54.5、卸小売業が23.1と脱コロナで大きく好転する見通し。

環境変化による収益への影響

  • 新型コロナ感染症の感染沈静化により収益増加した事業者は、飲食業で増加した一方、その他の業種で減少した。
  • 円安の進行により全業種で収益減少した事業者が増加した。
  • インターネットの普及等によるデジタル化によって収益減少した事業者が減少し収益増加した事業者が増加しており、デジタル化への対応が進んでいる。

1. 全体の景況等

今期の「業況判断DI(好転-悪化)」は▲7.4と前回調査よりも7ポイント悪化、「売上高DI(好転-悪化)」は▲15.8と1年ぶりに悪化に転じ、「採算DI(好転-悪化)」は▲9.5と9ポイント悪化した。しかし、前回調査時の次期予想よりは赤字幅は小さく、次期は「業況判断DI」は2.1、「売上高DI」は1.1と少しずつ好転の見通し。特に飲食業は大きく好転する見通し。
「仕入単価DI(上昇-低下)」は昨年比で77.9、前期比で71.6、次期は74.7と高い水準で推移している。「販売単価DI(上昇-低下)」は昨年比で45.3、前期比で33.7、次期で35.8と、継続的な上昇を示した。
「資金繰りDI(容易-困難)」は昨年比で▲6.3、前期比で▲6.3、次期で▲5.3と困難な状況が継続している。「従業員DI(過剰-不足)」は昨年比で▲18.9、前期比で▲14.7、次期は▲15.8と不足傾向が継続する見通し。
「環境変化」による収益への影響として、「新型コロナ感染症の感染拡大」により収益が減少すると回答した企業が全体の46.3%と前年同時期調査よりも18ポイント減少した一方、「ロシア・ウクライナ情勢の悪化」による収益の減少は56.8%と9ポイント増加、「円安の進行」による収益の減少は52.6%と14ポイント増加した。「インターネットの普及等によるデジタル化」による収益の減少は7.4%と5ポイント減少し、収益の増加は21.1%と2ポイント増加した。

2. 業種別の景況等

建設業

仕入単価の上昇が続き、売上高、業況、採算ともに悪化を示しているが、次期には底打ちをする見通し。

今期の「業況判断DI」は▲28.6と前回調査よりも7ポイントマイナス幅を拡大、「売上高DI」は▲38.1と10ポイントマイナス幅を拡大、「採算DI」は▲33.3と23ポイントマイナス幅を拡大。次期は、「業況判断DI」は0.0、「売上高DI」は0.0、「採算DI」は▲14.3と前回調査よりも大幅にマイナス幅を縮小し、悪化が底打ちする見通し。
「仕入単価DI」は昨年比で90.5、前期比で71.4、次期は76.2と上昇はさらに継続する見通し。「販売単価DI」は昨年比で33.3、前期比で19.0、次期は23.8と上昇が継続する見通し。
「資金繰りDI」は昨年比で▲23.8、前期比で▲23.8と前回調査よりも悪化してきている。次期は▲4.8と今期に比べ19ポイントマイナス幅が縮小する見通し。「従業員DI」は昨年比で▲23.8、前期比で▲23.8、次期で▲19.0と不足傾向が継続する。
「環境変化」による収益への影響は「円安の進行」による収益の減少が76.2%と前年同時期調査よりも37ポイント増加し、「ロシア・ウクライナ情勢の悪化」による収益の減少76.2%とともに大きく収益に影響を及ぼした。一方「新型コロナ感染症の感染拡大」による収益の減少は42.9%と14ポイント減少し、「新型コロナ感染症の感染縮小」による収益の増加は9.5%と12ポイント減少した。

参考:「環境変化」に対して、講じているまたは講じようとしていること

  • 新規事業の計画、新規雇用の計画等

製造業

仕入単価の上昇により、売上高、採算が悪化してきているが、資金繰りは少しずつ好転している。

今期の「業況判断DI」は0.0と不変であったものの、「売上高DI」は▲16.0と再び悪化に転じ、「採算DI」は▲16.0と前回調査よりも12ポイントマイナス幅を拡大した。次期は「業況判断DI」は▲16.0、「売上高DI」は▲40.0、「採算DI」は▲24.0とさらに悪化する見通しとなった。
「仕入単価DI」は昨年比84.0、前期比68.0、次期72.0と上昇は継続している。「販売単価DI」についても昨年比60.0、前期比28.0、次期36.0と上昇が継続している。
「資金繰りDI」は昨年比12.0、前期比12.0、次期0.0、「従業員DI」は昨年比▲16.0、前期比▲8.0、次期0.0と全業種中最も安定した状態であった。
「環境変化」による収益への影響は、「新型コロナ感染症の感染拡大」による収益の減少は20.0%と前年同時期調査よりも27ポイント減少した。「ロシア・ウクライナ情勢の悪化」および「円安の進行」による収益の減少はともに52.0%と11ポイント増加した。

参考:「環境変化」に対して、講じているまたは講じようとしていること

  • 商品価格の値上げ
  • 自社EC(通信販売用ホームページ)販売の強化を目指して実施はしているが、思う様に伸び悩んでいる。
  • 仕入先の見直し、分散化。仕入品目の見直し

卸小売業

仕入単価の上昇もあって業況、売上高、採算ともに悪化に転じたものの、次期には売上高、採算ともに再び好転する見通し。

今期の「業況判断DI」は▲23.1と前回調査よりもマイナス幅を6ポイント拡大、「売上高DI」は▲38.5とマイナス幅を34ポイント拡大した。しかし「採算DI」は▲15.4とマイナス幅を2ポイント縮小した。次期は「業況判断DI」が▲7.7と大きくマイナス幅を縮小し、「売上高DI」は23.1、「採算DI」は7.7と好転する見通し。
「仕入単価DI」は昨年比で76.9、前期比で92.3、次期で92.3とほぼすべての事業者が上昇と回答。「販売単価DI」は昨年比で38.5、前期比で46.2、次期で53.8と上昇傾向が継続する見通し。
「資金繰りDI」は昨年比で▲23.1。前期比は▲23.1、次期は▲15.4と困難な状況が継続する見通し。「従業員DI」は昨年比で▲23.1、前期比で▲23.1、次期で▲30.8と不足傾向。
「環境変化」による収益への影響は「ロシア・ウクライナ情勢の悪化」による収益の減少が69.2%と前年同時期調査よりも18ポイント増加し、「円安の進行」による収益の減少は53.8%と9ポイント増加した。一方「新型コロナ感染症の感染拡大」による収益の減少は46.2%と16ポイント減少し、「新型コロナ感染症の感染縮小」による収益の増加は7.7%と17ポイント減少した。

参考:「環境変化」に対して、講じているまたは講じようとしていること

  • 商品の値上げを予定
  • 販売価格の見直し、従業員確保
  • 顧客満足向上のための柔軟な対応とサービスの構築
  • インボイス制度等デジタル化への対応
  • 仕入価格の不安定な状況での入札制度における官公庁の柔軟な対応を希望

飲食業

売上高が悪化に転じたものの採算は好転。次期には、売上高、採算、業況ともに大きく好転する見通しとなった。

今期の「売上高DI」は▲18.2と悪化に転じたものの、「業況判断DI」は0.0と不変、「採算DI」は9.1と前回調査よりも5ポイントプラス幅が拡大した。次期は、「売上高DI」が54.5、「業況判断DI」が45.5、「採算DI」が36.4と、大きく好転する見通しとなった。
「仕入単価DI」が昨年比では72.7、前期比で72.7、次期で63.6と上昇が継続するものの、「販売単価DI」は昨年比で72.7、前期比で63.6、次期で63.6と過半数の事業者が販売価格への転嫁を進めている。
「資金繰りDI」は昨年比では0.0。前期比では▲9.1と8ポイントマイナス幅を縮小した。次期は▲9.1の見通し。「従業員DI」は昨年比▲27.3、前期比で▲18.2、次期で▲27.3と不足傾向が続く見通し。
「環境変化」による収益への影響は、「新型コロナ感染症の感染拡大」による収益減少が72.7%と前年同時期調査よりも22ポイント減少、「新型コロナ感染症の感染縮小」による収益増加は63.6%と24ポイント増加し、全業種中最も高い率となっている。また「ロシア・ウクライナ情勢の悪化」による収益減少は81.8%と19ポイント増加し、これも全業種中最も高い率となっている。「インターネットの普及等によるデジタル化」により収益が増加したと回答した企業は18.2%で13ポイント増加した。

参考:「環境変化」に対して、講じているまたは講じようとしていること

  • 販売価格の見直し、ブランドの構築
  • SNS発信の強化(Instagram、LINE、Facebookなど、スマートフォン等を使用し写真や文章などの情報を共有するサービス)

サービス業

業況、売上高、採算のいずれも好転した。次期も同様の見通し。

今期の「業況判断DI」は8.0、「売上高DI」は16.0、「採算DI」は12.0と前回調査よりもプラスポイントは縮小したものの好転が継続。次期は「業況判断DI」が8.0、「売上高DI」が8.0、「採算DI」が▲4.0とほぼ不変となる見通し。
「仕入単価DI」は昨年比で64.0、前期比で64.0、次期で72.0と上昇が継続する見通し。「販売単価DI」は昨年比で32.0、前期比で32.0、次期は24.0と販売価格の見直しが継続している。
「資金繰りDI」は昨年比で▲4.0、前期比で0.0、次期で▲4.0とほぼ不変。「従業員DI」は昨年比で▲12.0、前期比で▲8.0、次期は▲16.0と不足する状況が継続する見通し。
「環境変化」による収益への影響は、「新型コロナ感染症の感染拡大」による収益減少が64.0%、「新型コロナ感染症の感染沈静化」による収益増加が48.0。「ロシア・ウクライナ情勢の悪化」による収益減少は28.0%、「円安の進行」による収益減少は32.0%と全業種中最も影響が少なかった。「インターネットの普及等によるデジタル化」による収益の増加は28.0%と全業種中最も高い率となっている。

参考:「環境変化」に対して、講じているまたは講じようとしていること

  • 商品の値上げ、新メニューの導入
  • アフターコロナに向けて営業・マーケティング活動を活発化
  • インターネットによる販売チャネルの拡大
  • インバウンド需要の回復