和田 裕行(わだ ひろゆき)

1970年生まれ。1993年3月慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業。
1997年よりアパレルブランド創業・経営。2021年5月10日第25代彦根市長就任

彦根城築城以来410年を超える歴史あるまちに生まれ育ったということが、私の原点です。私にとって彦根城は、特別なものというより、空気のようなもので、幼いころから当たり前にあって、四季折々の景色も含めて生活の一部でした。城や文化を大事にするということも体にしみついています。
個人的には、彦根城の強烈な思い出として、国宝・彦根城築城400年祭の前年、2006年のライトアップがあります。今でこそカラーライトアップは知られるようになりましたが、当時、井伊の赤備えにちなみ天守を赤色にライトアップしたところ「炎上か」とご批判をいただき一晩で赤色終了となりました。良くも悪くも先駆者として大変思い出深い出来事です。

彦根藩は江戸時代250年の平和を幕府の中枢から支え、彦根も城下町として発展してきました。毎年、「全国市長会」の会場となるホテルニューオータニはかつて彦根藩の中屋敷でしたので彦根市長として出席するたびに誇らしく思っております。また、井伊直弼公に対して、世間ではネガティブなイメージもありますが、日本を開国に導いた功労者であり、茶道や和歌、能などにも精通した文化人でもありました。市では「井伊直弼公の功績を尊び茶の湯・一期一会の文化を広める条例」を制定し、歴史と文化の香り高いまちの実現を目指しています。私自身、彦根で生まれ育ったことに誇りをもっていますし、将来を担う子どもたちにもそう思ってもらえる街づくりをしていきます。

オレンジライトアップ(2016.11.10)

市長としては、今後も彦根城を維持管理し、未来へ残していくことを考えなくてはなりません。文化財の維持には膨大な費用がかかります。そのためには、守るだけでなく彦根のポテンシャルをどう活かしていくのか、戦略的な活用が必要となってきます。
まずは彦根城の世界文化遺産登録を確実に実現し、そして世界遺産登録が一過性のイベントにならないよう持続可能な観光を作っていくこと。特にインバウンド誘致に向けて取り組みたいと思っています。そのために早急に進めなければならないのが〝食とおもてなし〟です。「今回は彦根牛を食べたけれど、次は、最高のビワマスを食べたい、次はあそこへ泊ってみたい!」と繰り返し来ていただけることが一番大事だと考えています。観光はお店や宿泊施設だけではなく、生産者や流通、映像や情報、そして教育も、地域すべての産業が関わっています。城に安住するのではなく彦根の魅力をブラッシュアップし続け、持続可能な観光を彦根で作っていきたいですね。
彦根城の世界遺産登録にむけては、文化的価値や普遍的価値も大切ですが、彦根城が何よりも地域のみなさんに愛されているということ、これまで市民が守ってきたということが一つの最大の価値であり、皆さんも誇りをもっておられると思います。それをもっとアピールすることが登録に近づくことではないかと思います。私たち行政も頑張っていきますので、みなさんの応援を今後ともぜひよろしくお願いいたします。