彦根商工会議所では、会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施しております。このほど第10四半期(令和5年7〜9月期)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員200社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。
調査方法:彦根商工会議所会員企業200社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和5年7月~9月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:104社(回答率52.0%)
建設業 | 製造業 | 卸小売業 | 飲食業 | サービス業 | 合計 | |
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回答数 | 17 | 26 | 18 | 16 | 27 | 104 |
業種別比率 | 16.3% | 25.0% | 17.3% | 15.4% | 26.0% | 100.0% |
※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和5年4月~6月と比較した令和5年7月~9月の状況
※昨年比:令和4年7月~9月と比較した令和5年7月~9月の状況
※次期:令和5年7月~9月と比較した令和5年10月~12月の見通し
総括的概要
- 市内企業における業況判断DIは、飲食業、サービス業で好転、建設業、卸小売業、製造業で悪化の状況が継続している。
- 原材料費、人件費、経費の増加に対し、販売価格の転嫁に取り組むとともに、製造業、建設業、飲食業で生産性向上、卸小売業で在庫調整に取り組んだ。
- 顧客(売上)の減少に対し、既存顧客との関係強化に取り組むとともに、製造業で新商品開発、飲食業、サービス業で広告宣伝の強化に取り組んだ。
1. 全体の景況等
今期の「業況判断DI(好転-悪化)」は▲8.7と前回調査よりも5ポイントマイナス幅を拡大、「売上高DI(好転-悪化)」は11.5と11ポイントプラス幅を拡大したものの、「採算DI(好転-悪化)」は▲15.4と5ポイントマイナス幅を拡大。売上が増加したものの採算が取れない状況が見て取れる。次期は「業況判断DI」は▲1.9と7ポイントマイナス幅を縮小、「売上高DI」は13.7と2ポイントプラス幅を拡大、「採算DI」は▲6.8と9ポイントマイナス幅を縮小。少しずつ改善の兆し。
「仕入単価DI(上昇-低下)」は、前期比で60.6と上昇が継続している。次期は57.3の見通し。「販売単価DI(上昇-低下)」は、前期比で31.7、次期で28.2と、継続的な上昇を示した。
「資金繰りDI(容易-困難)」は前期比で▲2.9とほぼ不変。次期は▲6.8の見通し。「従業員DI(過剰-不足)」は前期比で▲13.5、次期は▲16.5と不足傾向が継続する見通し。
「原材料費、人件費、経費の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は「販売価格の転嫁」が全業種に共通して多く51.9%、次いで「生産性向上」28.8%、「在庫調整」27.9%であった。「従業員確保難」の問題解決にあたって取られた対応策は「待遇の改善(給与等)」25.0%、「企業の魅力強化」20.2%の一方「対応できていない」が25.0%、「問題ない」が26.0%であった。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたって取られた対応策は「既存顧客との関係強化」が37.5%と最も多く、次いで「新商品開発」25.0%、「広告宣伝の強化」22.1%であった。
「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」として、「金融機関」16.3%、「商工会議所」13.5%、「士業(税理士等)」11.5%の一方、「支援を受けていない」は前年調査よりも12ポイント増加し51.0%であった。
2. 業種別の景況等
建設業
仕入単価の上昇が継続し、売上高、業況、採算がともに悪化。対応策が販売価格への転嫁、仕入先の検討から生産性向上、在庫調整といった、利益を上げる仕組みへの変換が図られている。
今期の「業況判断DI」は▲23.5と前回調査よりも9ポイントマイナス幅を拡大、「売上高DI」は▲17.6と3ポイントマイナス幅を拡大、「採算DI」は▲35.3と12ポイントマイナス幅を拡大。次期は、「業況判断DI」は▲11.8、「売上高DI」は▲5.9、「採算DI」は▲5.9と悪化が継続するものの次期には少しずつ沈静化の見通し。
「仕入単価DI」は前期比で76.5と前回調査よりも25ポイントプラス幅を拡大し、次期は58.8と継続して上昇する見通し。「販売単価DI」は前期比で23.5と5ポイントプラス幅を拡大、次期は23.5。
「資金繰りDI」は前期比で▲23.5と前回調査よりも14ポイントマイナス幅が拡大し、次期は▲17.6と困難な状況が継続する見通し。「従業員DI」は前期比で▲5.9と13ポイントマイナス幅を縮小、次期で▲11.8。
「原材料費、人件費、経費の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は、「販売価格の転嫁」が35.3%と前年調査よりも24ポイント減少、「仕入先の検討」が17.6%と28ポイント減少した一方、「生産性の向上」が35.3%と26ポイント増加、「在庫調整」が29.4%と16ポイント増加した。「従業員確保難」の問題解決に当たって取られた対応策は「待遇の改善(給与等)」が17.6%であったものの「対応できていない」が58.8 %と過半数を占めた。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたって取られた対応策は「既存顧客との関係強化」が35.3%と最も多かったが「対応できていない」も41.2%あった。
「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」として「支援を受けていない」は35.3%と前年調査より15ポイント減少する一方、「士業(税理士等)」23.5%、「金融機関」17.6%からの支援が増加した。
その他意見
- 受注の安定のため小規模事業者持続化補助金の活用
- 残業時間の上限撤廃のため業務の効率化等
- 従業員の育成にどうしても時間がとられる
- 市発注工事の週休2日制を導入、材料費・人件費等高騰に対応すべく請負金額上乗せ、工事関係書類の簡素化、廃止をして業務効率化
製造業
売上高が好転に転じたことで、採算が改善しつつある。次期には採算も好転に転じる見通し。
今期の「売上高DI」は11.5と3四半期ぶりに好転に転じた。それに伴い「業況判断DI」は▲15.4と前回調査よりも8ポイントマイナス幅を縮小。「採算DI」は▲15.4と前回調査よりも36ポイントマイナス幅を縮小した。次期は「売上高DI」は34.6、「業況判断DI」は▲7.7。「採算DI」は3.8と好転に転ずる見通し。
「仕入単価DI」は前期比50.0、次期50.0と上昇が継続。「販売単価DI」についても前期比26.9、次期26.9と上昇が継続している。
「資金繰りDI」は前期比3.8とほぼ不変。「従業員DI」は前期比▲7.7、次期▲7.7であった。
「原材料費、人件費、経費の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は「販売価格の転嫁」57.7%、「生産性向上」46.2%であった。「従業員確保難」の問題解決にあたって取られた対応策は「問題ない」が26.9%と前年調査より11ポイント減少する一方、「待遇の改善(給与等)」が30.8%と14ポイント増加した。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたって取られた対応策は「新商品開発」50.0%と前年調査よりも15ポイント増加。「既存顧客との関係強化」は46.2%であった。
「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」としては支援を受けていないが46.2%、「商工会議所」23.1%、「金融機関」「士業(税理士等)」19.2%であった。
その他意見
- 具体的かつ迅速に市場反映される経済対策を示して欲しい
- 需要価格と供給価格の乖離により、価格転嫁しづらい環境が出来上がっている
- 原材料、エネルギーコストに大きく影響する円安を何とかして欲しい
- 仕入先を輸入に頼っており、円安によりキャッシュフローに悪影響を及ぼしている
- 販管費の上昇により、賃上げや設備などに回す内部留保も減少している
- 工作機械の全般的な老朽化対策が必要
卸小売業
仕入単価の上昇が続き、販売価格への転嫁が進むものの、売上高の好転には結びつかず、採算の悪化が継続している。原材料費の増加対策として在庫調整する事業者が増加。
今期の「業況判断DI」は▲22.2と前回調査よりもマイナス幅を6ポイント拡大、「売上高DI」は▲11.1と悪化に転じた。「採算DI」は▲27.8と24ポイントマイナス幅を拡大した。次期は「業況判断DI」が0.0、「売上高DI」は0.0。「採算DI」は▲27.8と困難な状況が継続する。
「仕入単価DI」は前期比で61.1、次期で66.7と上昇傾向が続く見通し。「販売単価DI」は前期比で50.0、次期で44.4と上昇が継続。
「資金繰りDI」は前期比5.6、次期は▲5.6。「従業員DI」は前期比▲16.7、次期は▲16.7の見通し。
「原材料費、人件費、経費の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は「販売価格の転嫁」61.1%、「在庫調整」55.6%であった。「従業員確保難」の問題解決にあたって取られた対応策は「企業の魅力強化」「業務環境の整備(業務効率化)」「待遇の改善(給与等)」「対応できていない」がそれぞれ22.2%。前年調査時50.0%であった「問題ない」は11.1%となった。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたっては「既存顧客との関係強化」27.8%、「販売チャネルの追加・変更」22.2%、「新商品開発」22.2%。「対応できていない」は27.8%、「問題ない」は22.2%であった。
「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」として「支援を受けていない」が44.4%である一方、「金融機関」33.3%、「商工会議所」22.2%からの支援が増加した。
その他意見
- 大手有利な改革より小規模企業を守る制度にしてほしい
飲食業
売上増加のため、半数の事業者が広告宣伝の強化を行い、売上高の好転が継続しているが、仕入単価上昇の影響が大きく、資金繰りの悪化が続く。
今期の「業況判断DI」は12.5、「売上高DI」は56.3と好転したものの、「採算DI」は▲12.5と悪化に転じた。次期は、「業況判断DI」が0.0と不変。「売上高DI」は13.3と今期に引き続き好転するものの、「採算DI」は▲20.0と8ポイントマイナス幅を拡大する見通しとなった。
「仕入単価DI」が前期比で87.5、次期で86.7と上昇が継続、「販売単価DI」は前期比で37.5、次期で33.3の見通し。
「資金繰りDI」は前期比では▲18.8と前回調査よりも14ポイントマイナス幅を拡大した。次期は▲33.3と今期より厳しくなる見通し。「従業員DI」は前期比で▲18.8と8ポイントマイナス幅を拡大した。次期で▲20.0と不足傾向が継続する見通し。
「原材料費、人件費、経費の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は「販売価格の転嫁」62.5%、「仕入先の検討」37.5%、「取扱商品の選定」37.5%、「在庫調整」37.5%、「生産性向上」31.3%と様々な対策をとった事業者が増加した。「従業員確保難」の問題解決にあたって取られた対応策は「待遇の改善(給与等)」が31.3%。「業務環境の整備(業務効率化)」25.0%は前年調査時より15ポイント増加し、「対応できていない」は前年調査時より13ポイント減少し12.5%であった。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたっては「広告宣伝の強化」を50.0%が実施した。「既存顧客との関係強化」は43.8%、「新商品開発」25.0%であった。
「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」は「支援を受けていない」が43.8%であった。
サービス業
業況、売上高、採算のいずれも好転が継続。次期もさらに好転する見通し。
今期の「業況判断DI」は3.7と前回調査より12ポイントプラス幅を縮小した。「売上高DI」は18.5、「採算DI」は3.7と好転が継続。次期は「業況判断DI」が7.4、「売上高DI」が14.8、「採算DI」が3.7と好転が継続する見通し。
「仕入単価DI」は前期比で44.4、次期で40.7と上昇が継続。「販売単価DI」は前期比で25.9、次期は18.5。
「資金繰りDI」は前期比で7.4、次期で11.1と少しずつ好転の見通し。「従業員DI」は前期比で▲18.5と前回調査よりも14ポイントマイナス幅を縮小するも不足、次期は▲25.9と不足する状況が継続する見通し。
「原材料費、人件費、経費の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は「販売価格の転嫁」44.4%、「生産性の向上」22.2%であった。「従業員確保難」の問題解決にあたって取られた対応策は「待遇の改善(給与等)」22.2%、「企業の魅力強化」22.2%、「問題ない」40.7%であった。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたっては「広告宣伝の強化」37.0%、「既存顧客との関係強化」33.3%、「問題ない」29.6%であった。
「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」は「支援を受けていない」が74.1%であった。
その他意見
- 優秀な人材の採用
- 事業の選択と集中を強め、付加価値の高い事業の単価を上げ、それによって得た利益を従業員給与に還元した
- 売上の減少により事業の継続が難しくなりつつある
- 補助金でなく産業の構造のあり方・教育も含めてなんとかしてほしい
- 企業誘致、大学誘致、彦根城世界遺産登録、空き家、空き地対策、道路整備など彦根市が率先してより良い街づくりを行い、街の魅力を内外に発信していくことが大事