天正18年(1590年)に井伊直政が上野国の箕輪城主に就いた頃に織田信雄の家臣に宛てた手紙の原本が発見され、25・26日に彦根市本町2丁目の夢京橋あかり館で限定公開される。この手紙の内容は文献等で知られていたが、これまでに原本は確認されていなかった。
天正18年7月5日、豊臣秀吉政権の出兵によって小田原城が落城すると、徳川家康は北条氏の旧領だった関東へ国替えとなり、8月1日に江戸城へ入った。家康の家臣だった直政には上野国箕輪12万石が与えられた。
発見された手紙は天正18年8月4日付けで、直政が織田信長の息子・信雄の重臣だった岡田利世(新八郎)に宛てたもの。北条氏に属し、小田原城落城後に徳川方に投降した小幡信定の処遇をたずねた岡田の手紙への返事で、「小幡氏の旧領の小幡(現・群馬県甘楽町)には新領主として奥平九八郎が入る予定だ」と伝えた内容。
直政は天正10年に起こった武田家の旧領を巡る北条氏との戦い「天正壬午の乱」後、侍大将に登用。家康の養女を正室に迎えて家康の「婿」という関係を結び、重臣として活躍し始めた。特に天正14年に家康が豊臣政権下に入ると、政権内では徳川一門と同様の扱いを受け、諸大名との交渉役を担った。元彦根城博物館学芸員の野田浩子さんは「今回の発見された手紙は、直政が他大名の重臣と交流して人脈を築いており、頼られる存在だった実例を示しているものと言える」と評価する。
発見された手紙は三重県の収集家が古書市場で手に入れ、古文書目録でその内容を確認。依頼を受けた専門家が分析・検証を行った結果、直政の署名の花押をはじめ、筆跡や紙、内容から本物と判断された。
25・26日講演会も
夢京橋あかり館は、彦根市が2025年に宿泊施設として改装する方針を示しているため、今月末で閉館となる。フィナーレイベントとして、新発見の「井伊直政書状」を公開する。
公開日時は25日午前10時から午後5時までと26日午前9時半から午後4時半まで。25日午後1時半から佐和山城研究会の田附清子さんの講演「石田三成目線の井伊直政」と午後3時から箕輪城語り部の会の吉田知絵美さんの講演「井伊直政と箕輪城」、26日午後1時半から野田さんの講演「井伊直政 出世の謎に迫る」がある。講演は定員40人。お申し込みはこちらのフォームから。入場無料。