Benjamin McCracken (ベンジャミン・マクラケン)

1977年生まれ。Northern Michigan University卒業(2000)、University of Detroit Mercy School of Law卒業(2005)、、Michigan Supreme Court (ミシガン州最高裁判所)(2005〜2006)、Jaffe Raitt Heuer & Weiss PC法律事務所 (2006〜2011)、ミシガン州立大学連合日本センター所長(2012〜)、国立大学法人滋賀大学経済学部特任教授(2022〜)。趣味はトライアスロン。

彦根の宝

私が初めて彦根城を見たのは、ノーザンミシガン大学で政治学を学んでいた大学2年生のとき、留学案内のパンフレットでした。私の大学は、故郷のミシガン州でも最も北部に位置しており極寒の冬の生活には厳しさを覚えました。そんな中彦根城の写真を見て、そこに行けたらどんなに素晴らしいだろう、と思ったのを覚えています。 約8か月後、日本語と日本文化を学ぶために彦根にあるミシガン州立大学連合日本センターへと留学が決まり私の願いは叶いました。

彦根城を見て最初に思ったのは、どんな写真でもその真の美しさを捉えることはできないということでした。つまり、この城が日本、特に彦根の人々の歴史、伝統、文化にとってどれほど重要であるかを一瞬にして表せるものはないということです。
アメリカで育った私は、太平洋戦争が始まる前の日本の歴史についてほとんど知りませんでした。 私はペリー提督、黒船、そして徳川幕府についてはアメリカで学びましたが、残念ながら、私が井伊家と井伊直弼の歴史について知ったのは、彦根城とその周囲の庭園を初めて見学したときでした。 私にとって、彦根城は日本の過去の当時の人々のイメージを膨らませてくれ、歴史の象徴として胸に刻まれています。また日本の将来を形づくる決定的な場所であると言えるでしょう。そんな印象を持った彦根城との運命がここへ私を導いたのか、2012年に母校であるミシガン州立大学連合日本センターの所長となりました。それ以後、幸運なことに彦根城をたびたび訪れることとなりました。

私はおそらく30回近く彦根城を訪れていますが、そのたびに新しい発見や、これまで知らなかった新しい事実を学んでいます。 留学生を彦根城に連れて行き、私が学んだことを共有できることは、教育者としての私の大きな喜びの一つです。 生徒のほとんどが彦根とその歴史に大きな関心を抱くようになったのは私にとって驚くべきことではありません。 生徒たちは、当時の私のように城の周囲で「まち」がどのように成長し、発展していったのかを意欲的に学んでいます。
最後に、もう一つ大きく学んだことがあります。彦根城は彦根のシンボルですが、私にとって彦根を本当に形作っているのはここに住む人々だということです。地域の人々は自分たちの城とその歴史を守り伝え続けることに尽力しているからです。私には今、幼い子どもが2人います。 彼らが彦根城についての理解を深めていくのを見るのは素晴らしいことです。 先日、私自身OBでもある公益社団法人彦根青年会議所主催の彦根城写生大会に家族で参加しました。私は自分の子どもが彦根城について感じたことを私に話してくれており感慨深く次の世代へ素晴らしさを伝えることができているなと感じることができました。この世代間のつながりこそが本当の国宝だと思っています。