彦根商工会議所では、会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施しております。このほど第12四半期(令和6年1〜3月期)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員200社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。


調査方法:彦根商工会議所会員企業200社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和6年1月~3月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:81社(回答率40.5%)

建設業製造業卸小売業飲食業サービス業合計
回答数161716102281
業種別比率19.7%21.0%19.7%12.4%27.2%100.0%

※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和5年10月~12月と比較した令和6年1月~3月の状況
※昨年比:令和5年1月~3月と比較した令和6年1月~3月の状況
※次期:令和6年1月~3月と比較した令和6年4月~6月の見通し

総括的概要

  • 前期(10−12月期)から一転して今期は全業種とも悪化に転じた。飲食業は次期には回復する見通しも、他の業種は厳しい状況が続く。
  • 仕入単価は不変と回答した事業者が上昇と回答した事業者を上回り、沈静化の兆し。
  • インボイス事業者登録は86.4%の事業者が登録済み。そのすべての事業者が業務の負担増等何らかの課題が生じていると回答があった。

1. 全体の景況等

今期の「業況判断DI(好転-悪化)」は▲29.6、「売上高DI(好転-悪化)」は▲23.5、「採算DI(好転-悪化)」は▲23.5と、大きく悪化に転じた。次期は「業況判断DI」は▲16.0 、「売上高DI」は▲9.9 、「採算DI」は▲8.6とマイナス幅は縮小するものの悪化が継続する見通し。
「仕入単価DI(上昇-低下)」は、前期比で45.7と前回調査よりも6ポイント上昇幅が縮小し、不変が上昇を上回った。次期は44.4の見通し。「販売単価DI(上昇-低下)」は、前期比で18.5と5ポイント上昇幅が縮小。次期で19.8の見通し。
「資金繰りDI(容易-困難)」は前期比で▲12.3、次期は▲8.6の見通し。「従業員DI(過剰-不足)」は前期比で▲8.6、次期は▲12.3と不足傾向が継続する見通し。

2. 業種別の景況等

建設業

業況判断、売上高、採算は不変と悪化がほぼ同数の回答。次期は悪化が減少する見通し。仕入単価は前期に引き続き不変が上昇を上回り、沈静化の兆し。
今期の「業況判断DI」は▲31.3と前回調査よりも1ポイントマイナス幅を拡大も、「売上高DI」は▲18.8と16ポイントマイナス幅を縮小、「採算DI」は▲18.8と20ポイントマイナス幅を縮小し改善の兆し。次期は、「業況判断DI」は▲31.3、「売上高DI」は▲18.8、「採算DI」は▲25.0。
「仕入単価DI」は前期比で37.5と前回調査に引き続き不変が上昇を下回った。次期は31.3とさらにプラス幅を縮小する見通し。「販売単価DI」は前期比で18.8と15ポイントプラス幅を拡大、次期は25.0と上昇傾向にある。
「資金繰りDI」は前期比で▲12.5と前回調査よりも5ポイントマイナス幅を縮小し、次期は▲18.8。「従業員DI」は前期比で▲6.3と20ポイントマイナス幅を縮小。次期は▲12.5。

製造業

業況判断、売上高、採算は好転もあるが悪化が増加。次期も継続する見通し。仕入単価は前期に引き続き不変が上昇を上回り、沈静化の兆し。
今期の「業況判断DI」は▲47.1、「売上高DI」は▲17.6、「採算DI」は▲35.3といずれも前回調査よりも大きく悪化した。次期は「業況判断DI」は▲35.3、「売上高DI」は▲35.3、「採算DI」は▲35.3と悪化が継続する見通し。
「仕入単価DI」は前期比41.2と5ポイントプラス幅を縮小。次期は41.2。「販売単価DI」は前期比11.8、次期5.9。
「資金繰りDI」は前期比0.0、次期0.0と不変。「従業員DI」は前期比0.0、次期▲5.9であった。

卸小売業

業況判断、売上高、採算はいずれも大きく悪化したが、次期には業況判断もマイナス幅を縮小し売上高、採算は好転の見通し。仕入単価は不変が上昇を上回り、沈静化の兆し。
今期の「業況判断DI」は▲50.0、「売上高DI」は▲50.0、「採算DI」は▲37.5といずれも大きく悪化に転じた。次期は「業況判断DI」が▲6.3、「売上高DI」は0.0。「採算DI」は18.8とマイナス幅が縮小する見通し。
「仕入単価DI」は前期比で43.8と12ポイントプラス幅を縮小。次期は37.5とさらに沈静化の見通し。「販売単価DI」は前期比で18.8、次期で25.0と上昇が継続。
「資金繰りDI」は前期比▲12.5、次期は▲6.3。「従業員DI」は前期比0.0、次期は6.3の見通し。

飲食業

業況判断、売上高、採算について悪化の回答が増えたものの、約6割が好転又は不変と回答。次期には好転の見通し。
今期の「業況判断DI」は▲20.0、「売上高DI」は▲10.0、「採算DI」は▲30.0と、前回調査の好転から悪化に転じた。しかし次期は、「業況判断DI」が20.0、「売上高DI」は30.0、「採算DI」は0.0と再び大きく好転する見通し。
「仕入単価DI」が前期比で80.0、次期で80.0と上昇が継続、「販売単価DI」は前期比で30.0、次期で50.0の見通し。
「資金繰りDI」は前期比では▲10.0と前回調査よりもマイナス幅を15ポイント縮小。次期は0.0と不変の見通し。「従業員DI」は前期比で▲10.0と5ポイントマイナス幅を縮小した。次期で▲30.0とさらに不足傾向が拡大する見通し。

サービス業

業況判断、売上高、採算について悪化の回答が増えたものの、約7割が好転又は不変と回答。次期も同様の状況が継続する見通し。
今期の「業況判断DI」は▲4.5、「売上高DI」は▲18.2、「採算DI」は▲4.5と2022年1~3月期依頼2年ぶりに悪化に転じた。次期は「業況判断DI」が▲13.6、「売上高DI」が▲9.1、「採算DI」が0.0と悪化が継続する見通しとなった。
「仕入単価DI」は前期比で40.9、次期で45.5と上昇が継続。「販売単価DI」は前期比で18.2、次期は9.1。
「資金繰りDI」は前期比で▲22.7と大きく悪化した。次期は▲13.6。「従業員DI」は前期比で▲22.7と前回調査よりも13ポイントマイナス幅を拡大、次期は▲22.7と不足傾向が継続する見通し。

3. インボイス制度について

インボイス事業者登録は86.4%の事業者が登録済み。建設業、製造業、卸小売業はほぼ100%が登録済み、飲食業、サービス業は約70%が登録済みであった。
登録していない理由は、90.9%が取引先からの要請が無く必要ないと回答。72.7%が今後も登録の予定はないと回答があった。
登録をしていない事業者との取引について、58.6%がこれまで通り取引を続けるとの回答であったが、32.9%が登録するように提案していく、20.0%が取引価格の変更を検討するとの回答であった。
インボイス制度開始に伴い生じている課題については、64.3%が業務負担増と回答。また、32.9%仕入先への対応、24.3%システム導入等の対応、24.3%販売先への対応、24.3%社内周知・理解不足、22.9%経費の増加、21.4%税負担増と、様々な課題が生じていることがうかがえる。

その他の意見としては、以下の記載があった。

  • 原材料高騰による商品値上げに伴い消費者の購買意欲が低下しており商品の動きは悪い。為替も円安傾向で、採算面は悪化しているにも関わらず、インボイス制度にて、業務量、経費の負担増になっている。
  • 振込手数料の支払い者負担を明確にして欲しい。取引先が強いと負担されず、下請けには支払わなければいけないのでは、中間者が両方とも負担することになる。
  • 事務等に手間取って効率、能率が低下し、振込手数料等の負担等経費も増加している。
  • 業務負担が増加し、人員の確保を行うなど、増税+運用コスト増により収益性の低下を招いている。
  • 中小企業庁から労務費負担を取引先に求めるようガイドラインの交付があったが、値上げには応じるが、値上げによる販売数の低下により収益の改善には至らない状況。
  • インボイス未登録事業者から、消費税分を減額した提案を受けるようになってきた。受注が困難になっているための苦肉の策ではないかと感じる。良い制度ではないように思う。