どこにも負けない自慢の麩
昭和7年、敏雄さんの祖父が台湾で日本人向けに麩を売り始めたのが澤田製麩所のルーツである。終戦後、出身地である滋賀へ戻り、彦根(現在の安清町)で再開したのが同社の前身となった。そして3人兄弟の真ん中だった敏雄さんは、子どもの頃から慣れ親しんだこの仕事を父から、3代目として引き継いだ。
丁字麩をメインに製造し、大手量販店などを中心に販売している。麩はグルテン(小麦でんぷん)と小麦粉を水で練ったあと寝かし、焼き上げる。手間も時間もかかるが、今も昔も変わらず全て手仕事で作られている。
麩は気温や湿度など、その日の状況によって焼き上がりが異なるデリケートな食品である。コンディションに合わせて毎日、原材料の配合を調整しなくてはならない。工場内でも敏雄さんと優作(息子)さんのみが焼き上げまでを担うことができるという。
材料や工程などにこだわって作られた麩は、見た目や味など品質はトップクラス。長年の経験が成せるわざである。
良い麩とは
敏雄さんの思う良い麩とは、味が良く、見た目が美しいこと。この2つを叶えるには、丁字麩の特徴である四角を表現するためにしっかり膨らませて焼くことである。原材料をケチらないことを先代から引き継いでいるので、特に気を使い吟味している。それが故、美味しい綺麗な四角い丁字麩が出来上がる。
製造工程で出てくる屑や切れ端などは、栄養価が高いので彦根城お堀の白鳥の餌として長年に渡って無償提供を続けている。なんとフードロスは、ゼロだそうだ。
必要とされる商売を
深夜2時に起床し、工場へ向かう。冬は温かい鍋料理が人気で、休みなく焼き続ける時期もあり、「毎日辛いですよ」と苦笑しながら、「あと7年で創業100年となります」と控えめに話される敏雄さん。
やはり、世間に必要とされていなければ商売はできない。継続していくことは、簡単そうにみえて難しい。大それたことは考えられないが、息子さんにもお客様に必要とされるような商品作りを継続して欲しい、と後継者への期待も伺うことができた。
奇しくも2月2日は、「麩の日」として記念日登録されている。一度ご賞味あれ。
澤田さんの奥様考案!テレビで紹介された麩のアレンジレシピ
まずは定番!丁字麩のからし和え(4人前)
丁字麩12個・きゅうり1本
《からし酢みそ》白みそ60g、白ごま(又はねりごま)大さじ4、酢大さじ5、砂糖大さじ8、ねりがらし大さじ1.5(お好みで調整)
- 丁字麩は2~3等分し、水に浸して充分もどし固く絞る。
- きゅうりは薄い小口切りにし、塩をしてしんなりしたら水気を絞る。
- 白ごまは香ばしく炒り、すり鉢で油が出るまでよくすって、砂糖・みそ・からしを加えてすり混ぜ、さらに酢を入れよく混ぜる。
- 丁字麩ときゅうりを3のからし酢みそで和える。
※冷蔵庫で30分以上寝かせると、味がなじんで美味しくなります。
※からし和えは郷土料理のため考案レシピではありません。
和風麻婆麩 ゆずこしょう風味(4人前)
丁字麩12個、白ネギ1/2本、しょうが1かけ、豚ミンチ150g、干ししいたけ2枚、さやいんげん50g
A [出汁+干し椎茸の戻し汁 500cc、酒大さじ1、醤油大さじ3、みりん大さじ1]
柚子胡椒小さじ1、片栗粉大さじ2
- 丁字麩を3等分に切り水に浸して戻す。干ししいたけも戻しておく。
- 干ししいたけ、ネギを細かく切る。
- しょうがはみじん切り、いんげん(絹さやや青ネギで代用可)は適当な長さに切る。
- フライパンに油を熱し、白ネギとしょうがを炒め香りが出たら、豚ミンチをバラバラになるまで炒める。
- 干ししいたけ、いんげん、Aを入れ煮立ったら、固くしぼった麩を加え少し煮る。
- 煮汁で溶いた柚子胡椒を混ぜ、水溶き片栗粉ですばやくとろみをつけて出来上がり。
丁字麩のキャラメリゼ(4人前)
丁字麩12個、砂糖100g、牛乳大さじ2、無塩バター20g、塩少々
- 丁字麩を3等分に切る。
- 丁字麩以外の材料を、フライパンに入れ、ゆすりながら弱~中火でゆっくり加熱する。
- しばらくして、大きな泡がふつふつ出てほんのり色づき始めたら、麩を入れ手早く全体に絡める。
- クッキングシートに1つずつ離して広げ、冷めたら完成。