昭和27年(1952)の創業以来、彦根で70年以上の歴史を持つ漬物製造メーカー「ヤマヨ」の3代目として、2025年9月に事業を承継した林晋太郎社長。異業種から転身した経歴と、伝統を守りつつも現代に合わせて舵を切るその「気概」。ヤマヨは新たな時代を迎えようとしている。

異業種MRから転身

林晋太郎社長は現在39歳 。家業を継ぐ前は、製薬会社でMR(医薬情報担当者)として7年間、営業の最前線に立っていた 。29歳のときに帰郷、ヤマヨに入社した。「業界未経験からのスタートでしたが、前職で培った営業力を武器に、取引先との信頼を築いてきました」と話す。
現在は、原料の仕入や産地との調整を担う洋一会長(2代目)と役割を分担 。林社長は現場の段取りから販売、味の微調整、開発までを幅広く統括する「現場主義」の経営スタイルを貫いている。

「選択と集中」時代に合わせた大胆な改革

社長就任時、林社長が従業員に伝えたのは「毎日楽しく働けることが最優先」という理念である。書面にして全員に周知し、売上よりも働く人の幸せを第一に考える姿勢を明確にした。時短制度の確立や子の看護休暇を法定以上に拡充するなど、子育て世代が働きやすい環境づくりにも注力し、30代・40代の人材確保に成功している。
経営面では大胆な商品改革を断行した。2018年に60種類以上あった商品を、現在は35種類程度に絞り込んだ。「お土産商品」ではなく「日常使い」へのシフトや、一本物の漬物を刻み商品に変更するなど、「開けたらすぐ食べられる」形態への転換を図った。
妻と共に考案した新スローガン「大切な人に、毎日食べられる彩をちょっと。」には、メインではないけれど食卓に欠かせない存在でありたいという想いが込められている。

食卓を彩る一品一品には、手間を惜しまない誠実さが凝縮されている。

地域と共に歩む未来へ

「安定した味を作ることの難しさ」を語る林社長。季節や産地によって変わる野菜の状態に合わせ、レシピを微調整し続ける。冬の白菜と春の白菜を混ぜ合わせることで通年美味しい商品を提供する工夫は、先代から受け継いだ知恵である。
今後はDX化や機械導入により少数精鋭体制を目指す一方、地域貢献にも力を入れる。
母校である鳥居本小学校の工場見学受け入れや、彦根東高校生との伝統野菜「大藪カブラ」の商品化プロジェクトなど、若い世代と漬物文化を繋ぐ取り組みを始めている。
「漬物組合との協業も視野に入れ、得意分野を活かし合いながら成長していきたい」と語る林社長。伝統を守りながらも時代に応じた変化を恐れず、地域に根ざした漬物づくり……。「漬」という字は「サンズイ(水)と責任」でできている 。先代から受け継いだ「真面目と努力」を基盤に、新しい感性を吹き込みながら、ヤマヨはこれからも彦根の食卓に「彩をちょっと」添え続ける。