彦根商工会議所では、会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施しております。このほど第20四半期(令和8年1〜3月期)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。
調査方法:彦根商工会議所会員企業130社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和8年1月~3月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 岡本 香 氏
回答企業数:85社(回答率65.4%)
| 建設業 | 製造業 | 卸小売業 | 飲食業 | サービス業 | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 回答数 | 14 | 20 | 16 | 13 | 22 | 85 |
| 業種別比率 | 16.5% | 23.5% | 18.8% | 15.3% | 25.9% | 100.0% |
※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和7年10月~12月と比較した令和8年1月~3月の状況
※昨年比:令和7年1月~3月と比較した令和8年1月~3月の状況
※次期:令和8年1月~3月と比較した令和8年4月~6月の見通し
1. 全体の景況等
(1)「業況判断DI(上昇-低下)」
- 今期(R8年1月~3月)
ほとんどの事業者が悪化のなか、卸小売業が前期の底を脱出しています。建設業が期末時期にも関わらず、悪化していることが目立ちます。飲食業については前期時点で悪化が懸念されていましたが横ばいに留まりました。 - 次期(R8年4月~6月)
期初要因もある建設業を除けば、各業種共次期は好転の見通しです。特にサービス業、飲食業といったBtoCの事業者に次期への期待感がうかがえます。
(2)「売上高DI(上昇-低下)」
- 今期(R8年1月~3月)
全業種悪化しています。なかでも建設業は期末時期にも関わらず、大きな落ち込みとなっています。 - 次期(R8年4月~6月)
製造業は4期を通じて変動幅が少ないのですが、それ以外は次期に対しての期待感がうかがえます。
(3)「採算DI(上昇-低下)」
- 今期(R8年1月~3月)
卸小売業を除き、全業種悪化しています。前期、多くの業種で価格転嫁が進んできていると思われましたが、それが持続していない可能性も感じられます。 - 次期(R8年4月~6月)
卸小売業が横ばいであることを除き、全業種好転への期待感がみえます。
(4)販売単価DI
- 今期(R8年1月~3月)
多くの業種が横ばいのなか、製造業の好転が目立ちます。また卸小売業は漸減していますが、次期好転して戻ることが期待されます。 - 次期(R8年4月~6月)
サービス業を除き、好転の見通しです。サービス業は人件費依存度が高く、価格転嫁が実現可能かが懸念されます。
(5)仕入単価DI
- 今期(R8年1月~3月)
概ね横ばいの実感です。 - 次期(R8年4月~6月)
次期も概ね横ばいの見通しですが、緊迫する中東情勢の影響による石油関連商品、運送費の高騰が実際にはどの程度影響してくるか懸念されます。
(6)資金繰りDI
今期(R8年1月~3月)、次期(R8年4月~6月)を通じ大きな変化はみられませんが、足元では融資利率は緩やかな上昇傾向にある見通しです。原油高に起因する物価上昇が継続すれば、さらなる金利上昇の可能性もあり得るため、今後は公的融資制度の動向を含め、資金調達環境の変化を注視していく必要があります。
(7)従業員DI
従業員DIは今期・次期ともに大きな動きは見られません。しかし、人手不足、人材不足、後継者不足問題は解決されてはおらず、さらに深刻になりつつあります。原油値上がりに伴う、物価高の陰に隠れているようですが、引続き注視が必要です。
2. 業種別の景況等
建設業
今期は期待されていたほどの伸びは見られませんでした。次期も引き続き厳しい状況が懸念されます。
製造業
今期は前期比採算面の悪化が目立ちますが、次期は好転が期待されています。
卸小売業
今期は売上採算項目が悪化しましたが、販売・仕入・資金繰り、従業員共次期には大きな変動は予想されておらず、次期には好転の見込です。
飲食業
業況・売上、次期見込は好転が予想されます。そのほかの項目は横ばいの見込です。
サービス業
次期へ向けて、販売単価、仕入単価、従業員共横ばいですが、業況・売上高・採算は今期低下をカバーする見込です。
総括的概要
R8年1-3月期について
R7年10-12月期調査において、R8年1-3月期は卸小売業を除けば悪化の見通しでした。今期調査においては前期時点の見通し通りとなっています。
R8年4-6月期について
建設業を除けば全業種共、好転の見込みとなっています。ただし、本調査時点では、令和8年2月28日に端を発した、米国・イスラエルとイランとの紛争の影響が現れておらず、今後、ホルムズ海峡閉鎖等に伴う、原油及び石油化学製品の高騰が、日本の産業すべてに波及していくことが懸念されます。
令和8年1月1日より、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称:中小受託取引適正化法、通称:取適法)」が施行されたことについて
令和8年1月より、従来の「下請代金支払遅延防止法」が改正・改称され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(以下「取適法」)」が施行されました。これに伴い、フリーランスや小規模事業者との取引ルールがより厳格化されました。
本調査の回答結果からも、法改正に対する会員企業の関心の高さが伺えます。会員企業には下請側(受注側)として活動する事業者が多いと推察されますが、発注側に対して「書面による条件明示」や「適正な報酬支払期日の設定」が強く求められるようになっています。このことは発注者の一方的な価格決定を禁止することを意味し、多くの会員事業者の立場を護る機能が明確化されています。
しかし、今回調査に回答頂いた事業者の多くを占める「受注側」については、未だ法改正の趣旨が充分に浸透しているとは言えない状況にあると判断されます。
緊迫する中東情勢の影響により、原油及び石油化学製品全般の価格が高騰、すべての物価上昇に波及し、4月中旬現在、未だ方向性の見えない状況が続いています。
前期の本報告にて大きな課題となっていた「経費上昇分の価格転嫁」に加え、最近の物価上昇への対応がより大きな課題となっています。
今回の法改正が、適正なコスト転嫁と収益確保に向けた「パートナーシップ構築」の意識を改めて醸成する契機となり、受注者がこの認識をより深めることが、地域経済の持続可能性を高める鍵になると考えられます。