今回の不易流行Webでは、2019年度(2016年度より開始)に一般社団法人近江ツーリズムボードにより実施された「彦根市観光客満足度調査」の速報の前編を公開。前編では、他地域の観光都市との比較や日本人観光客の特徴を分析。彦根市内観光エリア4箇所に調査ポイントを設定し、彦根市を訪れた日本人観光客にランダムでアンケート調査を実施した結果、869枚(内外国人73枚)のサンプルを得ることができた。また、2017年から彦根市で初めてとなる外国人観光客を対象とした満足度調査も引き続き実施し、経年比較が可能となった。本調査は2009年度に観光庁により全国50地域を対象に実施された「観光地の魅力向上にけた評価手法調査事業報告書」で実施されたアンケート票を使用し、アウトプットを揃えることで彦根市以外の50都市とレベル感を比較することが可能となっている。観光入込客数や宿泊客数、外国人観光客数など彦根市が見習うべき観光先進都市と比較することで彦根市の課題を推察できる他、客観的に見た彦根市の打ち出すべき魅力を知ることも期待できる。観光庁の調査では最も多い地域のサンプル数で631であることから、今回の彦根市調査では更に精度の高いサンプル数が集まったと言える。
今回は新型コロナウイルスの影響を最も受け、厳しい情勢を必死に耐え忍んでいる観光業の皆様の再起に向けた仕込みの一助とすべく、調査結果を元に各項目について考察し、彦根市観光の方向性について検証した。
12の中小都市との観光満足度の比較
観光庁調査の対象地域分類に基づくと、彦根市は中小都市に位置付けられる。この中には、川越、飛騨高山、長浜、松江市など彦根市と同様に文化歴史資源を観光に活かしている都市も含まれている。 彦根市及び12の中小都市の観光満足度調査結果は表1のとおりである。3指標とも昨年度より向上した。13都市での順位を見ると、彦根市は、総合満足度は5位、紹介意向4位、再来訪意向1位となり、いずれも11都市の平均を上回り、日本を代表する中小都市であるといえる。但し、今年度の調査日の1日がキャラ博だったことにも留意する必要がある。
サービス品質で見ると、中小都市平均より明らかに上位にあるのは、「街並み景観」、「観光・文化施設の内容」、「観光・文化施設の従業員のおもてなし」である。一方、明らかに低位にあるのは、「宿泊施設の部屋の質」、「宿泊施設の授業員のおもてなし」、「費用対効果」である。
都市 | 総合満足度 | 紹介意向 | 再来訪意向 | |
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彦根市 | 2019年度 | 5.78 ⑤ | 5.87 ④ | 5.85 ① |
2018年度 | 5.71 ⑨ | 5.78 ⑪ | 5.06 ⑪ | |
2017年度 | 5.78 ⑦ | 5.89 ④ | 5.12 ⑪ | |
2016年度 | 5.73 ⑨ | 5.82 ⑩ | 5.11 ⑪ | |
小樽市 | 5.86 | 5.93 ② | 5.36 | |
八戸市 | 5.69 | 5.72 | 5.35 | |
川越市 | 5.64 | 5.86 | 5.49 | |
佐原市 | 5.71 | 5.80 | 5.28 | |
穴水市 | 5.94 ② | 5.85 | 5.64 ② | |
村上市 | 5.80 | 5.83 | 5.62 ③ | |
飛騨高山市 | 6.06 ① | 6.09 ① | 5.21 | |
長浜市 | 5.75 | 5.84 | 5.31 | |
舞鶴市 | 5.34 | 5.35 | 5.01 | |
松江市 | 5.88 ③ | 5.86 | 4.97 | |
佐世保市 | 5.81 | 5.86 | 5.41 | |
唐津市 | 5.77 | 5.90 ③ | 5.41 | |
中小都市平均 | 5.75 | 5.81 | 5.30 | |
全国地域平均 | 5.88 | 5.94 | 5.44 |
日本人観光客の特徴
日本人観光客の特徴としては、滋賀県、愛知県、岐阜県、京都府、大阪府など概ね2時間圏の近県からの観光客が約5割を占めている。
3回以上のリピーターが約45%と、近県から四季のイベントを楽しみに繰り返し訪れる観光地となっている。一方、約40%が初訪問者であることにも留意する必要がある。彦根城、彦根城博物館、玄宮園を代表とする歴史文化資源が彦根の最大の観光資源であるが、季節のイベントやひこにゃん、食事とを合わせて来訪される方が多く、20代から70代まで、家族連れからカップル、団体客まで幅広い客層を集めている。
今年度の彦根の総合満足度は5.78と昨年から0.07ポイント向上した。観光庁調査(平成21年度実施)の12の中小都市平均は5.75であり、それを上回る結果となった。昨年と比較するとほとんどの世代で軒並み満足度が上がった。
紹介意向は5.87(中小都市平均5.81)、再来訪意向は5.85(5.30)で、昨年度と比較して紹介意向は0.09ポイント、再来訪意向は0.79ポイント向上し、彦根を含めた13都市中、紹介意向は4位、再来訪意向は1位となった。今年度の調査日にはご当地キャラ博も含まれており、彦根好きな方が多かった点も否めないが、これまでの取組の成果が出ている。
彦根の満足度を最も満足度が高かった飛騨高山と比べると、「大変満足」や「ぜひ紹介したい」、「ぜひ再来訪したい」という割合が低い。近年の観光客が求めるのは、そこでしか得られない、その時にしか得られない「本物の感動」であり、彦根にはまだそのコンテンツが不足しているのではないだろうか。
サービス品質に関しても、多くの項目で評価が上がった。食事の内容、飲食店 店員のおもてなし、土産物・商品の内容の評価が大きく上がり、美食都市の効果も少しずつ出てきていると考えられる。
次号では、外国人観光客の特徴と想定される対策、まとめを掲載する。