(株)滋賀銀行のシンクタンクである(株)しがぎん経済文化センタ-では、四半期ごとに「滋賀県内企業動向調査」を実施している。今回「2020年第3四半期(7-9月期)」の調査では、903社を対象に367社から回答を得た。このうち、湖東地域(彦根市・愛荘町・豊郷町・甲良町・多賀町)からの回答は44社だった。

【分析方法】DI(ディフュージョン・インデックス)

  • 質問の「プラスの選択肢(良い・増加・上昇)の 回答割合」から「マイナスの選択肢(悪い・減少・不足)の回答割合」を引いた指数。
  • 各項目の水準や方向性を示す。

湖東地域はマイナス幅がさらに拡大

今回の調査期間(2020年7-9月期)での湖東地域の自社の業況判断DIは-57で、前回(4-6月期)の-46から11ポイント低下し、-50以下という極めて低い水準となった。県全体(-55→-54)は横ばいだったものの、湖東地域はマイナス幅が拡大した。地域別にみると、東近江地域(-53→-45)、南部地域(-57→-49)ではマイナス幅が縮小、大津地域(-66→-66)では横ばいとなったが、甲賀地域(-31→-51)、湖北地域(-68→-70)ではマイナス幅が拡大した(図表1)。湖東地域の業況判断の個別コメントをみると、非製造業の一部で「新型コロナウイルスによる“巣ごもり消費”により、売上高が約5%増加」などの好調な意見がみられたが、依然多くの企業で「新型コロナウイルスの影響による売上減少」などの厳しい意見がみられた。湖東地域の3カ月後(20年10-12月期)は、8ポイント低下の-65となる見通しを示した。東近江地域を除くすべての地域でマイナス幅がさらに拡大する見通しである(図表2)。

湖東地域の非製造業は県全体を下回る

県全体の業況判断DIを業種別にみると、製造業は、前回の-59から10ポイント低下の-69となり、マイナス幅はさらに拡大し、大幅なマイナス水準となっている。一般機械(-47→-15)はマイナス幅が縮小したが、化学(-40→-83)、その他の製造業(-47→-71)などはマイナス幅が拡大した。非製造業は、前回の-52から10ポイント上昇の-42となり、マイナス幅は縮小した。不動産(-38→-6)や小売(-65→-50)、卸売(-54→-41)などはマイナス幅が縮小。引き続き新型コロナウイルスの感染拡大が企業経営に影響を及ぼしており、景況感はすべての業種で、2四半期連続のマイナス水準となっている(図表3、8)。湖東地域の業況判断DIを業種別にみると、製造業は-67で前回の-64から3ポイント上昇し、県全体(-69)よりも2ポイント高くなった。一方、非製造業は-50で前回の-39から11ポイント低下し、県全体(-42)よりも8ポイント低くなった(図表4)。

売上DIと経常利益DIはマイナス幅が大幅に拡大

湖東地域のその他のDI項目をみると、「売上DI」は-57と前回(-39)から18ポイント低下し、マイナス幅が大幅に拡大した。「経常利益DI」(-32→-60)もマイナス幅が大幅に拡大し、より一層厳しい状況となっている。「販売価格DI」(-5→-7)は2ポイント低下したのに対し、「仕入価格DI」(+11→+17)は6ポイント上昇したため、収益環境は一層厳しくなっている。「製・商品の在庫DI」(0→+2)は2ポイント上昇、「生産・営業用設備DI」(+8→+5)は3ポイント低下した。「雇用人員DI」は+7で前回(-3)から10ポイント上昇し、過剰感がでてきた(図表4)。

新型コロナで企業活動への「マイナス影響出ている」は7割超に上昇

特別項目として、前回(4-6月期)に引き続き新型コロナウイルス感染症による影響を調査した。
企業活動への影響について、湖東地域は「マイナスの影響が出ている」が72.7%となり、前回の55.3%から17.4ポイント上昇した。「今後、マイナスの影響が出る可能性がある」(18.2%)を合わせると90.9%がマイナスの影響を実感ないし予想しているものの、全体平均(93.4%)より若干低くなった(図表5)。現在発生しているマイナス影響の内容(複数回答)をみると、湖東地域では「売上(来店客、顧客・取引先、受注等)が減少」(96.8%)が突出して高く、前回の68.8%から+28.0ポイントと大幅増加した。全体平均も93.7%と、ほぼすべての企業・事業所で売上が減少している。湖東地域は、次いで「出張や商談の延期・中止」(45.2%)、「営業(稼働)日数の減少」(41.9%)が続いた。「資金繰りの悪化」(35.5%)は全体平均(20.9%)を14.6ポイント上回っており、7地域中で最も高かった(図表6)。ウィズコロナ、アフターコロナを見据えてどのような企業戦略の見直しを行ったか(予定を含む)(複数回答)について、湖東地域は「営業・販売体制の見直しや効率化」(54.5%)が最も高く、次いで「生産体制の見直しや効率化」(38.6%)、「管理部門の見直しや効率化」(29.5%)となった。

企業活動において自然災害などとともに感染症もリスク項目に含まれるBCP(事業継続計画)※1について、策定状況をたずねた。湖東地域の「策定済みである」は11.4%で、湖北地域(8.7%)に次いで2番目に低いものの、「策定中である」(27.3%)は7地域中で最も高くなった。両者の合計は38.7%で、湖西地域(41.1%)、大津地域(40.3%)に次いで3番目に高い。「策定を検討している」(31.8%)を加えると70.5%と7割を占めた(図表7)。

※1 事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan):自然災害やサイバー攻撃、感染症拡大、環境汚染等の様々なリスクによる不測の事態が発生しても、重要な事業・業務を中断させない、または中断しても可能な限り短期間で復旧させるための方針、体制および手順等を示した「行動計画」。

寄稿:(株)しがぎん経済文化センター