明けましておめでとうございます。2021年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
世界中の人々が苦しんでいる新型コロナウイルスの感染が報告されてから1年を経過しました。春頃のワクチン接種がゲームチェンジャーとなり、活発な経済活動が再開されることを期待しております。

世界遺産と感染症

滋賀県と彦根市は「彦根城の世界遺産登録推進に関する協定」を締結し、令和6年(2024)に向けた事業を協働で進めています。県民・市民的立場では推進運動を理解し、盛り上げを醸成していくことが重要です。
現在の世界遺産総数は1,121件ですが、その中で感染症と関連ある遺産が数件あります。国内では「古都奈良の文化財」(1998年登録)の中の東大寺の大仏(盧遮那仏)が関係しています。建立の背景には、聖武天皇が当時日本で大流行していた天然痘(人口の4分の1以上が死亡)で荒れ果てた国土を回復させ、人心をひとつにし、社会を安定させるために建立したとされています。これには天皇家の私財を抛ち、納税ができない農民たちに作業を委ね建立しました。これにより、民は目標と希望を得、その後の開墾意欲を持ち荘園を生み出すきっかけとなると同時に、新しい社会制度(墾田永年私財法)を生み出しました。
全ての人に不幸と不安をもたらした今回の新型コロナウイルスですが、次の新しいステップにつなげたい思いがあるのと、滋賀・彦根の場合は収束後の世界に希望が持てることを共有していただきたくお願いします。

価値提供の変革 デジタルトランスメーション(DX)への挑戦

デジタルトランスフォーメーションとは、デジタル技術による業務やビジネスの変革を指します。行政業務もビジネスの世界においても、デジタル・ICTの進化により従来型のサービスから効率的で生産性の高い仕組みに変革することが喫緊のテーマとなりました。
少子化および格差社会を考えると、地方都市の方が急がなければなりません。このとき、どのような価値を市民や生活者に提供できるかが問われています。「イノベーション(革新)」が叫ばれているのは、従来型・既存型の改善改革では、ニューノーマルと呼ばれる社会変化に追いつくことができないからです。
既に多くの方がスマートフォンやタブレット、パーソナルコンピューターを持ち、日常的に使用しています。それらを通じて情報発信やサービス・販売を行うことで、従来とは異なる世界を提供することが新たな価値を創造することとなります。

アニマルスピリット 先駆的な地域の取り組みへの挑戦

経済学者ケインズが使って有名になった言葉ですが、これからの時代において広義な意味の「新たな挑戦・野心的な情熱意欲・動物的な野心・合理的な創造」と解釈できます。組織や事業を再構築するとき、経験の重視・安心安定への過度なこだわりを再考し、既得権打破・規制改革などを進めるためには「アニマルスピリット」が必要となります。
政府が「デジタル庁」で進めるDXに対し、地域として先駆的な取り組みを行いたいと考えています。毎年続くかもしれない自然災害・ウイルスの攻撃が常態化する今後を考えると、「DX・アニマルスピリット」の精神と言葉はキーワードになってきます。

グリーン社会への対応と地域人材の育成

新政権のひとつの柱となる政策は、「グリーン成長戦略」としての2050年カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現です。気候変動に対応した「経済と環境の好循環」を進める産業政策で、世界中で取り組んでいる課題です。
また、地域においてはジュニア世代・シニア世代を含めた全市民型の人材育成プログラムが大事だと認識しています。「夢と未来を語れるひとづくり」をテーマに、産官学一体となって取り組んでまいります。
最後になりますが、今年の大河ドラマは近代資本主義(合本主義)の父であり、商工会議所の生みの親である渋沢栄一翁を「青天を衝け」として描かれます。また2024年には渋沢栄一翁が新一万円札として登場します。著書『論語と算盤』にあるように、未来を見つめ「モラルとマネジメント」を重視した会議所運営を進めてまいりますので、会員各位のご理解とご協力をお願いし、年頭のあいさつとさせていただきます。

彦根商工会議所会頭
小出英樹