(株)滋賀銀行のシンクタンクである(株)しがぎん経済文化センターでは、四半期ごとに「滋賀県内企業動向調査」を実施している。今回「2020年第4四半期(10-12月期)」の調査では、904社を対象に307社から回答を得た。このうち、湖東地域(彦根市・愛荘町・豊郷町・甲良町・多賀町)からの回答は34社だった。

湖東地域はマイナス幅が縮小するも、縮小幅は県全体より小さい

今回の調査期間(2020年10-12月期)での湖東地域の自社の業況判断DIは-47で、前回(7-9月期)の-57から10ポイント上昇したものの3四半期連続の低水準が続いている。県全体(-54→-38)は16ポイント上昇しており、湖東地域の上昇幅は県全体より小さく、水準(-47)も県全体(-38)より低かった。地域別にみると、大津地域(-66→-33)、南部地域(-49→-31)、甲賀地域(-51→-30)などでマイナス幅が大幅に縮小した。一方、湖西地域(-16→-39)ではマイナス幅が拡大した(図表1、図表2)。
業況判断の個別コメントをみると、製造業の一部で「巣ごもり需要による、新規需要の増加」などの良好な意見がみられたが、依然多くの企業で「新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響による売上減少」などの厳しい意見がみられた。
3カ月後(21年1-3月期)は5ポイント上昇の-42となる見通しを示した。県内他地域では、大津地域、南部地域、東近江地域、甲賀地域でマイナス幅が拡大、湖北地域、湖西地域でマイナス幅が縮小する見通しである(図表2)。

湖東地域の業況判断DIは、県全体より製造業では5ポイント、非製造業では13ポイント低い

県全体の業況判断DIを業種別にみると、製造業は、前回の-69から20ポイント上昇の-49となり、マイナス幅は縮小したものの、8四半期連続のマイナス水準となっている。金属製品(-92→-19)、食料品(-92→-56)などはマイナス幅が縮小するも、繊維(-76→-81)、一般機械(-15→-40)などはマイナス幅が拡大した。
非製造業は、前回の-42から12ポイント上昇の-30となり、マイナス幅は縮小したものの、5四半期連続のマイナス水準となっている。建設(-26→-13)、サービス(-61→-31)などはマイナス幅が縮小、卸売(-41→-55)などはマイナス幅が拡大した。
全体的にマイナス幅は縮小傾向にあるものの、引き続き新型コロナの感染拡大が企業経営に影響を及ぼしており、景況感は全ての業種で、3四半期連続のマイナス水準となっている(図表3)。
湖東地域の業況判断DIを業種別にみると、製造業は-54で前回の-67から13ポイント上昇し、非製造業は-43で前回の-50から7ポイント上昇したものの、いずれも県全体(それぞれ-49、-30)よりも低くなった(図表3、図表4)。

売上DI、経常利益DIともに低水準が続く

湖東地域のその他のDI項目をみると、売上DIは-47と前回(-57)から10ポイント上昇し、マイナス幅は縮小するも、依然低水準が続いている。3カ月後(21年1-3月期)は-41で、マイナス幅は縮小する見通し。経常利益DI(-60→-47)はマイナス幅が縮小するも、依然低水準が続いている。製・商品の在庫DI(+2→-13)は15ポイント低下し、「不足感」がでてきた。販売価格DI(-7→-6)は1ポイント上昇したものの、仕入価格DI(+17→+28)は11ポイント上昇したため、収益環境は一層厳しくなっている。生産・営業用設備DI(+5→+6)は1ポイント上昇。雇用人員DIは+6で前回(+7)から1ポイント低下したものの、2四半期連続で「過剰感」が強い(図表4)。

湖東地域の売上高の回復は県全体より低い

前年同期を100とした20年7-9月期(確定分)の売上高をみると、湖東地域は80.9で、県全体(85.1)より4.2ポイント低い。地域別にみると、東近江地域(89.0)、甲賀地域(88.1)、大津地域(87.9)は県全体より高く、南部地域(83.7)、湖北地域(83.2)、湖西地域(79.1)は県全体より低い。湖東地域は湖西地域に次いで2番目に低い水準となった。
10-12月期の見込みは、県全体が87.9で2.8ポイント上昇、湖東地域も87.9で7.0ポイント上昇する見通しである(図表5)。

新型コロナで約7割が「マイナス影響」 事業再構築などに約6割が取り組む

特別項目として、新型コロナによる影響を調査した(第3回)。
企業活動への影響について、湖東地域は「マイナスの影響が出ている」が69.7%となった。過去2回は、第1回(20年7-9月期):55.3%→第2回(10-12月期):72.7%であり、第2回調査から3.0ポイント低下した(図表6)。
「今後、マイナスの影響が出る可能性がある」(21.2%)を合わせると90.9%がマイナスの影響を実感ないし予想しており、引き続き高い割合が続いている。
事業の再構築や新事業展開に取り組んでいるか(複数回答)については、湖東地域の「取り組んでいる(今後取り組む予定も含む)」は59.4%で、全体平均(50.7%)を上回り、7地域中で最も高くなった。次いで高いのは東近江地域(58.5%)、湖北地域(57.1%)の順。
具体的な取り組み(複数回答)について、湖東地域は「新たな商品・サービスの開発」(66.7%)が最も高く、7地域中では湖西地域(71.4%)に次いで高かった。続く「既存の商品・サービスの販路開拓」(55.6%)は7地域中最も高くなった。また、「異業種・異業態との連携」(22.2%)は全体平均(10.5%)を大きく上回り、7地域中でも突出して高かった(図表7)。

【分析方法】DI(ディフュージョン・インデックス)

  • 質問の「プラスの選択肢(良い・増加・上昇)の 回答割合」から「マイナスの選択肢(悪い・減少・不足)の回答割合」を引いた指数。
  • 各項目の水準や方向性を示す。