滋賀県と彦根市は2024年度の彦根城の世界遺産登録に向けて、登録のために必要な推薦書原案等を3月31日に文化庁へ提出した。
提出した書類は推薦書と包括的保存管理計画の原案。そのうち推薦書は世界遺産としての価値とそれを保護するために説明した文書のことで、原案は昨年3月31日に提出した第1稿をもとに、専門家の助言を受けながら作業を進めて約270ページで作成された。
彦根城の世界遺産に向けての課題はすでに登録されている姫路城との差別化だが、それを解決するには外国人でも理解できる「顕著な普遍的価値」を証明する必要がある。
推薦書原案ではその「顕著な普遍的価値の言明」と題して論述。「江戸時代の日本の政治体制が幕府と藩によって、全国規模で政治の仕組みが標準化。統治権を持つ幕府が地方の藩に一定の領域を与え、藩が領域内で自立した権限と財源を持ち、大名を頂点とする階層構造によって一元的・集約的に統治していた」と解説している。

彦根城は「建築土木装置のモデル」、来年度の国内推薦目標

また、全国の藩の拠点だった城を「建築土木装置」と名付け「彦根城がモデルの一つとなって、建築土木装置が標準化され、日本独特の政治体制が実現した」「彦根城は17世紀から19世紀半ばの政治拠点だった建築土木装置の構造・機能を表す、最もよく保存された見本である」と主張している。
今回の推薦書原案には、顕著な普遍的価値を示すための「特質」を初めて盛り込んだ。

  • 領域全体の政治に必要な機能を石垣と堀で区切った同心円状の構造の中に配置することで、大名を頂点とする階層的な組織構造とその自立性を示した
  • 天守を中心とする、周辺から視認できる外観によって、自立した政治権力の存在とその正統性を示した

の2点もあげている。

もう一つの文書の包括的保存管理計画は彦根城内の各史跡を保存整備するための内容で、今回が初めての提出となる。
今後のスケジュールとして、今年度は文化庁の文化審議会世界文化遺産部会での審議、5月~6月に文化審議会のヒアリングを受け、文化審議会からの課題提示を経て、推薦書原案等を完成させる。そして来年度に文化審議会での国内推薦決定、政府による推薦、2024年度の世界遺産登録を目指す運びだ。