(株)滋賀銀行のシンクタンクである(株)しがぎん経済文化センタ-では、四半期ごとに「滋賀県内企業動向調査」を実施している。今回「2021年第1四半期(1 - 3月期)」の調査では、897社を対象に345社から回答を得た。このうち、湖東地域(彦根市・愛荘町・豊郷町・甲良町・多賀町)からの回答は45社だった。

湖東地域は横ばいで推移、水準は県全体より低い

今回の調査期間(2021年1-3月期)での湖東地域の自社の業況判断DIは-47で、前回(20年10-12期)の-47から横ばいで推移し、4四半期連続で-45以下という低水準が続いている。県全体(-38→-38)も横ばいで推移しており、湖東地域の水準(-47)は県全体(-38)より低かった。地域別にみると、南部地域(-31→-25)、甲賀地域(-30→-24)、湖北地域(-62→-44)でマイナス幅が縮小、大津地域(-33→-45)、東近江地域(-34→-44)、湖西地域(-39→-53)ではマイナス幅が拡大した(図表1、図表2)。
業況判断の個別コメントをみると、非製造業の一部で「点検の受注が増えた」などの良好な意見がみられたが、依然多くの企業で「新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響による売上減少」などの厳しい意見がみられた。
3カ月後(4-6月期)は1ポイント低下の-48となる見通しを示した。県内他地域では、大津地域、南部地域、湖西地域でマイナス幅が拡大、東近江地域、甲賀地域、湖北地域でマイナス幅が縮小する見通しである(図表2)。

湖東地域の業況判断DI は、県全体に比べて製造業では10ポイント、非製造業では8ポイント低い

県全体の業況判断DIを業種別にみると、製造業は、前回の-49から2ポイント低下の-51となり、マイナス幅はさらに拡大し、9四半期連続のマイナス水準となっている。一般機械(-40→-33)、その他の製造業(-52→-38)などはマイナス幅が縮小、化学(-50→-78)、食料品(-56→-67)、金属製品(-19→-55)などはマイナス幅が拡大した。
非製造業は、前回の-30から1ポイント上昇の-29となり、マイナス幅はやや縮小したものの、6四半期連続のマイナス水準となっている。その他の非製造業(-27→-14)はマイナス幅が縮小、運輸・通信(-33→-38)、サービス(-31→-47)などはマイナス幅が拡大した。卸売(-55→-43)などはマイナス幅が縮小も、低水準が続いている(図表3)。
湖東地域の業況判断DIを業種別にみると、製造業は-61で前回の-54から7ポイント低下、非製造業は-37で前回の-43から6ポイント上昇した。いずれも水準は県全体(それぞれ-51、-29)より低かった(図表3、図表4)。

雇用DIは3四半期ぶりのマイナス水準

湖東地域のその他のDI項目をみると、売上DIは-39と前回(-47)から8ポイント上昇し、マイナス幅は縮小するも、依然低水準が続いている。3カ月後(4-6月期)は-34で、マイナス幅は縮小する見通し。経常利益DI(-47→-33)はマイナス幅が縮小するも、依然低水準が続いている。製・商品の在庫DI(-13→+12)は25ポイント上昇し、2四半期ぶりに「過剰感」がでてきた。販売価格DI(-6→+2)は8ポイント上昇、仕入価格DI(+28→+14)は14ポイント低下した。生産・営業用設備DI(+6→+7)は1ポイント上昇。雇用人員DIは-27で前回(+6)から33ポイント低下し、3四半期ぶりに「不足感」がでてきた(図表4)。

湖東地域の前年同期を100とした売上高は県全体を上回る

前年同期を100とした20年10-12月期(確定分)の売上高をみると、湖東地域は92.4で、県全体(90.7)より1.7ポイント高い。地域別にみると、甲賀地域(94.5)、湖北地域(93.3)、南部地域(90.9)は県全体より高く、東近江地域(89.4)、大津地域(87.4)、湖西地域(87.4)は県全体より低い。湖東地域は全体で3番目の水準となったものの、前年同期水準までの売上回復には至ってない。
1 - 3月期の見込みは、県全体が94.8で4.1ポイント上昇も、湖東地域は85.9で6.5ポイント低下する見通しである(図表5)。

20年度の正社員採用、3割超で新型コロナの「マイナス影響あり」

今回、特別項目として「雇用や人材確保・育成について」の調査を実施した(湖東地域の回答数:45社)。
2020年度の正社員(新卒・中途採用含む)の採用活動について、新型コロナの影響をたずねた。採用活動を行った(行っている)企業のみ(30社)で集計したところ、湖東地域では「特に影響はなかった」が56.7%で最も高くなった。「マイナスの影響があった」は33.3%で、7地域中、湖西地域(37.5%)に次いで高くなった。(図表6)。
20年度の採用予定人数(正社員、非正社員とも)に対して、3月末までにどの程度の達成を見込んでいるかをたずねた。湖東地域は「100%または100%以上」(30.8%)が最も高く、次いで「75%~100%未満」(23.1%)となった。一方で、50%未満を合計すると30.8%と、湖北地域(46.7%)、南部地域(30.9%)に次いで3番目に高くなった。(図表7)。

21年度(2021年4月~22年3月)の正社員(新卒・中途採用含む)の採用計画についてたずねた。湖東地域は「採用予定あり」が61.4%と、湖北地域(62.9%)、大津地域(61.5%)に次いで3番目に高くなったものの、地域間で大きな差はなかった。
前問で「採用予定あり」と回答した企業に、20年度と比較した採用数の増減(見込み含む)をたずねたところ、湖東地域は「増やす(見込み含む)」が55.6%と唯一5割を超え、7地域中で最も高くなった。また、「減らす(見込み含む)」は3.7%と、最も低くなった(図表8)。

【分析方法】DI(ディフュージョン・インデックス)

  • 質問の「プラスの選択肢(良い・増加・上昇)の 回答割合」から「マイナスの選択肢(悪い・減少・不足)の回答割合」を引いた指数。
  • 各項目の水準や方向性を示す。

寄稿:(株)しがぎん経済文化センター