世界遺産を目指す彦根城(市提供)

彦根城の世界遺産登録を目指し、滋賀県と彦根市は東アジアとヨーロッパの専門家を招いた初めての「国際会議」をオンラインで開催。彦根城が持つ「普遍的価値」の明確な表現方法などを求める意見が出た。
滋賀県と彦根市は、江戸幕府が地方の各藩に対して一定の領域を与え、各藩が領域内で自立した権限と財源を持ち、大名を頂点とする階層構造によって一元的・集約的に統治していた体制に着目。こうした政治体制と政治拠点が「世界遺産としての価値を持つ」と位置づけ、井伊家という特別な地位の大名が治めた彦根城は「17世紀から19世紀半ばの日本の独特の政治体制を物語っており、顕著な普遍的価値がある」と訴えている。
国際会議は、世界遺産登録を目指す世界中の地域が資産の価値を国際的な視点から確認し、国内外でその価値を共有することを目的に、現地査察を含めて行われている。しかし新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、滋賀県と彦根市は文化庁および国内有識者と協議し、議題を「彦根城の価値の証明」に限定した上で8月18、19日に非公開でオンラインによる国際会議を開催した。

政治拠点と証明する表現法を 課題提示、2024年度登録目指す

海外からはフィンランド遺産庁のシニアアドバイザーで世界遺産の審査を経験したステファン・ウェスマンさん、中国文化遺産研究院の研究員のジェン・ジュンさん、韓国の京畿文化財団主任研究員のチョ・ドゥオンさん、国内からは彦根城世界遺産登録推進学術会議委員の7人らが出席。
彦根城の「顕著な普遍的価値」の内容についての協議が行われ、価値の方向性については問題ないと確認できた一方、

  • 城という存在と平和な時代の政治拠点というつながりがイメージしにくいため、端的に示せるフレーズや表現が必要
  • 現在の資産の範囲である中堀より内側が政治拠点だと証明できる明確な表現がいる

との意見が出た。

彦根城世界遺産登録推進学術会議議長の宗田好史・京都府立大教授は「東アジアやヨーロッパの城郭と比較し、彦根城の特徴的な価値と証明の有効性について十分な理解が得られた。価値の証明の一層の追究や比較研究の充実など、解決すべき課題や具体的な作業の方向性も明らかになった」とのコメントを発表した。
滋賀県と彦根市は今年度中にもう一度、国際会議を開き、今年度末に推薦書原案を国へ提出する予定。2022年度の国内推薦を経て、24年度の登録を目指している。