西明寺の銅孔雀文磬(表)

西明寺の銅孔雀文磬(裏)

滋賀県は今月11日、県文化財保護審議会から知事へ1月14日付で答申を得た有形文化財4件と天然記念物の追加指定1件が、新たに県指定有形文化財等に指定されたと発表した。彦根市・犬上郡管内では、甲良町の西明寺の銅孔雀文磬(もんけい)や多賀町敏満寺区の銅造大日如来坐像が有形文化財に指定された。
先人の不断の努力で守り伝えられてきた貴重な文化財が「滋賀の宝」として今まで以上に大切に守られ、未来へとしっかりと引き継がれていくことを願い、県の有形文化財に指定している。今回の計5件で、県指定有形文化財等は517件となった。
磬(けい)は仏教の法要で用いられる楽器。その起源は古代中国の石製あるいは玉製の楽器で、唐時代に仏具に取り入れられたと考えられる。日本では正倉院の宝物に鉄製の磬があることから、奈良時代には使用されていたことが確認できる。
古代中国の磬は「へ」の字形だったが、日本では左右均等の山形に変化し、時代の経過とともに蓮華形や雲形、蝶形なども生まれた。西明寺の磬は鎌倉時代の13世紀前半に作られた高さ12.3cm、すそ張(最大幅)20cm、縁の厚さ1.1cmの銅製。最も基本的な山形で、上縁に6つの弧、下縁に5つの弧を連ねる。
表裏の中央に蓮華型の撞座(つきざ)=棒でたたいて音を鳴らす部分=があり、その左右に相対する孔雀を表している。裏面に「法花堂」と刻まれた銘があるため、天台宗の重要な法要を行う法花堂で使われていたと考えられる。ただし、現在の西明寺に法花堂は存在せず、過去に存在したことを裏付ける史料もないため、詳細な伝来は不明である。

多賀町敏満寺区の銅造大日如来坐像

多賀の銅造大日如来坐像は鎌倉時代に作られた像高13.9cm、台座高11.1cm。大日如来は密教の最高の尊格で、胸の前で左手の指一本を右手で握って重ねる智拳印を結び、蓮華座に足を組んで座るのが特徴。
多賀大社の坐像は胡宮神社の境内地に建つ大日堂に伝来し、堂内に安置される木造大日如来坐像(像高76.2cm)の像内に納められていた。墨書銘によると、木造の坐像は江戸時代の宝永7年(1710年)に造像され、それ以来、像内に銅造の坐像を納めるようになったという。なお胡宮神社の一帯はかつて当地に存在した敏満寺の跡地にある。