彦根城博物館は10月8日から企画展「上田道三(みちぞう)―彦根の歴史風景を描く」を開いている。館内の講堂で10月15日と29日のいずれも午後2時から記念講演会も開催する。
上田道三は明治41年(1908年)9月28日に彦根市内で生まれた。尋常小学校6年の時に京都へ出て、画家の不染鉄(ふせんてつ)の内弟子となった。不染鉄が奈良に拠点を移すと、道三も同行して奈良の中学校に通いながら絵を学んだ。昭和7年(1932年)に京都絵画専門学校に入り、卒業後に同校研究科へ進み、京都画壇の巨匠・中村大三郎に師事した。昭和21年に彦根へ戻ってからは古書や古絵図を参考に城郭のスケッチを進め、昭和33年に「彦根城廓(かく)旧観図」を完成させた。武家屋敷や古民家の絵も描き、150mにおよぶ大絵巻を制作した。昭和36年に彦根市功労者として功労賞が、昭和53年に滋賀県文化賞の文化功労賞がそれぞれ贈られた。昭和59年3月10日に75歳で亡くなった。
彦根城博物館での企画展では道三が描いた彦根の歴史風景の絵画を中心に計82点を展示している。
昭和33年作の「彦根城廓旧観図」は大手側の上空から見た景色を描いた縦171cm×横186cmの大作。明治時代初期に取り壊され、今は見られない御殿や櫓、戦中戦後に埋め立てられた松原内湖が描かれている。
芹橋2丁目の辻番所などの絵「足軽屋敷の部」は約70軒の旧足軽屋敷を描いた総延長150mの「武家屋敷および古民家絵巻集」の一部分。昭和32年から道三が住んだ家も登場している。
「山の湯(明治の風呂屋)」は県政百年企画として昭和47年7月11日から9月21日まで朝日新聞の滋賀版で連載された「とお・むかし」の初回の原画。明治時代の県内の生活を紹介する連載で、道三がその挿絵を担当した。
開館は11月7日までの午前8時半から午後5時まで。観覧料は高校生以上500円、小中学生250円だが、市内の子どもや市民向け観覧券があれば無料。
講演会は今月15日のテーマが「画家 上田道三の足跡~その生涯をひもとく」、遺族が来場予定、受講料400円。今月29日のテーマが「上田道三の画業~風景画から記録画へ」、受講料100円。いずれも講師は学芸員の奥田晶子さん、定員はいずれも先着50人。
図録「上田道三 ―彦根の歴史風景を描く―」を館内ミュージアムで発売している。A5版、カラー58ページ。1000部。600円。