ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的に「事業再構築補助金」が導入され1年半が経過しました。現在第8回公募が行われていますが、毎回制度の改正が行われ分かりにくくなっているかと思いますので最近の改正のポイントについて紹介します。また採択率の推移・傾向についてご紹介します(2022年11月20日時点の情報に基づきます)。

1. 改正のポイント

第6回公募(令和4.3.28〜6.30)での主な改正

  • コロナ禍で引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者を対象として、それまでの「緊急事態宣言特別枠」より要件を緩和し適用範囲を拡大した「回復・再生応援枠」が設置されました。
  • ガソリン車向け部品から電気自動車向け部品製造への事業転換のように、グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象に、従来よりも補助上限額を引き上げ売上高減少要件を撤廃した「グリーン成長枠」が新設されました。
  • 「通常枠」において、補助金の上限額が従業員規模に応じて見直されています。

第7回公募(令和4.7.1〜9.30)での主な改正

  • 新型コロナの影響を受けつつ、原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響により業況が厳しい中小企業等が行う、新型コロナをはじめとする感染症の流行など、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応した、危機に強い事業への事業再構築の取組を支援する、「原油価格・物価高騰等緊急対策枠(緊急対策枠)」が新設されました。

第8回公募(令和4.10.3〜R5.1.13)での主な改正

  • 申請枠の新設・変更はありませんが、「最低賃金枠」において、売上高の減少要件が一部撤廃され、また製品等の新規性要件における“製造等に用いる主要な設備を変更すること”が任意要件となるなど、要件が緩和されています。
第8回公募での申請枠
申請類型補助上限額(下限100万円)補助率
最低賃金枠500万円〜1,500万円
(*従業員規模により異なる)
中小企業3/4
中堅企業2/3
回復・再生応援枠
通常枠2,000万円〜8,000万円
(*従業員規模により異なる)
中小企業2/3
(6,000万円超1/2)
中堅企業1/2
大規模賃金引上率1億円
グリーン成長枠中小企業1億円
中堅企業1.5億円
中小企業1/2
中堅企業1/3
緊急対策枠1,000万円〜4,000万円
(*従業員規模により異なる)
中小企業3/4
中堅企業2/3

申請類型が増加し分かりにくくなっていますが、政府が重視する政策に沿った内容になっており、要件を緩和する方向に進んでいます。なお公募要領は随時変更されていますので、事業再構築補助金ウェブサイトで最新の情報を確認ください。

2. 採択率の推移から見た傾向

昨年3月の第1回公募以降、これまで約12万件の申請と約5万件の採択がなされています(第6回公募までの採択結果の集計値から)。これまでの採択率の推移を見ると、全体では40%台、通常枠では30%から45%へ上昇傾向にはありますが、簡単には採択されないことが伺えます。一方、最低賃金枠や特別枠(回復・再生応援枠)は高い採択率で推移していることが分かります。これは最低賃金引上げを目指す政府の方針が明確に示された結果であると考えられます。通常枠での申請を検討される企業様が多いですが、これら申請枠は補助金の上限額こそ低いものの補助率は高く、大きな投資をしない場合は検討の価値があると言えます。

採択率の推移(出所:事業再構築補助金・採択結果から彦根商工会議所が集計して作成)

事業再構築補助金・採択結果

3. 中小企業相談所からのご支援

現在、8回目の公募が行われています。彦根商工会議所では、認定経営革新等支援機関として会員企業様に対して事業計画や申請書の作成を支援させていただきますので、お気軽にご相談ください(締切:1月13日)。
また令和4年度第二次補正予算案が閣議決定され、事業再構築補助金は来年度も実施される見込みです。詳細が分かりましたら、改めて発信させていただきます。