前回、経営者年齢の高齢化が進む中、多くの企業で経営者の交代時期が迫っており、事業承継は引き続き重要な政策的課題であること、円滑な事業承継を実現するためには、早期に事業承継の計画を立て、後継者の確保を含む準備に着手することが不可欠であることを説明しました。一方で事業承継は引き継いだ経営資源を活用して新たな取り組みにチャレンジするチャンスでもあります。そんな取り組みを行う場合に活用できる「事業承継・引継ぎ補助金」について説明します(2023年6月16日時点の情報に基づきます)。

1. 補助事業

事業承継・引継ぎ補助金(以下、本補助金)は、中小企業者等が事業承継、事業再編及び事業統合を契機として新たな取り組みを行う事業等について、その経費の一部を補助することにより、事業承継、事業再編及び事業統合を促進し、我が国経済の活性化を図ることを目的としています。この目的を実現するため、本補助金では3つの事業が設けられています(図表1参照)。なお経営革新事業では事業承継対象期間内(2017年4月1日から2024年4月24日)に事業の引継ぎを行った又は行う必要がありますが、経営者交代型における同一法人内の代表者交代による事業承継においては、当該期間以後の承継であっても対象となるよう改定されています(未来の承継)。

出所:事業承継・引継ぎ補助金「公募要領」および「パンフレット」を参照して作成

2. 補助対象経費

各事業別の補助対象経費を図表2に示します。
経営革新事業では新たな取り組みに係る経費として店舗等借入費や設備費、試作品製作の原材料費、広報費など新たな事業を始めるために必要な経費が認められています。
専門家活用事業では、フィナンシャルアドバイザーやM&A仲介業者などへの委託費が認められています(「M&A支援機関登録制度」に登録された専門家に限る)。
また廃業・再チャレンジ事業では廃業に伴う専門家活用費や在庫廃棄費、解体費などが認められています。

図表2 補助対象経費(事業承継・引継ぎ補助金「動画で解説 全体像」より切り取り)

3. 補助金額・補助率

各事業別に補助金額・補助率を図表3~5にまとめて示します。経営革新事業の場合、原則補助金上限額が600万円、補助率は1/2以内ですが、賃上げを実施することで上限額が800万円に引上げられ、また小規模事業者や営業利益率低下など条件を持たすことで補助率が2/3以内に引上げられます。専門家活用事業でも、同様に補助率の引き上げがあります。また廃業・再チャレンジ事業で他の事業と併用申請した場合は、廃業費(150万円まで)を上乗せすることができます。

事業承継・引継ぎ補助金「公募要領」および「パンフレット」を参照して作成

4. 6次公募

受付期間は2023年6月16日(金)~8月10日(木)17:00(予定)です。
なお申請は電子申請「jGrants」で行いますので、『gBizIDプライム』アカウントの取得が必要です。また、申請には認定経営革新等支援機関が発行する確認書が必要です。

5. 中小企業相談所からのご支援

彦根商工会議所では、認定経営革新等支援機関として会員企業様に対して補助金申請を支援させていただきます。事業承継をお考えの場合は、まずはお気軽にご相談ください。本補助金の最新の状況は、公募要項やホームページ等も随時ご確認ください。

事業承継・引継ぎ補助金


展示会出展支援プロジェクト2023について

彦根商工会議所では、管内の中小企業を対象に販路開拓に向け展示会を活用した取り組みに対する支援を行っておりますが、今年度新たな事業として、以下の3プロジェクトを実施予定です(詳細は次回掲載いたします)。

1. 展示会等出展支援助成金事業(8月公募開始予定)

展示会に出展することで、自社の商品・サービスをPRし取引先を拡大したい方、展示会の会場で市場調査・ニーズ調査を実施したいが、出展に要する費用負担が大きい方は必見です。展示会の小間料など主催者に支払う費用の助成を行います。

2. 展示会活用セミナー(9月開催予定)

自社の商品・サービスを振り返り、今後の方向性や明確な売上目標を設定すると共に、効果的な展示会の活用方法を学ぶセミナーを開催します。
本セミナーでは、全国規模の見本市・展示会で3,000回以上ブースに立ち豊富な経験を持つ接客トレーナーから、効果的な接客や商談を実現するために、今すぐ取り掛かることができるノウハウを伝授します。

3. 展示会現地視察・現地指導プロジェクト(10月~11月開催予定)

実際の展示会場にてブースの設営、接客の様子などを「見て・聞いて・体験」しながら、専門家に現地指導を行っていただく体験型のプロジェクトです。
「展示会に出展したいけど、どのように出展すると良いか」、「出展したが期待した成果がでなかった」、「ブース前でチラシを配っていたら誰もブースに寄り付かなくなった」といった現場が抱える悩みや課題を、現地指導により解決します。