彦根商工会議所では、会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施しております。このほど第9四半期(令和5年4〜6月期)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員200社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。
調査方法:彦根商工会議所会員企業200社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和5年4月~6月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:121社(回答率60.5%)
建設業 | 製造業 | 卸小売業 | 飲食業 | サービス業 | 合計 | |
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回答数 | 21 | 26 | 24 | 19 | 31 | 121 |
業種別比率 | 17.3% | 21.4% | 19.8% | 15.7% | 25.6% | 100.0% |
※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和5年1月~3月と比較した令和5年4月~6月の状況
※昨年比:令和4年4月~6月と比較した令和5年4月~6月の状況
※次期:令和5年4月~6月と比較した令和5年7月~9月の見通し
総括的概要
- 市内企業における業況判断 DI は、飲食業が大きく好転したものの、製造業が悪化し、全体としては▲3.3 の悪化となった。建設業、卸小売業は悪化、サービス業は好転という状況は1年以上継続している。
- 直面した問題点として、原材料価格の上昇に加え人件費の増加を挙げる企業が増加。
- 重点的取り組みや支援を求めることとして、販売価格の見直しが減少、自社ブランドのブランド強化・PR、既存顧客との関係強化を挙げる企業が増加した。
1. 全体の景況等
今期の「業況判断DI(好転-悪化)」は▲3.3と前回調査よりも4ポイントマイナス幅を縮小、「売上高DI(好転-悪化)」は0.8とプラスに転じ少しずつ改善の兆候が見られるものの、「採算DI(好転-悪化)」は▲9.9と前回同様悪化を示した。次期の「業況判断DI」は▲3.3、「売上高DI」は0.8、「採算DI」は▲5.8と今期の状態を維持する見通し。
「仕入単価DI(上昇-低下)」は、前期比で58.7と前回調査よりも13ポイントプラス幅を縮小したものの上昇が継続している。次期は57.0の見通し。「販売単価DI(上昇-低下)」は、前期比で32.2、次期で30.6と、継続的な上昇を示した。
「資金繰りDI(容易-困難)」は前期比で▲0.8と前回調査よりも6ポイントマイナス幅を縮小。次期は▲5.0の見通し。「従業員DI(過剰-不足)」は前期比で▲18.2、次期は▲16.5と不足傾向が継続する見通し。
今期に直面した経営上の問題点は、「原材料価格の上昇」が68.6%、「原材料・人件費以外の経費の増加」が38.0%と前年調査時に引き続き高かったが、「人件費の増加」が前年調査時より14ポイント増加し36.4%となり、経費全般に対する懸念がある。「従業員の確保難」は35.5%であった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、「積極的な人材採用・活用」が33.1%、「自社ブランドの強化・PR」が30.6%。前年調査時に最も多かった「販売価格の見直し」は10ポイント減少し26.4%であった。
2. 業種別の景況等
建設業
原材料不足が緩和し、売上高、業況、採算の悪化度合いも緩和した。しかし仕入単価は上昇が継続し、悪化もまだ継続する見通し。
今期の「業況判断DI」は▲14.3と前回調査よりも14ポイントマイナス幅を縮小、「売上高DI」は▲14.3と24ポイントマイナス幅を縮小、「採算DI」は▲23.8と10ポイントマイナス幅を縮小。大きくマイナス幅を縮小したものの、次期の「業況判断DI」は▲19.0、「売上高DI」は▲9.5、「採算DI」は▲28.6と悪化が継続する見通し。
「仕入単価DI」は前期比で52.4と前回調査よりも19ポイントプラス幅を縮小したものの、次期は57.1と継続して上昇する見通し。「販売単価DI」は前期比で19.0、次期は19.0。
「資金繰りDI」は前期比で▲9.5と前回調査よりも14ポイントマイナス幅が縮小したが、次期は▲19.0と今期に比べ9ポイントマイナス幅が拡大する見通し。「従業員DI」は前期比で▲19.0、次期で▲19.0と不足傾向が継続する。
今期に直面した経営上の問題点は、「原材料価格の上昇」81.0%をほとんどの企業が挙げた一方、「原材料の不足」は前年調査時より29ポイント減少し19.0%であった。「原材料・人件費以外の経費の増加」は38.1%であった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、「積極的な人材採用・活用」が38.1%であった。前年調査時に多かった「社員の育成」は11ポイント減少し23.8%、「公的補助金・支援金の活用」は7ポイント減少し23.8%であった。
その他意見
- 文化財修理を将来にわたり継続していくために、伝統的な技術に対する保護体制を求む
製造業
業況、売上高、採算ともに過去最低であった2022年1~3月以上の悪化となった。次期も悪化は継続するも緩和の見通し。仕入単価の上昇に加え、人件費の上昇が懸念される。
今期の「業況判断DI」は▲23.1と大きく悪化した。「売上高DI」は▲38.5、「採算DI」は▲50.0と前回調査よりも20ポイント以上マイナス幅を拡大した。次期の「業況判断DI」は▲11.5、「売上高DI」は▲11.5、「採算DI」は▲26.9と今期に比しマイナス幅を縮小する見通し。
「仕入単価DI」は前期比65.4、次期57.7と上昇が継続。「販売単価DI」についても前期比34.6、次期30.8と上昇が継続している。
「資金繰りDI」は前期比7.7、次期3.8と少しずつ好転している。「従業員DI」は前期比▲7.7、次期▲7.7であった。
今期に直面した経営上の問題点は、「原材料価格の上昇」76.9%、「人件費の増加」42.3%「原材料・人件費以外の経費の増加」38.5%と経費全般に懸念がある。特に「人件費の増加」は前年調査時よりも18ポイント増加している。「従業員の確保難」は42.3%であった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、「新商品・新製品の開発」が42.3%と前年調査時よりも22ポイント増加、「既存顧客との関係強化」が34.6%と前年調査時よりも21ポイント増加と売上増加に向けて重点的に取り組んでいることが見て取れる。他には「生産性向上の為の設備投資」34.6%、「販売価格の見直し」30.8%、「自社ブランドの強化・PR」30.8%、「積極的な人材採用・活用」30.8%であった。
卸小売業
業況、売上高ともに回復基調にあり、採算は次期には好転する見通し。経費関連の問題点が縮小傾向にあるが、売上関係の問題点が増加。売上拡大への支援が求められる。
今期の「業況判断DI」は▲16.7と前回調査よりもマイナス幅を6ポイント縮小、「売上高DI」は0.0とマイナスを解消し不変となった。「採算DI」は▲4.2とマイナス幅を11ポイント縮小した。次期の「業況判断DI」は▲8.3、「売上高DI」は▲4.2。「採算DI」は4.2と好転する見通し。
「仕入単価DI」は前期比で62.5と前回調査よりも30ポイントプラス幅を縮小。次期で66.7と上昇傾向が続く見通し。「販売単価DI」は前期比で37.5、次期で50.0と上昇が継続。
「資金繰りDI」は前期比▲4.2と前回調査よりもマイナス幅を19ポイント縮小。次期は▲4.2。「従業員DI」は前期比▲16.7と前回調査よりもマイナス幅を6ポイント縮小。次期は▲16.7の見通し。
今期に直面した経営上の問題点は、「原材料価格の上昇」を挙げた企業が前年調査時より6ポイント減少の62.5%、「原材料・人件費以外の経費の増加」が11ポイント減少の33.3%と経費関連を問題に挙げる企業が多いながらも減少傾向にある一方、「顧客の減少」が4ポイント増加の41.7%、「需要の停滞」が13ポイント増加の37.5%、「販売価格への転嫁」が13ポイント増加の33.3%と売上関連も問題点が増加している。「従業員の確保難」は9ポイント増加の33.3%であった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、「既存顧客との関係強化」が18ポイント増加の45.8%、「販売価格の見直し」が41.7%、「SNSの活用を通じた販路拡大」が10ポイント増加の37.5%と売上関係への重点的取組み・支援要請が増加した。また「資金調達・資金繰り改善」が6ポイント増加の33.3%、「公的補助金・支援金の活用」が9ポイント増加の33.3%であった。
その他意見
- 税負担の軽減を希望
- 「しが割」キャンペーン等の継続的な実施
- 「汗をかく仕事」をもっと夢のあるしごとに!
- 官公庁の単価契約について物価高騰時の柔軟な対応を希望
飲食業
売上高、採算は大きく好転。業況は1年ぶりの好転となった。次期は売上高がさらに好転する見通し。自社ブランドの強化・PR等積極的な売上拡大策を重点施策とする企業が増加。
今期の「業況判断DI」は21.1、「売上高DI」は57.9、「採算DI」は26.3といずれも大きく好転した。次期の「業況判断DI」は▲5.3、「採算DI」が0.0と今期の状態を維持しつつ、「売上高DI」は15.8とさらに好転する見通しとなった。
「仕入単価DI」が前期比で89.5、次期で78.9と上昇が継続、「販売単価DI」は前期比で42.1、次期で26.3の見通し。
「資金繰りDI」は前期比では▲5.3と前回調査よりも4ポイントマイナス幅を縮小した。次期は▲15.8と今期より厳しくなる見通し。「従業員DI」は前期比で▲10.5と8ポイントマイナス幅を縮小した。次期で▲5.3と不足傾向が縮小していく見通し。
今期に直面した経営上の問題点に「原材料価格の上昇」を挙げた企業が89.5%と依然として高く、「原材料・人件費以外の経費の増加」が前年調査時より6ポイント増加の73.7%、「人件費の増加」が17ポイント増加の57.9%、「原材料の不足」が14ポイント増加の36.8%と経費に関する問題点が増加した。一方「顧客の減少」は32ポイント減少の31.6%、「販売価格への転嫁」は9ポイント減少の31.6%であった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、前年調査時に高かった「販売価格の見直し」が47ポイント減少の21.1%、「既存顧客との関係強化」が15ポイント減少の26.3%となる一方、「新商品・新製品の開発」が3ポイント増加の57.9%、「自社ブランドの強化・PR」が14ポイント増加の36.8%と積極的な売上拡大策への重点的取り組み・支援が増加した。「公的補助金・支援金の活用」は31.6%であった。
その他意見
- 電気代が高騰していることから太陽光発電システムへの補助金拡大をしてほしい
- 店舗等耐震等工事に係る助成金を希望
サービス業
業況、売上高、採算のいずれも好転が継続。次期もさらに好転する見通し。従業員不足が問題で、積極的な人材採用・活用を重点施策とする企業が増加。
今期の「業況判断DI」は16.1と前回調査より8ポイントプラス幅を拡大した。「売上高DI」は9.7、「採算DI」は6.5と前回調査よりもプラスポイントは縮小したものの好転が継続。次期の「業況判断DI」は19.4、「売上高DI」が12.9、「採算DI」が16.1とさらに好転する見通し。
「仕入単価DI」は前期比で35.5と上昇が継続するものの前回調査よりもプラス幅を28ポイント縮小した。次期で35.5。「販売単価DI」は前期比で29.0、次期は25.8。
「資金繰りDI」は前期比で3.2、次期で3.2とわずかに改善の見通し。
「従業員DI」は前期比で▲32.3と前回調査よりも24ポイントマイナス幅を拡大し不足、次期は▲29.0と不足する状況が継続する見通し。
今期に直面した経営上の問題点についても、「従業員の確保難」が前年調査時より10ポイント増加の41.9%、「人件費の増加」が13ポイント増加の35.5%と従業員確保に関する問題を挙げた企業が増加した。「原材料価格の上昇」は45.2%であった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、「積極的な人材採用・活用」を挙げた企業が最も多く41.9%。「社員の育成」「SNSの活用を通じた販路拡大」「自社ブランドの強化・PR」がいずれも38.7%であった。
その他意見
- 地産地消など地域経済を活性化させるための施策をしてほしい