工場の機械を正確に動かす「制御技術」を半世紀近く磨いてきた会社が今、その技術を農業の現場へと応用し始めている。かつて「できない」と断った悔しさをバネに生まれたスマート農業システム、現場の困りごとをそのまま製品にした給水コントローラーなど、ものづくりの原点は、いつも誰かの「困った」という声にある。

制御という名の縁の下の力持ち

「制御」という言葉は、日常生活ではあまり耳にしない。しかし工場の生産ラインが正確に動き、製品が安定して世に届くとき、その陰には必ず「制御技術」が息づいている。
有限会社イーグル電子製作所は、昭和51年(1976)の創業から半世紀近く、まさにその縁の下を支えてきた会社だ。先代社長が制御盤製作の個人事業としてスタートし、昭和61年(1986)に現在地へ社屋を構え、平成3年(1991)に法人化。自動車部品、食品、製薬など、業種を問わず、工場の自動化・省力化システムの設計から施工、メンテナンスまでを手がける。従業員はパートを含めて11名。「社員一人ひとりが持ち味を活かし、時には協力しながら、お客様のリクエストにお応えしております」と代表取締役社長の南大介さんは語る。

断った悔しさをずっと抱えていた

「モーターを使って、ビニールハウスの巻き上げを遠隔で制御できないか」と、農業法人から相談を受けたが、当時、対応できる技術がなかった。
南さんはやむなく断った。その悔しさは、長く心に残った……。
その後、課題解決を目指して試作と検証を重ね、ついに製品化を実現したのが「イーグルスマート for アグリ」だ。スマートフォン一台で、離れたビニールハウスの換気や水やりを遠隔操作できる。現在は大手企業からOEM供給先としても評価されており、ハード・ソフト両面でのリニューアル開発にも取り組んでいる。

工場の技術を農業に持ち込む

もう一つの製品「みずコン」も、現場の困りごとがきっかけで誕生した。「圃場で使う1立方メートルのタンクをトラックに2台積んで給水する際、作業の合間に止め忘れてしまい、水があふれてしまう、何とかしたい」。
「ならば、ボタン一つで給水を開始し、タンクが満水になれば自動で止まる。そんなコントローラーをつくろう」。試作機を製作し、検証を重ねて製品化に至ったのが、「みずコン」(給水コントローラー)だ。
農業者が「本当に困っていること」から逆算した設計が、使いやすさの核心にある。

工場の知恵を畑へそしてAIへ

「お客様に長期にわたりご満足いただける製品づくりを大切にしています」と南さんはいう。新規設備の導入だけでなく、既存設備の改善・改造・修理にも柔軟に応じるのは、長く付き合い続けるものづくりへのこだわりだ。
これからは、既存技術を大切にしながら、急速に発展するAI技術も積極的に取り入れ、「従来にとらわれない手法で社会に貢献していきたい」と展望を語る。ワークショップやセミナーの開催を通じ、技術や取り組みを広く発信していくことも視野に入れている。

彦根の電子製作所が、工場の壁を越えて農業へ、そして次の時代へと歩みを続けている。