大規模改修を終えた荒神山神社の社務所

彦根市清崎町の荒神山神社の社務所と書院、書院中門(ちゅうもん)の大規模な改修工事が終了し、さきごろ竣工式が開かれた。
荒神山神社は天智天皇(626~672)の時代に犬上・愛知・神前・蒲生の4郡の祭祀場の一つとして築かれた。奈良時代以降には仏教が加わり、神仏習合の地として奥山寺など複数の寺院が敷地内にあったとされる。大坂の陣の際には彦根藩二代の井伊直孝が戦勝を祈願し、その返礼として護摩殿や書院などを建立したという。明治時代の神仏分離令により奥山寺が廃止された。
社務所は境内東側にあり、棟札に「天保十年(1839年)九月十八日」、南端の鬼瓦に「天保十二年」と記されている。書院は社務所に接しており、畳廊下とつながっている。奥の座敷、次の座敷とも8畳の造り。19世紀前期から社務所の建築時期にかけて建てられたとされる。書院中門は木材の輪郭線が17世紀後半の模様だが、様式から19世紀前期に改修されたという。いずれの建物も平成28年3月25日に市指定文化財になった。

書院・社務所など江戸期の輝き

書院、書院中門、社務所とも柱の傾きや雨漏れなど老朽化が目立っていたため、周辺住民らが平成26年10月28日に保存修復委員会を設立。周辺住民や市民をはじめ、彦根商工会議所に加盟する企業などを含めて計約4,000万円の寄付が寄せられた。書院の改修工事は平成28年8月22日から始まり、翌年12月25日に完了。社務所の工事が平成30年4月2日から、中門の工事が今年1月6日から始まり、いずれも今年3月2日に完成した。
竣工式は新型コロナウイルスの感染予防のため少人数で4月29日に行われた。奥山二三男宮司(71)は「皆さんのご協力を受けて修復でき、大変喜んでいます」と話していた。

書院

書院中門

「遙拝殿」前に案内看板新設

荒神山神社の表参道にあたる本坂の入り口に5月1日、市指定文化財の遙拝殿(ようはいでん)と国の登録有形文化財の大鳥居を解説した看板(高さ2.3m × 横1.7m)が設置された。
そのうち看板によると、遙拝殿は文政8年(1825年)夏に彦根藩十一代の井伊直中が祖先の霊をまつるために里根町の天寧寺の隣地に建立された。直中と息子の直弼の像を安置していたが、後の時代に像が井伊神社に合祀。荒廃していた建物を荒神山神社の崇敬者らが山ろくに移築し、遙拝殿と命名した。解説文の最後には「昭和34年正月 彦根市長 井伊直愛」と記されている。

「遙拝殿」前に新設された看板