彦根市初の略式代執行が始まった稲里町の特定空家

彦根市稲里町の所有者不在の特定空家を解体する略式代執行が先月から始まった。彦根市によると、市内での特定空家等への略式代執行は初めてだという。
彦根市が公表した特定空家の所在地は稲里町2194番地。建築年、床面積いずれも不明の木造の民家。2013年4月に彦根市空き家等の適正管理に関する条例が施行され、彦根市は助言や指導文書を送付していたが、この年の10月に所有者が死亡し、翌年6月に相続人全員が相続を放棄した。
彦根市は2018年10月に立ち入り調査を実施し、その月に開いた彦根市空き家等対策協議会での協議で、この民家を倒壊の危険がある特定空家に認定した。昨年8月の協議会での話し合いを経て、略式代執行が決まった。
特定空家とは、放置すれば倒壊の恐れがあり、衛生上有害な状態にある民家のこと。自治体から特定空家に指定され「勧告」を受けると固定資産税の優遇措置が適用されなくなり、その後の「命令」に応じない場合は最大50万円以下の過料が科せられ、最終的には行政代執行となる。今回のケースは所有者が不在のため略式代執行となる。

略式代執行を行った理由として市は「建物の老朽化が著しく、屋根や柱が崩れており、倒壊する恐れがある。敷地内の木も倒れる恐れがある」「対象者全員が相続を放棄し、所有者がいない状態で、周辺住民に危害が及ぶ可能性があるため除去する」としている。
代執行の初日の2月17日には市職員が宣言書を読み上げた。3月末までに解体工事や立木の伐採などが行われ、更地後には根抵当権者によって競売にかけられる予定。工事費561万円は一部、国の補助を受けながら、ほとんどを市が負担する。
なお2016年度の調査時点で彦根市内には1691件の空き家があり、そのうち特定空き家が今回の稲里町を含め3件。