(株)滋賀銀行のシンクタンクである(株)しがぎん経済文化センタ-では、四半期ごとに「滋賀県内企業動向調査」を実施している。今回「2021年第2四半期(4-6月期)」の調査では、897社を対象に284社から回答を得た。このうち、湖東地域(彦根市・愛荘町・豊郷町・甲良町・多賀町)からの回答は29社だった。

湖東地域の上げ幅は県全体を上回るも、水準は県全体より低い

今回の調査期間(2021年4-6月期)での湖東地域の自社の業況判断DIは-28で、前回(21年1-3月期)の-47から19ポイント上昇した。県全体(-38→-23)は15ポイント上昇となり、湖東地域は上げ幅で県全体を上回ったが、水準(-28)は県全体(-23)を5ポイント下回った。
県内を地域別にみると、東近江地域(-44→-18)、湖北地域(-44→-19)、大津地域(-45→-22)などでマイナス幅が縮小し、甲賀地域(-24→-31)でマイナス幅が拡大した(図表1、図表2)。

湖東地域の業況判断DIを業種別にみると、製造業は-40で前回の-61から21ポイント上昇、非製造業は-21で前回の-37から16ポイント上昇した(図表3)。
湖東地域の業況判断の個別コメントをみると、依然として非製造業を中心に、「新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響による売上減少」とのコメントがみられた。また、「木材の品不足及び仕入価格の上昇」(卸売)など仕入価格高騰や原材料などの不足にかかるマイナスのコメントがある一方、「世界的に樹脂材料不足の懸念により客先から先行手配がかかり急増した」(化学)といった原材料不足をビジネスチャンスに結び付けたプラスのコメントもみられた。
3カ月後(7-9月期)は3ポイント低下の-31となる見通しを示した。県内他地域では、甲賀地域、湖西地域でマイナス幅が縮小、大津地域、南部地域、湖北地域でマイナス幅が拡大、東近江地域は横ばいとなる見通しである(図表2)。

仕入価格DIは16ポイント上昇も、販売価格DIは2ポイント上昇にとどまる

湖東地域のその他のDI項目をみると、売上DI(-39→0)は39ポイント上昇、経常利益DI(-33→+7)は40ポイント上昇した。これは、本調査は前年同期との比較を回答するものであるが、今期の比較対象である昨年4-6月期は新型コロナによる緊急事態宣言が全国へ拡大された時期であり、多くの企業で臨時休業や一時帰休などにより、売上・利益は大幅に低下していたため、実態よりも上振れした結果になったと考えられる。3カ月後(7-9月期)は売上DIが-21、経常利益DIが-17で、再びマイナス水準へ低下する見通し。
製・商品の在庫DI(+12→-8)は20ポイント低下し、再び「不足感」がでてきた。販売価格DI(+2→+4)は2ポイント上昇、仕入価格DI(+14→+30)は16ポイント上昇した。生産・営業用設備DI(+7→-3)は10ポイント低下。雇用人員DIは0で前回(-27)から27ポイント上昇し、「不足感」は解消した(図表3)。

設備投資実施は県全体を上回る

今回の調査期間(4-6月期)内に設備投資を実施した(する予定)企業の割合は、湖東地域では58.6%で、前回調査(1-3月期)の53.3%より上昇し、県全体(46.8%)を上回った。
湖東地域の設備投資実施・予定(未確定を含む)の主な内容をみると、「生産・営業用設備の更新」(41.2%)が最も高く、県全体(41.1%)とほぼ同水準。次いで「車両の購入」(35.3%)、「OA機器の購入」(29.4%)の順となった(図表4)。
来期(7-9月期)に設備投資を実施する企業の割合は、湖東地域では48.3%に低下するも、県全体(42.5%)を上回る見通しである。

今後の設備投資の方針、「抑制」が「拡大」を上回る

「今後の設備投資の方針」についてたずねたところ、回答があった湖東地域29社のうち、「現状と同程度を維持する」が37.9%で最も高く、7地域中では湖北地域(25.7%)に次いで2番目に高かった。
設備投資を「積極的に拡大する」と「需要動向によるが、基本的に拡大する」を合計した[拡大する]方針は、湖東地域は20.6%と、全体平均(24.5%)を下回り、甲賀地域(20.5%)に次いで低かった。「抑制する」「需要動向によるが、基本的に抑制する」を合計した[抑制する]方針は41.4%と、全体平均(34.7%)を上回り、7地域中では湖北地域(45.7%)に次いで高かった(図表5)。
また、[拡大する]割合から[抑制する]割合を引いてDIを算出したところ、湖東地域は-20.7と、マイナス幅が7地域中最も大きくなった。次いでマイナス幅が大きいのは湖北地域(-17.1)。一方、東近江地域は2.9と、唯一DIがプラスとなった(図表6)。
湖東地域は、[拡大する]方針の割合が低く、[抑制する]割合が高い。今後の設備投資について、厳しい判断が行われる可能性がある。

【分析方法】DI(ディフュージョン・インデックス)

  • 質問の「プラスの選択肢(良い・増加・上昇)の 回答割合」から「マイナスの選択肢(悪い・減少・不足)の回答割合」を引いた指数。
  • 各項目の水準や方向性を示す。

寄稿:(株)しがぎん経済文化センター