(株)滋賀銀行のシンクタンクである(株)しがぎん経済文化センタ-では、四半期ごとに「滋賀県内企業動向調査」を実施している。今回「2021年第3四半期(7-9月期)」の調査では、895社を対象に313社から回答を得た。このうち、湖東地域(彦根市・愛荘町・豊郷町・甲良町・多賀町)からの回答は35社だった。

湖東地域「製造業」の景況感は32ポイントの大幅上昇

今回の調査期間(2021年7-9月期)での湖東地域の自社の業況判断DIは-14で、前回(4-6月期)の-28から14ポイント上昇し、2四半期連続で大幅回復した。県全体(-23→-12)も11ポイント上昇したが、上げ幅は湖東地域が上回り、湖東地域の水準(-14)は県全体の水準(-12)に近づいた。
県内を地域別にみると、湖西地域(-40→-21)、甲賀地域(-31→-15)、南部地域(-20→-5)など、すべての地域でマイナス幅が縮小した(図表1、図表2)。

湖東地域の業況判断DIを業種別にみると、製造業は-8で前回の-40から32ポイント上昇、非製造業は-17で前回の-21から4ポイント上昇した。製造業の水準は県全体(-6)より低く、非製造業は県全体(-17)と同水準となった(図表3)。 湖東地域の業況判断の個別コメントをみると、「新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響で顧客が大幅減。売上は60%減」(サービス)、「客数減が続いている。新型コロナの影響で外出を控えている影響と思われる」(小売)といった厳しいコメントが非製造業を中心にみられた。一方、製造業では「新型コロナの影響による設備投資の減少が一段落し、徐々に売上が戻りつつある」(一般機械)、「取引先から増産対応の依頼あり。半導体不足、原材料不足による先行注文のためか?」(その他の製造業)といったプラスのコメントがみられた。
3カ月後(10-12月期)は12ポイント低下の-26となる見通し。特に製造業(-8→-42)で著しい低下が見込まれている。県内の他地域では、東近江地域でマイナスから持ち合いに回復、甲賀地域でマイナス幅が縮小、一方、その他の地域ではマイナス幅が拡大する見通しである(図表2)。

仕入価格DIは3年ぶりの高水準

湖東地域のその他のDI項目をみると、売上DI(0→+9)は9ポイント上昇、経常利益DI(+7→+3)はプラス水準ながら4ポイント低下、販売価格DI(+4→+6)は2ポイント上昇、仕入価格DI(+30→+49)は19ポイントの大幅な上昇となり、18年7-9月期(+53)以来3年ぶりの高水準となった。これは、木材価格高騰のいわゆる“ウッドショック”をはじめ、原材料価格が上昇した一方で、販売価格への転嫁は進まず、結果的に売上は増加したものの、利益は伸び悩んだものと考えられる。3カ月後(10-12月期)は売上DIが-3、経常利益DIが-6で、再びマイナス水準へ低下する見通し。
製・商品の在庫DI(-8→+3)は11ポイント上昇し、「過剰感」がでてきた。生産・営業用設備DI(-3→0)は3ポイント上昇。雇用人員DIは-12で前回(0)から12ポイント低下し、「不足感」がでてきた(図表3)。

設備投資実施は県全体を上回る

今回の調査期間(7-9月期)に設備投資を実施した(する予定)企業の割合は、湖東地域では60%で、前回調査(4-6月期)の59%より上昇し、県全体(49%)を上回った。
湖東地域の設備投資実施・予定(未確定を含む)の主な内容をみると、「車両の購入」「OA機器の購入」(いずれも33%)が最も高くなった。県全体では「生産・営業用設備の更新」(42%)が最も高くなっている(図表4)。
来期(10-12月期)に設備投資を実施する企業の割合は、湖東地域では47%に低下するも、県全体(42%)を上回る見通しである。

新型コロナで5割超が「マイナス影響」

特別項目として、新型コロナによる影響を調査した(第4回)。
企業活動への影響について、湖東地域は「マイナスの影響が出ている」が54%で、県全体(57%)を下回り、7地域中では甲賀地域(46%)、湖南地域(54%)に次いで3番目に低くなった。過去調査と比較すると、最も高かった第2回調査(20年7-9月期)の73%から19ポイント低下し、第1回調査(20年4-6月期:55%)の水準に近づいた(図表5)。

「ウィズ・コロナ」「アフター・コロナ」を見据えて、どのような企業戦略の見直しを行ったか(現在取組中も含む)たずねたところ(複数回答)、湖東地域は「生産体制の見直しや効率化」(40%)が最も高く、県全体(32%)を上回った(図表6)。次いで、「営業・販売体制の見直しや効率化」(37%)、「デジタルシフトの推進」(34%)となった。「デジタルシフトの推進」は7地域中で最も高く、次いで湖西地域(33%)、東近江地域(32%)が続いた。
自社の売上高がコロナ禍前の水準に回復する時期をたずねたところ、湖東地域は「わからない・見通せない」(37%)が最も高く、県全体(34%)をやや上回った。一方、「すでに回復している」も29%を占め、明暗が分かれている(図表7)。

【分析方法】DI(ディフュージョン・インデックス)

  • 質問の「プラスの選択肢(良い・増加・上昇)の 回答割合」から「マイナスの選択肢(悪い・減少・不足)の回答割合」を引いた指数。
  • 各項目の水準や方向性を示す。

寄稿:(株)しがぎん経済文化センター