彦根商工会議所では、今年度より会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施し、このほど第1四半期(令和3年4月~6月分)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員242社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。


調査方法:彦根商工会議所会員企業242社にメールまたはFAXによる
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:171社(回答率70.7%)
本調査でのDI:「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた数値

建設業製造業卸小売業飲食業サービス業合計
回答数3738392631171
業種別比率21.7%22.2%22.8%15.2%18.1%100.0%

※今期(前期比):令和3年1月~3月と比較した令和3年4月~6月の状況
※前年比:令和2年4月~6月と比較した令和3年4月~6月の状況
※来期:令和3年4月~6月と比較した令和3年7月~9月の見通し

総括的概要

  • 市内企業における今期の業況判断DIは▲16.3と前年比よりも悪化しているが、来期の業況判断DIについては▲10.6とマイナス幅が縮小する見通し。
  • 今期の売上高DIは▲11.2、採算DIは▲17.2と悪化傾向にあるものの、来期の売上高DIは0.6と好転、採算DIは▲8.5とマイナス幅が縮小する見通し。
  • 業種別の業況判断DIでは、サービス業が3.2の好転、製造業が0.0の不変の一方で、建設業、卸小売業、飲食業はいずれも▲20以上の悪化を示した。来期は、サービス業が▲6.7と悪化したものの、製造業が5.4と好転、建設業、卸小売業、飲食業は3~17ポイントマイナス幅を縮小する見通し。

1. 全体の景況等

今期は前年同期に比し「業況判断DI」は▲6.6とやや悪化を示した。「売上高DI」は3.5と好転を示したものの、「採算DI」は▲6.0と悪化傾向にある。前期比では、「業況判断DI」が▲16.3、「売上高DI」が▲11.2、「採算DI」が▲17.2とマイナス幅を拡大させたが、来期は「業況判断DI」が▲10.6、「売上高DI」が0.6、「採算DI」が▲8.5とマイナス幅が縮小する見通し。
経営上の問題点として1位に「需要の停滞」を挙げ、コロナ禍による売上減を問題とする企業が多くあった。
経営上の問題点2位は「原材料価格の上昇」、3位は「従業員の確保難」であった。


2. 業種別の景況等

建設業

今期は「業況判断DI」が▲26.5、「売上高DI」が▲37.8、「採算DI」が▲32.4といずれも悪化傾向にある。前年比の「業況判断DI」▲14.7、「売上高DI」▲18.9、「採算DI」▲30.6よりもさらに悪化の指数が増加した。これは、「仕入単価DI」が前年比で64.7、前期比で67.6を示すように、仕入単価の上昇が要因の一つと考えられる。来期の「仕入単価DI」は64.7と仕入単価上昇の継続が見込まれる。しかし「販売単価DI」は前年比では3.0、前期比で2.9とほぼ不変であったものが、来期は14.7で上昇傾向にある。来期の「業況判断DI」が▲9.1とやや悪化の見通しであったものの、「売上高DI」は2.7、「採算DI」は2.8と好転の見通し。
経営上の問題点は、1位「原材料価格の上昇」、2位「需要の停滞」、3位「原材料の不足」と、調査対象企業のほぼすべてが原材料の問題を挙げている。
「資金繰りDI」は前年比では▲11.1、前期比で▲5.6、来期は▲5.6であった。「従業員DI」は前年比では▲11.8で不足傾向、前期比で▲5.9。来期は▲20.6で不足が拡大する見通し。

(参考)調査対象企業のコメント

「公共工事へ地元業者をもっと使ってほしい」
「住宅関連工事に対する優遇制度、助成金等の支援拡充と増額をしてほしい」

製造業

前年比の「業況判断DI」は21.1、「売上高DI」は31.6、「採算DI」は31.6と、前年同期に比し今期は大きく好転した。今期の「業況判断DI」は0.0と不変、来期は5.4と今期よりもさらに好転の見通し。今期の「売上高DI」は10.5と好転、来期は13.5とさらに好転の見通し。今期の「採算DI」は2.6と好転傾向であったものの、来期は▲8.1とやや悪化の見通し。「仕入単価DI」は前年比で59.5、前期比で40.5、来期で55.6と仕入単価の上昇が採算を圧迫しているものの、「販売単価DI」が前年比で13.5、前期比で8.1、来期で5.6と上昇傾向にある。
経営上の問題点は、1位「原材料価格の上昇」、2位「需要の停滞」

(参考)調査対象企業のコメント

「原材料価格が高騰しているにもかかわらず製品値上げを認めない大手企業への対策強化を希望」

「資金繰りDI」は前年比では7.9、前期比で2.6、来期は▲2.7であった。「従業員DI」は前年比では▲18.4で不足傾向、前期比で▲21.1、来期は▲29.7であった。
経営上の問題点の3位は「従業員の確保難」であった。

卸小売業

「業況判断DI」は前年比で▲28.2、前期比で▲34.2、来期で▲25.0と厳しい状況が続く。「売上高DI」は前年比で▲10.3、前期比で▲31.6、来期で▲29.7、「採算DI」は前年比で▲18.4、前期比で▲35.1、来期で▲27.8と、昨年同期よりも厳しい状況にあり、来期も継続する見通し。「販売単価DI」は前年比で2.6、前期比で5.3、来期で0.0とほぼ不変であったものの、「仕入単価DI」は前年比で39.5、前期比で43.2、来期で44.4と上昇傾向を示しており採算を圧迫している。
経営上の問題点は、1位「需要の停滞」を挙げている。その他としてコロナ禍の影響による、イベント、展示会の中止、取引先の低迷、来店客数の減少を挙げる企業もあった。
経営上の問題点の2位は「経営ニーズの変化への対応」、3位「大企業の進出による競争の激化」を挙げている。

(参考)調査対象企業のコメント

「地場産業、地元業者の育成に目を向けてほしい」
「自治体、大学、企業がコラボした企画、特集を増やしてほしい」
「飲食・サービス・観光・運輸業者が元気になる何かを考えてほしい」

「資金繰りDI」は前年比で▲15.8、前期比で▲21.1、来期は▲16.7であった。「従業員DI」は前年比で▲5.3、前期比で▲13.5、来期で▲11.1で不足傾向が続く。

飲食業

「業況判断DI」は前年比で▲20.0、前期比で▲24.0、来期で▲20.8と悪化傾向が続いている。「売上高DI」は前年比では▲15.4であったが、前期比で0.0、来期は8.0と改善傾向にある。「採算DI」は前年比で▲36.0、前期比で▲26.9であったが、来期は▲8.3と18.6ポイントマイナス幅が縮小する見通し。「仕入単価DI」が前年比では30.8、前期比で30.8、来期で28.0と上昇傾向にあることが採算を圧迫しており、「販売単価DI」を前年比で4.0、前期比で4.0、来期で4.2と押し上げてきている。
経営上の問題点は、1位「需要の停滞」、2位「原材料価格の上昇」であった。その他の意見としてコロナ感染防止の為の席数の減少等コロナ禍の影響を挙げる企業があった。

(参考)調査対象企業のコメント

「店舗の感染防止対策状況や面積に応じて適切な収容人数での営業とするなど、納得性のある施策を実施してほしい」
「給付金、助成金を増加してほしい。支給の迅速化をしてほしい」

「資金繰りDI」は前年比では▲50.0、前期比で▲46.2、来期は▲44.0で、他業種に比して倍以上の困難な状況を示した。「従業員DI」は前年比で11.5、前期比で11.5と飲食業だけが過剰傾向であった。来期は▲16.0で不足になる見通し。
経営上の問題点の3位は「生産設備の不足・老朽化」であった。

(参考)調査対象企業のコメント

「設備導入時の補助金について、先に購入しなければならないが、購入資金の余裕がなく事業がすすめられない」

サービス業

「業況判断DI」は前年比で6.5、前期比で3.2、来期で▲6.7と来期の見通しでやや悪化に転じたもののほぼ不変。「売上高DI」は前年比で29.0、前期比で9.7、来期で12.9、「採算DI」は前年比で16.1、前期比で6.5、来期で0.0であった。「販売単価DI」は前年比で▲3.4、前期比で▲13.8とやや低下、「仕入単価DI」は前年比で11.1、前期比で7.4とやや上昇したものの、来期は「販売単価DI」「仕入単価DI」ともに0.0と不変であった。
経営上の問題点の1位は「需要の停滞」であった。その他の意見としてイベントの減少や団体観光客の急減などコロナ禍の影響による客数の減少を挙げる企業があった。

(参考)調査対象企業のコメント

「補助金や給付金の情報が届きづらく、具体的な申請方法もわかりづらく難しい」

「資金繰りDI」は前年比で▲16.7、前期比で▲13.8、来期で▲20.7と厳しい状況が続いている。「従業員DI」は前年比で▲13.8、前期比で▲10.3、来期で▲20.7と不足傾向が続く。
経営上の問題点2位は「従業員の確保難」、3位は「生産設備の不足・老朽化」であった。


3. 重点的に取り組もうとしていること、支援を求めたいこと(項目選択式)

「自社ブランドの強化・PR」をあげた企業が全体の40%と全業種を通じて多かった。