彦根商工会議所では、今年度より会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施し、このほど第2四半期(令和3年7月~9月分)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員242社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。


調査方法:彦根商工会議所会員企業242社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和3年7月~9月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:176社(回答率72.7%)

建設業製造業卸小売業飲食業サービス業合計
回答数3838383032176
業種別比率21.6%21.6%21.6%17.0%18.2%100.0%

※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和3年4月~6月と比較した令和3年7月~9月の状況
※昨年比:令和2年7月~9月と比較した令和3年7月~9月の状況
※次 期:令和3年7月~9月と比較した令和3年10月~12月の見通し

総括的概要

  • 市内企業における今期の業況判断DIは▲25.3と昨年比よりは改善しているものの、前回調査よりも悪化。次期の業況判断DIは▲11.6とマイナス幅が縮小する見通し。
  • 業種別の業況判断DIでは、製造業が8.1と好転したものの、サービス業▲9.4、建設業▲37.8、卸小売業▲34.2の悪化、飲食業は▲56.7の悪化を示した。次期は、製造業が2.8の好転、サービス業が不変、建設業、卸小売業はそれぞれ▲29.7、▲21.1と悪化もマイナス幅を縮小、飲食業は▲6.9と大きくマイナス幅を縮小する見通し。
  • 経営上の問題点「需要停滞」に「既存顧客との関係強化」、「生産設備の不足・老朽化」に「補助金等の活用」により対応した企業が多かった。「原材料価格上昇」に建設業、製造業は「販売価格転嫁」、飲食業は「商品の検討」により対応した。

1. 全体の景況等

今期は昨年同期に比し「業況判断DI(好転-悪化)」は▲30.1、「売上高DI(好転-悪化)」は▲19.3、「採算DI(好転-悪化)」は▲28.0とすべて悪化。前期比では、「業況判断DI」が▲25.3、「売上高DI」が▲16.5、「採算DI」が▲22.3とマイナス幅を縮小させたものの、前回調査よりも悪化した。次期は「業況判断DI」が▲11.6、「売上高DI」が1.7、「採算DI」が▲10.4とマイナス幅が縮小する見通し。

前回調査時、経営上の問題点として1位に挙げられた「需要の停滞」の改善策として、「既存顧客との関係強化」(29.0%)、「新規顧客開拓」(21.0%)を挙げる企業が多かった。
経営上の問題点2位の「原材料価格の上昇」の改善策は、「販売価格転嫁」(27.3%)が最も多く、次いで「商品の検討」(22.7%)、「仕入先の検討」(18.8%)の順。
経営上の問題点3位「従業員の確保難」の改善策は「労働環境の整備」(13.1%)、「企業の魅力強化」(11.4%)、「人材斡旋業者等の活用」(9.1%)、「給与の引上げ」(8.5%)と様々な対応も「対応できていない」が17.0%と最も多かった。
経営上の問題点4位「生産設備の不足・老朽化」には「補助金等の活用」が26.7%、経営上の問題点5位「大企業進出による競争激化」には「対応できていない」が19.9%と最も多かった。
問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関としては、商工会議所(22.2%)、金融機関(21.6%)、士業(税理士等)(14.2%)、公的支援機関(11.4%)、同業者(6.3%)であった。

2. 業種別の景況等

建設業

今期は「業況判断DI」は▲37.8と前回調査より11ポイント悪化したものの、「売上高DI」が▲18.4と19ポイント改善、「採算DI」が▲15.8と17ポイント改善した。昨年比の「業況判断DI」▲38.9、「売上高DI」▲26.3、「採算DI」▲21.1よりもマイナス幅を縮小した。「仕入単価DI」が昨年比で73.0、前期比で71.1と前回調査よりも上昇している。次期の「仕入単価DI」は62.2と仕入単価上昇の継続が見込まれる。「販売単価DI」は昨年比では2.7、前期比で5.3、次期は5.4と不変が継続している。次期の「業況判断DI」は▲29.7、「売上高DI」は▲18.4、「採算DI」は▲18.4と厳しい状況が続く。
「需要停滞」の改善策として、36.8%が「既存顧客との関係強化」を挙げた。
「資金繰りDI」は昨年比では▲7.9、前期比で▲10.5、次期は▲10.8であった。「従業員DI」は昨年比では▲21.1で不足傾向、前期比で▲21.1、次期は▲21.6で前回調査時よりも不足傾向にある。

(参考)調査対象企業のコメント

「公共工事等の入札にあっては価格だけでなく内容も重視してほしい」
「公共工事等、仕入単価の上昇が販売単価に反映されるまで時間がかかりすぎる」
「補助金の審査から支給されるまで時間がかかりすぎる」

製造業

昨年比の「業況判断DI」は▲8.1とやや悪化を示したものの、「売上高DI」は13.2、「採算DI」は5.4と好転した。今期の「業況判断DI」は8.1、次期は2.8と好転が継続する見通し。今期の「売上高DI」は15.8と好転、次期は21.1とさらに好転の見通し。今期の「採算DI」は8.1、次期は16.2とさらに好転する見通しとなっている。「仕入単価DI」は昨年比で73.7、前期比で73.7、次期で65.8と仕入単価がさらに上昇傾向にあるものの、「販売単価DI」が昨年比で26.3、前期比で23.7、次期で26.3と上昇局面に入った。
「原材料価格の上昇」に対しては47.4%が「販売価格転嫁」により対処していると回答した。「需要の停滞」に対しては、31.6%が「新規顧客開拓」同じく31.6%「既存顧客との関係強化」により対処していると回答した。
「資金繰りDI」は昨年比では0.0、前期比で5.3、次期は0.0と不変であった。「従業員DI」は昨年比では▲18.4、前期比で▲24.3、次期で▲21.1と不足傾向が続く見通し。

(参考)調査対象企業のコメント

「材料価格高騰で苦境にある下請業者へ、販売価格転嫁しやすくする法整備を」
「半導体不足の影響で機械部品の仕入が困難になり業務に支障をきたしている」
「補助金申請してから採択、交付決定までに時間がかかりすぎるため、事業の実行スピードがダウンする」
「補助金の情報をまとめて定期的に提供してほしい」

卸小売業

「業況判断DI」は昨年比で▲36.8、前期比で▲34.2、次期で▲21.1と厳しい状況が続く。「売上高DI」は昨年比で▲26.3、前期比で▲31.6であったが、次期で▲7.9とマイナス幅が縮小する見通し。「採算DI」は昨年比で▲47.4、前期比で▲39.5、次期で▲23.7と、昨年同期よりもマイナス幅が縮小してきたものの厳しい状況にある。「仕入単価DI」は昨年比で44.7、前期比で36.8、次期で47.4と依然として上昇傾向を示しているものの「販売単価DI」は昨年比で▲2.6、前期比で2.6、次期で7.9と少しずつ上昇してきている。
「需要の停滞」に対して28.9%が「既存顧客との関係強化」により対処していると回答。「原材料価格上昇」に対しては50.0%が「販売価格転嫁」、26.3%が「商品の検討」により対処していると回答。「生産設備の不足・老朽化」に対しては26.3%が「補助金等の活用」により対処したと回答があったが、28.9%が「対応できていない」との回答であった。
「資金繰りDI」は昨年比で▲10.5、前期比で▲2.6、次期は▲2.6と前回調査と比してもマイナス幅が縮小した。「従業員DI」は昨年比で▲5.6、前期比で▲2.8、次期で▲2.8でほぼ不変であった。

(参考)調査対象企業のコメント

「公的機関は地域・市内業者を育成するため、優先して購入をすべき」
「補助金の種類、規定、提出物が煩雑なため、窓口の統一、手続きの簡素化をしてほしい」

飲食業

まん延防止等重点措置、緊急事態宣言発令による影響が大きかった。「業況判断DI」は昨年比で▲50.0、前期比で▲56.7、「売上高DI」は昨年比で▲53.3、前期比で▲53.3、「採算DI」は昨年比で▲63.3、前期比で▲53.3と前回調査に比しても27ポイントマイナス幅が拡大した。次期については「業況判断DI」が▲6.9、「売上高DI」が3.4、「採算DI」が▲14.3と大幅にマイナス幅が縮小する見通し。「仕入単価DI」が昨年比では40.0、前期比で43.3、次期で42.9と依然上昇傾向にある。「販売単価DI」は前回調査では上昇傾向であったものが今回調査では、昨年比で▲13.3、前期比で▲23.3、次期で▲24.1と低下傾向にある。外出自粛の影響下で、宴会等の減少と弁当等テイクアウトの増加によるものと考えられる。
「需要の停滞」に対しては「新商品開発」(26.7%)、「原材料価格の上昇」に対しては、「商品の検討」(53.3%)したとの回答が最も多かった。
「資金繰りDI」は昨年比では▲40.0、前期比で▲43.3、次期は▲35.7で、前回調査よりもマイナス幅は縮小したものの困難な状況が続いている。「従業員DI」は昨年比で0.0、前期比で3.3と不変であったが、次期は▲24.1で不足になる見通し。
「生産設備の不足・老朽化」に対しては43.3%が「補助金等の活用」により対処したと回答があった。

(参考)調査対象企業のコメント

「コロナ禍支援金等の対応が遅すぎる」
「コロナ禍協力金の業態による不公平を是正してほしい」
「コロナ融資の返済時期を猶予してほしい」
「従業員確保難の現状において最低賃金上昇対応困難な事業者への支援をお願いしたい」
「大規模な景気対策をしてほしい」

サービス業

「業況判断DI」は昨年比で▲18.8、前期比で▲9.4、次期で0.0とマイナス幅は縮小していく見通し。「売上高DI」は昨年比で▲9.4も、前期比で0.0、次期で12.5と改善していく見通し。「採算DI」は昨年比で▲18.8、前期比で▲15.6、次期で▲12.5であった。「仕入単価DI」は昨年比で30.0、前期比で33.3、次期で30.0と上昇傾向が続く。「販売単価DI」は昨年比で▲23.3、前期比で▲6.7とやや低下するも次期は0.0と不変。
「需要の停滞」に対しては、「広告宣伝活動の強化」「既存顧客との関係強化」により対処したとの回答がそれぞれ25.0%と多かった。
「資金繰りDI」は昨年比で▲19.4、前期比で▲12.9、次期で▲12.9、「従業員DI」は昨年比で▲12.9、前期比で▲9.7、次期で▲12.9と、困難、不足状況が続くが、前回調査時よりもマイナス幅が縮小してきている。
「生産設備の不足・老朽化」に対しては31.3%が「補助金等の活用」により対処したと回答があった。

(参考)調査対象企業のコメント

「業種によってコロナ支援が受けられない。サービス業にも対応してほしい」
「従業員雇用が困難なため、新規採用に関する支援がほしい」