彦根商工会議所では、今年度より会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施し、このほど第4四半期(令和4年1〜3月期)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員242社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。


調査方法:彦根商工会議所会員企業242社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和4年1月~3月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:141社(回答率58.3%)

建設業製造業卸小売業飲食業サービス業合計
回答数2832322029141
業種別比率19.8%22.7%22.7%14.2%20.6%100.0%

※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和3年10月〜12月と比較した令和4年1月〜3月の状況
※昨年比:令和3年1月~3月と比較した令和4年1月~3月の状況
※次 期:令和4年1月~3月と比較した令和4年4月~6月の見通し

総括的概要

  • 市内企業における今期の業況判断 DIは▲25.0と前回調査よりも13ポイントマイナス幅が拡大したものの、次期の業況判断 DIは▲0.7とほぼ不変となる見通し。
  • 業種別の業況判断 DIでは、サービス業が▲34.5、製造業▲22.6と悪化に転じ、飲食業は▲42.1とマイナス幅を拡大。建設業▲17.9、卸小売業▲18.8はマイナス幅を縮小したものの悪化を示した。しかし次期は、飲食業が31.6と大きく好転する見通しとなり、サービス業も6.9と好転する見通しとなった。製造業、卸小売業も大きくマイナス幅を縮小する見通し。建設業はロシア・ウクライナ情勢の悪化による収益への影響が大きく、▲17.9の見通し。

1. 全体の景況等

今期の「業況判断DI(好転−悪化)」は▲25.0、「採算 DI(好転−悪化)」は▲26.6、「売上高 DI(好転−悪化)」は▲35.3 と、いずれも前回調査よりも大きくマイナス幅を拡大し、緊急事態宣言下にあった前々回調査以上に悪化した。次期は、「業況判断DI」が▲0.7、「採算DI」が▲1.4、「売上高 DI」が2.1と大きくマイナス幅を縮小する見通しとなった。
「仕入単価DI(上昇−低下)」は昨年比で 64.5、前期比で 60.7と前回調査時よりもさらに上昇し、次期で 68.8 と上昇は継続する見通し。「販売単価DI(上昇−低下)」は昨年比で14.9、前期比で 17.1、次期で 22.7 と上昇を示した。
「資金繰りDI(容易−困難)」は昨年比で▲11.5、前期比で▲10.0、次期で▲5.0と、マイナス幅は縮小しているものの困難な状況が継続している。「従業員DI(過剰−不足)」は昨年比で▲18.6、前期比で▲17.1、次期は▲24.3と不足傾向が継続する見通し。
「環境変化」による収益への影響として、「新型コロナウィルス感染症の感染拡大」により収益が減少すると回答した企業は全体の 63.8%であった一方、「新型コロナウィルス感染症の感染鎮静化」により収益が増加するとは言えない(収益が不変又は減少)が 70.9%であった。「ロシア・ウクライナ情勢の悪化」による収益の減少は 48.2%と「円安の進行」38.8%よりも影響が大きかった。

2. 業種別の景況等

建設業

今期の「売上高DI」は▲28.6、「採算DI」は▲17.9とややマイナス幅を拡大したものの、「業況判断DI」は▲17.9 と前回調査より13ポイントマイナス幅を縮小した。マイナス幅を拡大した業種が多い中、建設業が最もマイナス幅を縮小した。しかし次期は、他の業種がマイナス幅を縮小または好転する中にあって、建設業は「売上高DI」は▲25.0と今期に比しマイナス幅が縮小する見通しとなったものの、「業況判断DI」は▲17.9と不変、「採算DI」は▲21.4とマイナス幅を拡大する見通しとなった。
「仕入単価DI」は昨年比で 75.0、前期比で 71.4、次期は 78.6 と仕入単価の上昇が継続すると見込まれる。「販売単価DI」は昨年比で 28.6、前期比で 25.0、次期は 28.6と上昇局面に入った。
「資金繰りDI」は昨年比で▲25.0、前期比で▲14.3、次期は▲17.9と困難な状況が継続する見通し。「従業員DI」は昨年比で▲32.1、前期比で▲35.7、次期で▲39.3と不足傾向が継続する見通し。
「環境変化」による収益への影響は「ロシア・ウクライナ情勢の悪化」による収益の減少が 71.4%と、「新型コロナウィルス感染症の感染拡大」による収益の減少 57.1%よりも影響が大きかった。

(参考)「環境変化」に対して、講じている(講じる予定の)対策

仕入ルートの多様化 / 在庫を減らし必要最小限の仕入れにする / 全体会議を集合型からオンライン型に変更 / ホームページの充実 / 将来性のある部門へ投資

製造業

前回調査まで好転しているとの回答が多かったが、今期の「業況判断 DI」は▲22.6、「売上高DI」は▲34.4、「採算DI」は▲18.8と大きく悪化した。
「仕入単価DI」が昨年比 75.0、前期比 68.8、次期 71.9と上昇傾向が継続している一方、「販売単価DI」は昨年比 25.0、前期比 21.9と価格転嫁が進まなかった。しかし、次期の「販売単価DI」は 40.6とプラス幅を大きく拡大する見通し。
次期の「業況判断DI」は▲6.3、「売上高DI」は▲9.4、「採算DI」は▲12.5と、今期に比しいずれの数値も大きくマイナス幅を縮小する見通し。
「資金繰りDI」は昨年比で▲9.7、前期比で▲6.5、次期は▲9.4、「従業員DI」は昨年比で▲12.5、前期比で▲15.6、次期で▲18.8と不足傾向が継続する見通し。
「環境変化」による収益への影響は、「新型コロナウィルス感染症の感染拡大」による収益の減少は 46.9%。「ロシア・ウクライナ情勢の悪化」および「円安の進行」による収益の減少はともに 40.6%であった。

(参考)「環境変化」に対して、講じている(講じる予定の)対策

的確な情報の入手 / 商品単価の引上げ / 販売単価の見直し / 定価の改定 / 値上交渉、契約の見直し / 仕入先との交渉 / 仕入先、仕入国の見直し / 生産効率の見直し、改善 / BtoC(一般消費者向け)事業の拡大 / 販売促進の強化と継続 / インターネットでの販路開拓、強化 / コロナ回復後の店頭販売の強化 / 金融機関への融資交渉 / 公的補助金の活用

卸小売業

今期の「業況判断DI」は▲18.8 と前回調査より5ポイントマイナス幅を縮小したものの、「売上高DI」は▲29.0と20ポイントマイナス幅を拡大した。「採算DI」は▲22.6と14ポイントマイナス幅を縮小した。次期の「業況判断DI」は▲6.3、「採算DI」は▲3.1、「売上高DI」は12.5と大きく好転する見通しとなった。
「仕入単価DI」は昨年比で 65.6、前期比で 65.6、次期で84.4と上昇傾向が継続している一方、「販売単価DI」は昨年比で15.6、前期比で21.9、次期で25.0と上昇してきているものの仕入単価の上昇を転嫁し切れていない。
「資金繰りDI」は昨年比で▲9.4、前期比で▲12.5、次期は▲3.1。「従業員DI」は昨年比で▲6.5、前期比で▲3.2、次期で▲9.7 でやや不足傾向。
「環境変化」による収益への影響は、「インターネットの普及等によるデジタル化」による収益の増加が 33.3%と全業種中最も多かった。一方収益の減少は 20.0%あり、デジタル化に対応できているかどうかが収益の増減に影響していると考えられる。

(参考)「環境変化」に対して、講じている(講じる予定の)対策

ECサイト(通信販売用ホームページ)の強化 / インターネット販売の開始、強化 / 商品開発 / ブランド力向上 / 取引先へ商品の安定供給 / 取扱商品の拡大 / 商品の値上げ / 時代と環境の変化に対応した商品の提案 / 体制整備(人員増強・ビジネス構造改革)/ 社員教育による企画力、提案力、プレゼン力の強化 / 物品備蓄 / 早めの発注 / 輸入品から国内産品への切り替え / 新規出店 / 公的機関の補助制度の活用

飲食業

前回調査において20ポイント以上マイナス幅を縮小したが、今期の「業況判断 DI」は▲35.0 と前回調査より8ポイントマイナス幅を拡大、「売上高DI」は▲50.0と41ポイントマイナス幅を拡大、「採算DI」は▲50.0と41ポイントマイナス幅を拡大した。しかし次期については「業況判断DI」が31.6、「売上高DI」が25.0、「採算DI」が15.0と好転する見通しとなった。
「仕入単価DI」が昨年比では80.0、前期比で70.0、次期で80.0とほぼすべての事業者が上昇。「販売単価DI」は昨年比で▲5.0、前期比で▲5.0、次期で0.0と不変の見込みとなった。
「資金繰りDI」は昨年比では▲21.1、前期比で▲15.0とマイナスであったものの、次期は5.3とプラスに転じた。「従業員DI」は昨年比▲15.0。前期比では▲5.0と前回調査に比し14ポイントマイナス幅を縮小した。次期では▲15.0で不足傾向は続く見通し。
「環境変化」による収益への影響は、「新型コロナウィルス感染症の感染拡大」による影響は95.0%の企業が収益減少と回答している。しかし「新型コロナウィルス感染症の感染沈静化」により40.0%が収益増加と回答しておりサービス業に次いで高い率となっている。
「ロシア・ウクライナ情勢の悪化」については63.2%が収益減少。「円安の進行」による収益減少は52.6%であった。「インターネットの普及等によるデジタル化」による収益の増加は5.3%と全業種中最も低く、収益の減少は21.1%と最も高い率となっている。

(参考)「環境変化」に対して、講じている(講じる予定の)対策

インターネット予約の拡大 / インスタグラム等SNSの活用 / 商品の値上げ / 夜営業中心から昼営業への転換 / テイクアウト、デリバリーへの対応拡大 / 公的補助金の活用

サービス業

前回調査時に好転したとの回答が多かったが、今期の「業況判断DI」は▲34.5、「売上高DI」は▲39.3、「採算DI」は▲32.1と大きく悪化した。しかし次期には「業況判断DI」が6.9、「売上高DI」が13.8、「採算DI」が20.7といずれも好転する見通しとなった。
「仕入単価DI」は昨年比で31.0、前期比で28.6、次期で31.0と、サービス業でも上昇に転じた。「販売単価DI」は昨年比で3.4、前期比で14.3、次期は10.3と仕入単価ほどの上昇は見られない。
「資金繰りDI」は昨年比で3.4、前期比で▲3.4、次期で3.4とほぼ不変で、前回調査時よりも10ポイントマイナス幅を縮小した。「従業員DI」は昨年比で▲27.6、前期比で▲24.1、次期で▲37.9と、前回調査時よりもマイナス幅が拡大してきている。
「環境変化」による収益への影響は、「新型コロナウィルス感染症の感染拡大」による影響は69.0%の企業が収益減少と回答している。しかし「新型コロナウィルス感染症の感染沈静化」により51.7%が収益増加と回答しており全業種中最も高い率となっている。「ロシア・ウクライナ情勢の悪化」は79.3%が収益不変、「円安の進行」は79.3%が収益不変と回答しており最も影響が少なかった。「インターネットの普及等によるデジタル化」による収益の増加は24.1%で、収益の減少は6.9%であった。

(参考)「環境変化」に対して、講じている(講じる予定の)対策

DXに向けた業務改善の推進 / インターネット販売の強化 / ホームページの充実 / SNSを使った顧客へのアプローチ / 自社の強みを活かし選ばれる工夫 / 顧客満足度の向上 / 消毒・換気等感染対策の充実 / 新商品の開発 / 商品の値上げ / 業務内容の見直し / 新規事業に対応するための設備更新 / SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)/ Instagram、LINE、Facebookなど、スマートホン等を使用し写真や文章などの情報を共有するサービス / DX(デジタルトランスフォーメーション)/ インターネットやデータベース、人工知能といったデジタル技術を使って社会や組織、ビジネスの仕組みそのものを変革すること