世界遺産を目指す彦根城(彦根市提供)

彦根市と滋賀県が共同で設置している彦根城世界遺産登録推進協議会は登録に必要な推薦書素案をはじめとする関係書類を作成。2024年の登録を目指し、6月28日付けで文化庁に送付した。
提出した書類は推薦書と包括的保存管理計画の素案。そのうち推薦書は世界遺産としての価値とそれを保護するために説明した文書のことで、素案の提出は2020年と2021年に続いて3回目となる。
世界遺産登録を目指す範囲は中堀より内側と埋木舎の特別史跡で、具体的な建造物および遺構は天守、櫓、藩主が過ごしていた表御殿跡、旧藩校の弘道館跡、槻御殿、玄宮園、重臣屋敷、埋木舎。
江戸時代の統治の特徴は、地方の政府である藩を組織していた大名が各地に配置され、領地を治めていた。大名は個別の領地を持っていた重臣を集め、組織を形成したうえで合議による政治を進めた。
彦根市などは、堀で区画された空間に大名と重臣が住み、政治と儀礼に必要な施設が整備されていた「隔絶した一体的な空間構造」と、城下町や周辺の村々から見えるように天守や櫓、石垣、堀が作られた「象徴的な形態」に着目。彦根城が当初の形態を維持し、保存されてきたことを強調している。
今回の推薦書素案ではこれまでの2回の素案と比べて、より分かりやすい表現に変更。更に井伊家が19世紀半ばまで維持し続け、明治時代以降も地域のシンボルとして保存され、彦根城が人々のより所として存在するのみならず、観光産業の柱として、または学校教育や生涯教育の舞台としても利用されている、と展開している。年内に英語訳版を作成する。
一方で、奈良の「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」も同様の推薦書素案を6月29日に文化庁へ提出しており、彦根城と競合になる。今後は文化庁の文化審議会での協議を経て、閣議決定を経た後に国内推薦が決まる見通しだが、今年6月に開催予定だったロシアでの世界遺産委員会が無期限延期になっており、その先行きは不透明な状況だ。