(株)滋賀銀行のシンクタンクである(株)しがぎん経済文化センタ-では、四半期ごとに「滋賀県内企業動向調査」を実施している。今回「2022年第2四半期(4-6月期)」の調査では、889社を対象に288社から回答を得た。このうち、湖東地域(彦根市・愛荘町・豊郷町・甲良町・多賀町)からの回答は30社だった。

「製造業」の景況感は2四半期ぶりのプラス水準

今回の調査期間(2022年4-6月期)での湖東地域の自社の業況判断DIは0で、前回(1-3月期)の▲21から21ポイントの大幅上昇となり、20年1-3月期以来、2年3か月(9四半期)ぶりのもちあいとなった。県全体(▲25→▲12)も13ポイントの大幅上昇となったものの依然マイナス水準で、湖東地域の水準は3四半期連続で県全体の水準を上回っている。
県内を地域別にみると、最も水準が高いのは湖西地域(▲36→+13)となり、次いで、湖東地域(▲21→0)となった。一方、大津地域(▲41→▲19)、南部地域(▲15→▲18)、甲賀地域(▲24→▲18)、東近江地域(▲24→▲13)、湖北地域(▲19→▲3)の5地域は依然としてマイナス水準が続いている。(図表1、図表2)。

湖東地域の業況判断DIを業種別にみると、製造業は+8で前回の0から8ポイント上昇し2四半期ぶりのプラス水準となった。一方、非製造業は▲6で前回の▲32から26ポイントの大幅上昇となったものの、依然としてマイナス水準が続いている。製造業(+8)は県全体(▲2)を10ポイント上回り、非製造業(▲6)も県全体(▲20)を14ポイント上回っている(図表3)。
湖東地域の業況判断の個別コメントをみると、「新型コロナに伴う行動規制が全て解除されたことにより、集客が安定してきた」(サービス)、「主要先以外での売上増加が寄与し、売上高が前年対比14%増加した」(金属製品)、「自動車以外は製造業全般が活況で20%増収」(鉄鋼)など、プラスのコメントがみられた。一方、「ウッドショックやロシアのウクライナ侵攻等により、全般に仕入コストが上昇し、経常利益が減少した」(卸売)、「資材の値上がりの影響」(その他の製造業、建設)など、物価高騰に関連するマイナスのコメントがみられた。
3カ月後(7-9月期)は14ポイント低下の▲14となる見通しで、製造業(+8→▲8)は16ポイント低下し、非製造業(▲6→▲18)も12ポイントの低下が見込まれている。県内の他地域では、湖西地域は横ばいでプラス水準を維持し、甲賀地域はマイナス幅が縮小するが、その他の地域ではマイナス幅が拡大する見通しである。(図表2、図表3)。

仕入価格DIは過去2番目の高水準

湖東地域のその他のDI項目をみると、売上DI(▲3→+23)は26ポイントの大幅上昇、経常利益DI(+3→▲3)は6ポイント低下、販売価格DI(+22→+32)は10ポイントの大幅上昇。特に仕入価格DI(+81→+79)は2ポイントの低下となったものの、15年の現行での調査開始以来、最高水準となった前回に次ぐ高水準となっている。これは、原材料や仕入商品などの価格急騰の影響とみられる。製・商品の在庫DI(+10→▲7)は17ポイント低下し「不足」に転じ、生産・営業用設備DI(▲3→▲7)は4ポイント低下し「不足感」が強まった。また、雇用人員DI(▲27→▲33)も6ポイント低下し「不足感」が一層強まった(図表3)。
3カ月後は、売上DI(+23→+11)と経常利益DI(▲3→▲23)がいずれも低下、販売価格DI(+32→+43)が大幅上昇し、仕入価格DI(+79→+86)も一層の高水準が見込まれる。
ウクライナ危機の長期化と急速に進む円安の影響で、一段の物価高騰が景気の下押し要因になることが心配される。

設備投資実施割合は2四半期連続で県全体を上回る

今回の調査期間(4-6月期)に設備投資を実施した(する予定)企業の割合は、湖東地域では53%で、前回調査(1-3月期)から3ポイント上昇し、県全体(45%)を2四半期連続で上回った。
湖東地域の設備投資実施・予定(未確定を含む)の主な内容をみると、「生産・営業用設備の新規導入」(47%)が最も高く、次いで「OA機器の購入」(32%)となった(図表4)。
来期(7-9月期)に設備投資を実施する企業の割合は、湖東地域では50%と若干低下するが、引き続き県全体(42%)を上回る見通しである。

【分析方法】DI(ディフュージョン・インデックス)

  • 質問の「増加(かなり良い・やや良い・上昇・過剰等)」の回答割合から「減少(かなり悪い・やや悪い・低下・不足等)の回答割合を引いた指数を採用。
  • 各項目の水準や方向性を示す。

寄稿:(株)しがぎん経済文化センター