彦根商工会議所では、会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施しております。このほど第5四半期(令和4年4〜6月期)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員200社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。
調査方法:彦根商工会議所会員企業200社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和4年4月~6月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:140社(回答率70.0%)
建設業 | 製造業 | 卸小売業 | 飲食業 | サービス業 | 合計 | |
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回答数 | 29 | 29 | 29 | 22 | 31 | 140 |
業種別比率 | 20.7% | 20.7% | 20.7% | 15.7% | 22.2% | 100.0% |
※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和4年1月~3月と比較した令和4年4月~6月の状況
※昨年比:令和3年4月~6月と比較した令和4年4月~6月の状況
※次期:令和4年4月~6月と比較した令和4年7月~9月の見通し
総括的概要
- 市内企業における今期の業況判断DIは2.9と調査開始以後初めて好転が悪化を上回った。サービス業が32.3、飲食業が22.7、製造業が3.4と大きくプラスに転じたことが要因である。一方、卸小売業が▲24.1、建設業が▲17.2とマイナス幅を拡大した。
- 次期の業況判断DIは▲8,6とやや悪化の見通しも業種別には、卸小売業と建設業はそれぞれ▲24.1、▲20.7と悪化が継続する一方、サービス業と製造業はそれぞれ12.9、6.9と好転が継続する見通しとなり、業種による差が拡大している。飲食業の次期業況判断DIは▲22.7と悪化の見通しも、売上高は18.2、採算は9.1と好転の見通し。
- 市内企業における今期の売上高DIは12.9、採算DIは1.4といずれも好転が悪化を上回っており、管内の景況が全体としては上昇傾向にある。
1. 全体の景況等
今期の「業況判断DI(好転-悪化)」は2.9、「採算DI(好転-悪化)」は1.4、「売上高DI(好転-悪化)」は12.9と、いずれも好転が悪化を上回った。次期は、「業況判断DI」が▲8.6、「採算DI」が▲2.9、「売上高DI」が▲1.4とほぼ今期と変わらない見通しとなった。
業種別にみると、サービス業、飲食業の「業況判断DI」が大きく好転したものの、卸小売業、建設業は依然厳しい状況にあるが、建設業については「売上高DI」は好転を示し、「採算DI」もマイナス幅を大きく縮小してきている。
「仕入単価DI(上昇-低下)」は昨年比で72.7、前期比で71.2と前回調査時よりもさらに上昇し、次期で69.1と上昇は継続する見通し。「販売単価DI(上昇-低下)」は昨年比で25.2、前期比で22.3、次期で27.5と、継続的な上昇を示した。
「資金繰りDI(容易-困難)」は昨年比で▲6.4、前期比で▲5.0、次期で▲8.6と困難な状況が継続している。「従業員DI(過剰-不足)」は昨年比で▲14.6、前期比で▲13.8、次期は▲19.6と不足傾向が継続する見通し。
今期に直面した経営上の問題点は、「原材料価格の上昇」を挙げた企業が最も多く71.4%、次いで「原材料・人件費以外の経費の増加」42.9%、「従業員の確保難」32.1%、コロナ禍の影響が大きいと思われる「顧客の減少」は30.0%であった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、「販売価格の見直し」が36.4%と最も多く、次いで「積極的な人材採用・活用」30.7%、「社員の育成」28.6%、「公的補助金・支援金の活用」28.6%であった。
2. 業種別の景況等
建設業
今期の「売上高DI」は13.8と調査開始後初めて好転が悪化を上回り、「採算DI」は▲6.9と前回調査に比し大きくマイナス幅を縮小した。しかし、「業況判断DI」は▲17.2と依然厳しい状況にあり、次期は、「売上高DI」は▲31.0、「採算DI」は▲31.0、「業況判断DI」は▲20.7とマイナス幅を大きく拡大する見通しとなった。
「仕入単価DI」は昨年比で89.7、前期比で86.2、次期は86.2と多くの事業者で仕入単価が上昇する見通し。「販売単価DI」は昨年比で24.1、前期比で27.6、次期は27.6と上昇が継続する見通し。
「資金繰りDI」は昨年比で▲3.4、前期比で▲3.4、次期は▲10.3と困難な状況が継続する見通し。「従業員DI」は昨年比で▲20.7、前期比で▲20.7、次期で▲27.6と不足傾向が継続する見通し。
今期に直面した経営上の問題点は、「原材料価格の上昇」82.8%をほとんどの企業が挙げた。次いで「原材料の不足」48.3%、「従業員の確保難」34.5%、「原材料・人件費以外の経費の増加」34.5%であった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、「社員の育成」が34.5%と最も多く、次いで「積極的な人材採用・活用」31.0%、「公的補助金・支援金の活用」31.0%、「資金調達・資金繰り改善」27.6%であった。
製造業
今期の「業況判断DI」は3.4と好転が悪化を上回った。「売上高DI」は▲6.9、「採算DI」は▲6.9と大きくマイナス幅を縮小した。次期は「業況判断DI」が6.9、「売上高DI」が3.4、「採算DI」が3.4と、好転が悪化をさらに上回る見通しとなった。
「仕入単価DI」が昨年比89.7、前期比86.2、次期75.9と多くの事業者で仕入単価が上昇する見通し。一方、「販売単価DI」は昨年比34.5、前期比31.0と価格転嫁が進んでおり、次期の「販売単価DI」は44.8とプラス幅を大きく拡大する見通し。
「資金繰りDI」は昨年比で3.4、前期比で3.4と容易が困難を上回った。次期は0.0と不変の見通し。「従業員DI」については昨年比で▲10.3、前期比で▲3.4、次期で▲10.3と不足傾向が継続する見通し。
今期に直面した経営上の問題点は、「原材料価格の上昇」79.3%をほとんどの企業が挙げた。次いで「原材料・人件費以外の経費の増加」41.4%、「従業員の確保難」37.9%、「原材料の不足」31.0%であった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、「積極的な人材採用・活用」が37.9%と最も多く、次いで「自社ブランドの強化・PR」31.0%、「生産性向上の為の設備投資」27.6%、「新分野・異業種への進出」27.6%であった。
(その他意見)
- インフラの整備を促進してほしい
- 補助金の申請から採択までの時間を短縮してほしい
- 彦根ブランドを強化し、他市町村へ全国へPRしていってほしい
- 市民が市内の店で買い、店が市内の事業者から仕入れるように、市内での経済循環をしてほしい
卸小売業
今期の「業況判断DI」は▲24.1、「売上高DI」は▲17.2、「採算DI」は▲31.0と他業種について回復が見られる中にあって依然厳しい状況が続いている。次期の「業況判断DI」は▲24.1、「採算DI」は▲13.8、「売上高DI」は▲13.8とマイナスが継続する見通し。
「仕入単価DI」は昨年比で75.9、前期比で69.0、次期で65.5と上昇傾向が継続している一方、「販売単価DI」は昨年比で24.1、前期比で13.8、次期で20.7と上昇してきているものの仕入単価の上昇を未だ転嫁し切れていない。
「資金繰りDI」は昨年比で▲6.9、前期比で▲3.4、次期は▲10.3と困難な状況が継続。「従業員DI」は昨年比で0.0、前期比で▲10.7、次期で▲10.7でやや不足傾向。
今期に直面した経営上の問題点は、「原材料価格の上昇」を挙げた企業が最も多く69.0%、次いで「原材料・人件費以外の経費の増加」44.8%、「顧客の減少」37.9%であった。また「経営者・従業員の高齢化」を挙げた企業が34.5%と全業種中最も高かった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、「販売価格の見直し」が41.4%と最も多く、次いで「積極的な人材採用・活用」「資金調達・資金繰り改善」「既存顧客との関係強化」「SNSの活用を通じた販路拡大」「自社ブランドの強化・PR」が27.6%であった。
(その他意見)
- コロナ融資の返済猶予期間を延長してほしい
- 物価上昇に対する対策をしてほしい
飲食業
今期の「業況判断DI」は22.7と調査開始後初めて好転が悪化を上回った。「売上高DI」は40.9、「採算DI」は27.3と大きく好転した。次期の「業況判断DI」が▲22.7と不安要素はあるものの、「売上高DI」が18.2、「採算DI」が9.1と好転する見通しとなった。
「仕入単価DI」が昨年比では77.3、前期比で81.8、次期で77.3と継続して上昇しているが、「販売単価DI」は昨年比で31.8、前期比で18.2と仕入単価の上昇を販売単価への転嫁が始まっている。次期で23.8とさらに転嫁が進む見通しとなった。
「資金繰りDI」は昨年比では▲27.3、前期比で▲27.3、次期で▲31.8と困難な状況は継続する見通し。「従業員DI」は昨年比▲27.3、前期比で▲18.2、次期で▲18.2と不足傾向が続く見通し。
今期に直面した経営上の問題点に「顧客の減少」を挙げた企業が63.6%と他業種に比し非常に高い割合を示した。しかしそれよりも「原材料価格の上昇」を挙げた企業が95.5%と最も高く、ほぼすべての企業が問題点として挙げた。また、「原材料・人件費以外の経費の増加」も68.2%と高い。次いで「人件費の増加」40.9%、「販売価格への転嫁」40.9%、「従業員の確保難」31.8%であった。
「原材料価格の上昇」「原材料・人件費以外の経費の増加」「顧客の減少」「人件費の増加」「販売価格への転嫁」「取引条件の悪化」「金利負担の増加」を問題点として挙げた企業の割合は、いずれも飲食業が最も多かった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、「販売価格の見直し」が最も多く68.2%の企業が挙げた。次いで「新商品・新製品の開発」54.5%、「既存顧客との関係強化」40.9%と、売上に対する取り組みと支援を求めている。「公的補助金・支援金の活用」は36.4%であった。
(その他意見)
- コロナ禍まん延時には、他府県同様早期に感染防止協力金の支援金支給をしてほしい
- 積極的に事業者の置かれた状況の把握を行い、対策を俊敏にしてほしい
サービス業
今期の「業況判断DI」は32.3、「売上高DI」は38.7、「採算DI」は29.0と大きく好転した。次期についても「業況判断DI」が12.9、「売上高DI」が19.4、「採算DI」が19.4といずれも好転する見通しとなった。
「仕入単価DI」は昨年比で33.3、前期比で36.7、次期で43.3と上昇が継続する見通し。「販売単価DI」は昨年比で13.3、前期比で20.0、次期は20.0と少しずつ転嫁が始まっている。
「資金繰りDI」は昨年比で▲3.2、前期比で0.0、次期で3.2とほぼ不変。「従業員DI」は昨年比で▲16.7、前期比で▲16.7と前回調査時よりも今期はマイナス幅が縮小したものの、次期は▲30.0と不足する状況は継続する見通し。
今期に直面した経営上の問題点は、「顧客の減少」と「原材料価格の上昇」を挙げた企業が最も多くともに38.7%、次いで「従業員の確保難」と「原材料・人件費以外の経費の増加」がともに32.3%であった。
重点的に取り組もうとしていることで支援を求めたいことは、「SNSの活用を通じた販路拡大」と「社員の育成」が41.9%と最も多く、次いで、「積極的な人材採用・活用」35.5%、「公的補助金・支援金の活用」32.3%、「販売価格の見直し」32.3%であった。
(その他意見)
- 閑散期における観光施策を積極的に実施してほしい
- 移住者受入優遇など少子高齢化に対する対策を行うべき
- SNS等広告宣伝費に対する補助金を設けてほしい