彦根商工会議所では、会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施しております。このほど第6四半期(令和4年7〜9月期)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員200社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。


調査方法:彦根商工会議所会員企業200社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和4年7月~9月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:143社(回答率71.5%)

建設業製造業卸小売業飲食業サービス業合計
回答数2229243137143
業種別比率15.4%20.3%16.8%21.7%25.8%100.0%

※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和4年4月~6月と比較した令和4年7月~9月の状況
※昨年比:令和3年7月~9月と比較した令和4年7月~9月の状況
※次期:令和4年7月~9月と比較した令和4年10月~12月の見通し

総括的概要

  • 市内企業における今期の業況判断DIは▲9.1と再び悪化に転じた。飲食業が前回調査の22.7から▲29.0に悪化した影響が大きい。
  • 次期の業況判断DIは7.0と好転の見通し。業種別には、製造業が31.0と好転の先導をとり、続いてサービス業19.4、今期▲25.0の卸小売業の次期は0.0と25ポイントマイナス幅を縮小、飲食業は▲9.7と悪化の傾向も19ポイントマイナス幅を縮小する見通し。建設業は▲13.6と悪化の見通しにある。
  • 市内企業における今期の売上高DIは6.3と好転も、仕入価格の上昇、資金繰り悪化の影響もあり、採算DIが▲10.6と悪化を示している。

1. 全体の景況等

今期の「売上高DI(好転-悪化)」は6.3と好転が悪化を上回ったものの「業況判断DI(好転-悪化)」は▲9.1、「採算DI(好転-悪化)」は▲10.6と悪化が上回った。次期は、「採算DI」は▲3.5と悪化が好転を上回ったものの、「業況判断DI」が7.0、「売上高DI」が15.5と好転が悪化を上回る見通しとなった。
業種別に「業況判断DI」をみると、飲食業が再び大きく悪化することとなった。卸小売業は依然厳しい状況にあるが次期は悪化への歯止めが見込まれている。
「仕入単価DI(上昇-低下)」は昨年比で78.3、前期比で69.2と高い水準で推移し、次期で67.6と上昇は継続する見通し。「販売単価DI(上昇-低下)」は昨年比で36.4、前期比で22.4、次期で33.8と、継続的な上昇を示した。
「資金繰りDI(容易-困難)」は昨年比で▲7.0、前期比で▲9.8、次期で▲9.2と困難な状況が継続している。「従業員DI(過剰-不足)」は昨年比で▲23.1、前期比で▲15.4、次期は▲16.2と不足傾向が継続する見通し。
「原材料価格上昇、原材料・人件費以外の経費(燃料等)の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は「販売価格の転嫁」が全業種に共通して多く60.1%、次いで「仕入先の検討」28.7%、「取扱商品の選定」25.2%であった。「従業員確保難」の問題解決にあたって取られた対応策は「待遇の改善(給与等)」23.8%、「企業の魅力強化」23.1%の一方「対応できていない」が25.2%、「問題ない」が31.5%であった。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたって取られた対応策は「既存顧客との関係強化」が42.0%と最も多く、次いで「新商品開発」29.4%であった。
「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」として、「金融機関」20.3%、「商工会議所」19.6%、「士業(税理士等)」14.0%の一方、「支援を受けていない」は38.5%であった。特に建設業、卸小売業、サービス業の約半分の事業者が支援を受けていないと回答しており、業種間格差が認められる。

2. 業種別の景況等

建設業

売上の増加は見られたものの業況は悪化を示し、公的支援をあまり受けられていないことから、仕入価格の上昇、従業員確保難に対策をとれず、困難な状況が継続している。
今期の「売上高DI」は4.5と好転を継続し、「採算DI」は▲4.5と前回調査よりもマイナス幅を縮小。「業況判断DI」も▲9.1と前回調査よりも8ポイントマイナス幅を縮小することとなった。しかし次期は、「売上高DI」は▲18.2、「採算DI」は▲31.8、「業況判断DI」は▲13.6とマイナス幅を大きく拡大する見通しとなっている。
「仕入単価DI」は昨年比で86.4、前期比で63.6、次期は68.2と上昇は続く。「販売単価DI」は昨年比で31.8、前期比で22.7、次期は22.7と上昇が継続する見通し。
「資金繰りDI」は昨年比で▲9.1、前期比で▲13.6、次期は▲18.2と困難な状況が継続する見通し。「従業員DI」は昨年比で▲27.3、前期比で▲18.2、次期で▲18.2と不足傾向が継続するもののマイナス幅は縮小してきている。
「原材料価格上昇、原材料・人件費以外の経費(燃料等)の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は「販売価格の転嫁」59.1%、「仕入先の検討」45.5%、「取扱商品の選定」31.8%であった。「従業員確保難」の問題解決にあたって取られた対応策は「対応できていない」が最も多く45.5%、「企業の魅力強化」27.3%、「待遇の改善(給与等)」22.7%であった。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたって取られた対応策は「既存顧客との関係強化」が36.4%と最も多かったが「対応できていない」も40.9%あった。
「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」として「支援を受けていない」が50.0%と全業種中最も多かった。

製造業

業況の好転が継続し、販売価格転嫁、既存顧客との関係強化により、次期はさらに好転する見通し。
今期の「業況判断DI」は0.0と不変。「売上高DI」は6.9と好転が悪化を上回った。「採算DI」は▲10.3とマイナスを継続した。しかし次期は「業況判断DI」が31.0、「売上高DI」が37.9と大きくプラス幅を拡大し、「採算DI」についても10.3と好転が悪化を上回る見通しとなった。
「仕入単価DI」は昨年比82.8、前期比72.4、次期62.1と上昇が継続している。「販売単価DI」についても昨年比44.8、前期比27.6、次期24.1と上昇が継続している。
「資金繰りDI」は昨年比6.9、前期比3.4、次期6.9と容易が困難を上回る状況が継続する見通し。「従業員DI」については昨年比▲17.2、前期比▲6.9、次期▲10.3と不足傾向が継続する見通し。
「原材料価格上昇、原材料・人件費以外の経費(燃料等)の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は「販売価格の転嫁」65.5%、「生産性向上」41.4%、「仕入先の検討」31.0%であった。「従業員確保難」の問題解決にあたって取られた対応策は「問題ない」が37.9%、「企業の魅力強化」31.0%、であった。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたって取られた対応策は「既存顧客との関係強化」が48.3%、「新商品開発」34.5%であった。
「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」として「商工会議所」20.7%、「金融機関」20.7%であった。

その他意見

  • 円安の影響による利益圧迫され始めているため、政府による円安への介入を希望する
  • 雇用調整助成金の期間延長を希望する
  • 中小企業へ負担を強いる企業の取り締まりをしてほしい
  • 公共物件の積算における物価上昇分の柔軟な対応
  • 現場責任者等の雇用の見通しが立たない
  • 卸小売業

    厳しい業況が継続しているが、販売価格の転嫁、販売チャネルの追加変更、広告宣伝の強化など様々な対策をとり、次期には好転する見通し。
    今期の「業況判断DI」は▲25.0と厳しい状況にあるが、「売上高DI」は前回調査よりもマイナス幅を13ポイント縮小し▲4.2、「採算DI」はマイナス幅を10ポイント縮小し▲20.8と大きく改善しつつある。次期の「業況判断DI」は0.0、「採算DI」は0.0、「売上高DI」は20.8と大きく好転する見通しとなった。
    「仕入単価DI」は昨年比で75.0、前期比で66.7、次期で70.8と上昇傾向が継続している。「販売単価DI」は昨年比で41.7、前期比で25.0、次期で45.8と上昇傾向が拡大してきている。
    「資金繰りDI」は昨年比で▲12.5、前期比で▲12.5、次期は▲8.3と困難な状況が継続。「従業員DI」は昨年比で▲25.0、前期比で▲25.0、次期で▲25.0と不足傾向。
    「原材料価格上昇、原材料・人件費以外の経費(燃料等)の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は「販売価格の転嫁」62.5%、「取扱商品の選定」33.3%、「在庫調整」33.3%であった。「従業員確保難」の問題解決にあたって取られた対応策は「問題ない」が50.0%であった。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたっては「既存顧客との関係強化」37.5%、「販売チャネルの追加・変更」37.5%、「新商品開発」29.2%、「広告宣伝の強化」29.2%と様々な対応策がとられた。
    「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」として「支援を受けていない」が45.8%であった。

    その他意見

    • 資金繰り対策に効果が出るような対策を検討してほしい
    • 現場の専門職人の育成支援

    飲食業

    厳しい業況が継続しており、販売価格の転嫁、仕入先の検討、顧客との関係強化など様々な対応をとってきているが、資金繰りは悪化しており好転の見通しにはまだ遠い。
    今期の「売上高DI」は▲3.2、「業況判断DI」は▲29.0、「採算DI」は▲31.0と悪化に転じた。次期の「売上高DI」は9.7と好転したものの、「業況判断DI」が▲9.7、「採算DI」が▲20.0と、今期に比しマイナス幅は大きく縮小する見通しではあるが、好転する見通しまでには至らない。
    「仕入単価DI」が昨年比では87.1、前期比で87.1、次期で90.3とさらに上昇してきている。「販売単価DI」は昨年比で38.7、前期比で19.4、次期で45.2と上昇が拡大していく見通しとなった。
    「資金繰りDI」は昨年比では▲25.8、前期比で▲32.3、次期で▲38.7とさらに困難になっていく見通し。「従業員DI」は昨年比▲22.6、前期比で▲9.7、次期で▲6.5と不足傾向が続く見通し。
    「原材料価格上昇、原材料・人件費以外の経費(燃料等)の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は「販売価格の転嫁」80.6%、「仕入先の検討」41.9%、「取扱商品の選定」32.3%であった。「従業員確保難」の問題解決にあたって取られた対応策は「待遇の改善(給与等)」が32.3%であった。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたっては「既存顧客との関係強化」48.4%、「新商品開発」38.7%、「広告宣伝の強化」35.5%と様々な対応策がとられた一方、「対応できていない」も32.3%あった。
    「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」は「商工会議所」が38.7%、「金融機関」が22.6%であった。

    その他意見

    • 居酒屋はコロナの影響で非常に苦しんでいる
    • キャッシュレス決済の増加に伴う手数料負担が増加している
    • 補助金、助成金に対してかかる税金や保険料の納付がつらい
    • コロナ禍の影響で来店客が戻らない
    • 食用油等の価格高騰が著しく、補助制度を導入してほしい
    • 国に「マスク不必要」「5類相当もしくはインフルエンザ並」の宣言をしてほしい

    サービス業

    原材料価格の上昇等の影響が比較的少なく、業況、売上高、採算ともに好転。次期も継続する見通し。
    今期の「業況判断DI」は10.8、「売上高DI」は21.6、「採算DI」は8.1と好転が悪化を上回る状況が継続している。次期についても「業況判断DI」が19.4、「売上高DI」が19.4、「採算DI」が13.9といずれも好転する見通しとなった。
    「仕入単価DI」は昨年比で64.9、前期比で56.8、次期で50.0と上昇が継続する見通し。「販売単価DI」についても昨年比で27.0、前期比で18.9、次期は30.6と上昇が継続する見通し。
    「資金繰りDI」は昨年比で2.7、前期比で2.7、次期で8.3と好転してきている。「従業員DI」は昨年比で▲24.3、前期比で▲18.9、次期は▲22.2と不足する状況は継続する見通し。
    「原材料価格上昇、原材料・人件費以外の経費(燃料等)の増加」の問題解決に当たって取られた対応策は「販売価格の転嫁」37.8%、「生産性の向上」27.0%、「取扱商品の選定」21.6%、「問題ない」21.6%であった。「従業員確保難」の問題解決にあたって取られた対応策は「待遇の改善(給与等)」27.0%、「企業の魅力強化」27.0%、「対応できていない」27.0%であった。「顧客(売上)の減少」の問題解決にあたっては「既存顧客との関係強化」37.8%、「新商品開発」32.4%、「広告宣伝の強化」24.3%、「販売チャネルの追加・変更」24.3%であった。
    「問題解決に当たり、支援を受けられた団体・機関」は「支援を受けていない」が48.6%であった。

    その他意見

    • 都市計画はもっと規制を緩和すべき
    • 経営幹部の育成支援
    • 最低賃金上昇に伴う小規模事業者への支援を
    • サービス業の売上拡大のためのアイデアや方策についてアドバイスを希望する
    • 電気、ガス、ガソリン価格上昇に対する支援を
    • 客単価が下がる一方で利益が出ない
    • プレミアム商品券など購入意欲のわく施策をしてほしい