彦根商工会議所では、会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施しております。このほど第7四半期(令和4年10〜12月期)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員200社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。


調査方法:彦根商工会議所会員企業200社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和4年10月~12月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:127社(回答率64.1%)

建設業製造業卸小売業飲食業サービス業合計
回答数2826232327127
業種別比率22.0%20.5%18.1%18.1%21.3%100.0%

※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和4年7月~9月と比較した令和4年10月~12月の状況
※昨年比:令和3年10月~12月と比較した令和4年10月~12月の状況
※次期:令和4年10月~12月と比較した令和5年1月~3月の見通し

総括的概要

  • 市内企業における業況判断DIは0.0と前回調査の▲9.1から改善した。飲食業、サービス業の業況改善の影響が大きい。次期の業況判断DIは▲20.5と再び悪化の見通し。
  • 市内企業における今期の売上高DIは15.7と好転。製造業、飲食業、サービス業で大きく好転した。採算DIは▲0.8と、前回調査から大きく改善してきた。
  • 原材料価格等の上昇を販売価格に転嫁できていないとした企業は12.6%と前年調査時の26.1%から半減し、転嫁が進んでいることがうかがえる。
  • 回答企業の63.8%が「経営の持続にかかる支援」を求めている。前年調査時に比べて「感染症対策にかかる支援」が減少し「DX(業務改善)にかかる支援」が増加した。

1. 全体の景況等

今期の「売上高DI(好転-悪化)」は15.7と前回調査よりも9ポイント好転、「業況判断DI(好転-悪化)」も0.0と9ポイント改善、「採算DI(好転-悪化)」は▲0.8と10ポイント改善した。しかし次期は、「売上高DI」は▲20.6、「業況判断DI」は▲20.5、「採算DI」は▲25.2といずれも悪化を示した。
業種別に「業況判断DI」をみると、飲食業、サービス業が大きく改善した。
「仕入単価DI(上昇-低下)」は昨年比で77.2、前期比で70.9と高い水準で推移しているが、次期は59.8と上昇は継続するものの少し沈静化の見通し。「販売単価DI(上昇-低下)」は昨年比で42.5、前期比で29.1、次期で29.1と、継続的な上昇を示した。原材料価格等の上昇を販売価格に「全て転嫁できている」又は「半分程度転嫁できている」とした事業者は、全体の42.5%と前年調査よりも21ポイント増加した。
「資金繰りDI(容易-困難)」は昨年比で▲3.9、前期比で▲3.9、次期で▲9.4と困難な状況が継続している。「従業員DI(過剰-不足)」は昨年比で▲18.1、前期比で▲16.5、次期は▲13.4と不足傾向が継続する見通し。従業員確保の為の待遇の改善として、「時間外労働の削減」に37.0%、「有給休暇の取得促進」に37.0%、「賃金の引き上げ」に38.6%の事業者が取り組んでおり、前年調査時より2~8ポイント増加している。
既存顧客との関係強化対策として、「商品・サービスの改良、改善、開発」はサービス業、製造業、飲食業、卸小売業で多く44.1%、「顧客情報の収集・管理」は建設業、製造業、卸小売業で多く32.3%、「SNSを通じた情報発信」はサービス業、飲食業、卸小売業で多く29.9%であった。
国・県・市などへの施策について「経営の持続にかかる支援」を要望する意見が63.8%と全業種に共通して高かった。「感染症対策にかかる支援」は9.4%と前年調査時より17ポイント減少した。

2. 業種別の景況等

建設業

売上高が3期ぶりに悪化に転じ、業況、採算ともに悪化を示している。経営の持続にかかる支援が強く求められている。
今期の「売上高DI」は▲28.6と3期ぶりに悪化に転じ、「採算DI」は▲10.7と前回調査よりもマイナス幅を拡大。「業況判断DI」も▲21.4と前回調査よりも12ポイントマイナス幅を拡大することとなった。次期は、「売上高DI」は▲25.9、「採算DI」は▲25.0、「業況判断DI」は▲17.9と悪化が続く見通し。
「仕入単価DI」は昨年比で78.6、前期比で67.9、次期は53.6と上昇は継続しているが、前期比に比し次期は14ポイントプラス幅が縮小する見通し。「販売単価DI」は昨年比で17.9、前期比で17.9、次期は14.3と上昇が継続する見通し。原材料価格等の上昇を販売価格に「全て転嫁できている」は3.6%であるが、「半分程度転嫁できている」は35.7%と前年調査時よりも8ポイント増加、「あまり転嫁できていない」は46.4%と15ポイント増加としており、少しずつ転嫁が始まっている。
「資金繰りDI」は昨年比で▲3.6、前期比で▲3.6、次期は▲14.3と困難な状況が継続する。「従業員DI」は昨年比で▲10.7、前期比で▲17.9、次期で▲17.9と不足傾向が継続する。従業員確保の為の待遇の改善は、「時間外労働の削減」に35.7%、「有給休暇の取得促進」に32.1%の事業者が取り組んでいる一方、「取り組んでいない」も46.4%あった。
既存顧客との関係強化対策として、「顧客情報の収集・管理」39.3%は全業種中最も多く、また、「取り組んでいない」50.0%も全業種中最も多かった。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が71.4%と他業種に比し要求する事業者の割合が高かった。

製造業

業況の好転が継続しており、商品・サービスの改良、改善、開発に積極的に取り組み、販売価格転嫁も浸透してきている。
今期の「売上高DI」は42.3と大きく好転し、「業況判断DI」は3.8と好転が悪化を上回った。「採算DI」は▲3.8と6ポイントマイナス幅を縮小した。しかし次期は「売上高DI」は▲11.5、「業況判断DI」は▲26.9、「採算DI」は▲19.2と悪化する見通しとなった。
「仕入単価DI」は昨年比84.6、前期比69.2、次期53.8と上昇は継続しているが、前期比に比し次期は15ポイントプラス幅が縮小する見通し。「販売単価DI」についても昨年比61.5、前期比26.9、次期26.9と上昇が継続している。原材料価格等の上昇を販売価格に「全て転嫁できている」は7.7%であるが、「半分程度転嫁できている」は46.2%と前年調査時よりも31ポイント増加、「あまり転嫁できていない」又は「転嫁できていない」は45.1%と23ポイント減少しており、転嫁が浸透してきている。
「資金繰りDI」は昨年比▲7.7、前期比▲7.7、次期▲7.7と2期ぶりに困難が容易を上回る見通し。「従業員DI」については昨年比▲15.4、前期比▲15.4、次期▲11.5と不足傾向が継続する見通し。従業員確保の為の待遇の改善は、前年調査時に取り組みが多かった「有給休暇の取得促進」は50.0%と9ポイント減少、「時間外労働の削減」は30.8%と10ポイント減少した一方、「賃金の引上げ」38.5%、「福利厚生の充実」26.9%、「事業所設備の改善」26.9%とそれぞれ12~16ポイント増加した。
既存顧客との関係強化対策として、「商品・サービスの改良、改善、開発」57.7%と過半数の事業者が取り組んでいる。他に「顧客情報の収集・管理」38.5%であった。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が61.5%。「DX(業務改善)にかかる支援」は42.3%と他業種に比し最も多く前年調査時よりも5ポイント増加した。他には「事業変革・再構築にかかる支援」38.5%、「雇用対策にかかる支援」34.6%。

その他意見

  • 所得税、法人税の減税を希望。

卸小売業

業況、売上高、採算ともに調査開始以来最も良い値となった。価格転嫁も全業種中最も進んでいる。しかし、次期に対する不安も大きい。
今期の「売上高DI」は4.3と調査開始以来初めてプラスに転換した。「業況判断DI」は▲17.4とマイナス幅を8ポイント縮小、「採算DI」は▲17.4とマイナス幅を3ポイント縮小した。しかし次期は、「売上高DI」が▲56.5、「業況判断DI」が▲43.5、「採算DI」が▲52.2と大きく悪化する見通し。
「仕入単価DI」は昨年比で78.3、前期比で73.9、次期で52.2と上昇は継続しているが、前期比に比し次期は22ポイントプラス幅が縮小する見通し。「販売単価DI」は昨年比で47.8、前期比で39.1、次期で43.5と上昇傾向が継続する見通し。原材料価格等の上昇を販売価格に「全て転換できている」が17.4%と前年調査時よりも11ポイント増加、「半分程度転嫁できている」は39.1%と前年調査時よりも12ポイント増加し、「転嫁できていない」は0%であり、他業種と比べ転嫁が進んでいる。
「資金繰りDI」は昨年比で▲8.7。前期比は▲4.3と前回調査よりも8ポイントマイナス幅を縮小したものの、次期は▲17.4と困難な状況が拡大する見通し。「従業員DI」は昨年比で▲21.7、前期比で▲17.4、次期で▲13.0と不足傾向。従業員確保の為の待遇の改善は、「有給休暇の取得促進」に47.8%、「時間外労働の削減」に43.5%、「賃金の引き上げ」に39.1%の事業者が取り組んでいる。
既存顧客との関係強化対策として、「商品・サービスの改良、改善、開発」に34.8%、「顧客情報の収集・管理」に30.4%、「SNSを通じた情報発信」に30.4%であった。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が60.9%、「雇用対策にかかる支援」34.8%、「事業変革・再構築にかかる支援」34.8%。

その他意見

  • 毎年3月に次年度年間単価契約のため、仕入価格の急激な上昇は逆ザヤになり非常に厳しい状況。
  • 補助金・助成金の支給をしてほしい。
  • デジタル化の推進だけではなく、アナログのままでも生きられる施策を実施してほしい。

飲食業

4~6月好転、7~9月悪化、10~12月やや好転と、新型コロナ感染者数の動向による影響が大きい。従業員の処遇改善、顧客との関係強化について、最も取り組んでいる。
今期の「売上高DI」は21.7、「業況判断DI」は0.0、「採算DI」は4.3と大きく好転に転じた。しかし次期は、「売上高DI」が▲21.7、「業況判断DI」が▲21.7、「採算DI」が▲30.4と、大きく悪化に転じる見通しとなった。
「仕入単価DI」が昨年比では95.7、前期比で95.7、次期で95.7とほぼすべての事業者が上昇と回答。「販売単価DI」は昨年比で60.9、前期比で52.2、次期で43.5と販売価格の見直しが進んでいる。原材料価格等の上昇を販売価格に「転嫁できていない」又は「あまり転嫁できていない」と回答した事業者が前年調査時の95.5%から65.2%に減少、「半分程度転嫁できている」は26.1%、「全て転嫁できている」は8.7%と転嫁が進んでいる。
「資金繰りDI」は昨年比では▲8.7。前期比では▲17.4と15ポイントマイナス幅を縮小した。次期は▲17.4の見通し。「従業員DI」は昨年比▲26.1、前期比で▲17.4、次期で▲8.7と不足傾向が続く見通し。従業員確保の為の待遇の改善は、「賃金の引き上げ」56.5%と前年調査時よりも16ポイント増加、「時間外労働の削減」43.5%と前年調査時よりも30ポイント増加と積極的な対応がとられ、「取り組んでいない」は21.7%と前年調査時よりも24ポイント減少した。
既存顧客との関係強化対策として、「商品・サービスの改良、改善、開発」に56.5%、「SNSを通じた情報発信」に47.8%であった。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が65.2%、「感染症対策にかかる支援」が8.7%とそれぞれ17ポイント、37ポイント減少し、替わって「雇用対策にかかる支援」が43.5%、「DX(業務改善)にかかる支援」が21.7%とそれぞれ12ポイント、17ポイント増加した。

サービス業

業況は全業種中最も好転の割合が高い。次期に対する不安はあるもののやや好転の見通し。商品・サービスの改良、改善、開発に取り組む割合は全業種中で最も高い。
今期の「業況判断DI」は33.3、「売上高DI」は40.7、「採算DI」は22.2と前回調査よりもさらに好転が増加した。次期は「業況判断DI」が3.7、「売上高DI」が7.4、「採算DI」が▲3.7とほぼ不変となる見通し。
「仕入単価DI」は昨年比で51.9、前期比で51.9、次期で48.1。「販売単価DI」は昨年比で29.6、前期比で14.8、次期は22.2と販売価格の見直しが進んでいる。原材料価格上昇を販売価格に「全て転嫁できている」11.1%は全業種平均を上回っているものの、「半分程度転嫁できている」18.5%は全業種平均よりも15ポイント低く、「転嫁できていない」29.6%は全業種平均よりも17ポイント高かった。
「資金繰りDI」は昨年比で7.4、前期比で11.1、次期で7.4と好転が継続している。「従業員DI」は昨年比で▲18.5、前期比で▲14.8、次期は▲14.8と不足する状況は継続する見通し。従業員確保の為の労働環境の整備は、「賃金の引き上げ」に44.4%、「有給休暇の取得促進」に37.0%、「時間外労働の削減」に33.3%の事業者が取り組んでいる。
既存顧客との関係強化対策として、「商品・サービスの改良、改善、開発」63.0%と「SNSを通じた情報発信」48.1%に取り組む事業者の割合は全業種中最も高く、「顧客情報の収集・管理」も33.3%あった。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が59.3%、「感染症対策にかかる支援」が7.4%とそれぞれ12ポイント、28ポイント減少し、替わって「雇用対策にかかる支援」が51.9%、「DX(業務改善)にかかる支援」が40.7%、「事業変革・再構築にかかる支援」が37.0%とそれぞれ16ポイント、18ポイント、14ポイント増加した。

その他意見

  • 地産地消の推進をしてほしい。